週刊ラスベガスニュース バックナンバー   1999年10月13日号
Las Vegas Speedway で NASCAR 体験!
 産業見本市からボクシングの世界タイトルマッチまで、どんなイベントでも誘致してしまうラスベガス。そんなラスベガスはここ数年、官民一体となったカーレースの誘致も盛んで、今ではインディアナポリス、デイトナに勝るとも劣らない米国モータースポーツ界の中心的存在となりつつある。
 そしてこのたびそのメイン施設である Las Vegas Motor Speedway が一般市民に開放されレーシングカーの体験運転ができるようになった。
(右の写真において車が停車している場所はピットレーン。後方の細いグレーの部分が本線で、そこにわずかに小さく見える点が走行中の車。その後方の赤、白、青の部分は客席スタンド)

 アメリカのカーレースといえばなんといっても NASCAR (National Association for Stock Car Auto Racing)。日本ではメカ、テクニック、コースなどにとことんこだわったヨーロッパ系の F1 ばかりが人気のようだが、アメリカではその国民性を反映してか単純明快なオーバルコース (楕円形のコース)でただひたすらスピードだけを追求する NASCAR が圧倒的人気を誇っている。
 そんな NASCAR の正真正銘のストックカーをその檜舞台ともいえるここ Las Vegas Motor Speedway (NASCAR の最高峰シリーズ Winston Cup のビッグイベント “Las Vegas 400” は毎年この会場で行われる) で誰もが運転できるというからモータースポーツファンにはたまらない。

 ホテル街からラスベガスストリップを北へひたすら走ること 30分 (距離にしてベラージオホテルの前から 14マイル。約 22km)。荒野の中にドーンと巨大な Las Vegas Motor Speedway が現れる。
 正門前には検問ゲートがあるのでそこでは車の窓から顔を出し守衛に向かって大きな声で “Richard Petty !” と言おう。すぐに “Enjoy Driving !” と言ってくれ入場許可が出る (入場無料)。
 ちなみに Richard Petty とは、カーレーサーの名前で今回のレース体験を主催している企業名でもある。

 ゲートを通過したあとは案内板の指示に従い Richard Petty 施設前にある駐車場へ向かう。客席スタンドやレーストラックの下をくぐるトンネルを通過するとそこはもう Las Vegas Motor Speedway のど真ん中。駐車場に車を置き車外へ出ると、超高速で周回しているレーシングカーからの爆音に思わず興奮してしまう。

 体験クラスは以下の通り大きく分けて “RIDE と “DRIVE” がある。そして DRIVE はさらに 4つのクラスに別れている。

クラス料金周回最高速度開始時間
 RIDE (Ride-Along Experience)$993周165mil / 265kmいつでも
 DRIVE (Rookie Experience)$3298周138mil / 220km8am、11am、2pm
 DRIVE (Winston Experience)$7498周 x 2回143mil / 229km8am、12pm
 DRIVE (Lifetime Experience)$119910周 x 3回148mil / 237km8am、12pm
 DRIVE (Racing Experience)$239980周、2日間165mil / 265km特別予約


 時間的にも料金的にも語学力的にも (上位のクラスになればなるほど英語による講習が高度になる) 一般の日本人観光客は RIDE か、もしくは DRIVE の Rookie Experience を選ぶことになるだろう。

 RIDE はその名の通りただ単に乗るだけだ。つまりプロのカーレーサーが運転する車に同乗し助手席で時速 265km を体験する。1周 1.5マイル (約 2.4km) のコースを 3周するだけなので実質たった 2分弱の体験となる。
 料金は $99。1秒当たりに換算すると約 $1。これを高いと思うか安いと思うかはその人の価値観だが、ここまで来たら 「NASCAR 車に乗れるだけでも安い」 と考えるしかないだろう。

 F1と異なりボディーはシボレー、ポンティアック、フォードなどの一般車両と同じ金型を使っているため見かけこそ普通の車だが、エンジンは V8、5900cc、600馬力という怪物マシンだ。当然のことながら消音マフラーや排ガス清浄装置などは取り払われているため (排気時における管内の空気抵抗負荷をとことん軽減させるため)、その騒音たるやすさまじく、まるでシリンダー内の爆発がそっくりそのまま外に聞こえて来るようだ。

 RIDE 用の車輌には特別に助手席が設けられているが (通常は存在しない)、この座席も車内も恐ろしく狭い。狭所恐怖症の者は悲鳴を上げそうだが、とにかく必要最低限の計器類以外に無駄な物は何もない。  あるものすべてがクラッシュ時における生存空間確保のための頑丈なバーばかりで、まるで鋼鉄製の鳥かごの中にいるようだ。やや細めだがフロントグラス部にもバーが 3本タテに走っている。視界を犠牲にしてでも生存空間を確保しようとしている設計に改めて驚かされる。
 シートベルトは股間と両腰と両肩の5点式。あとは当然のことながらヘルメットを着用。さらに首を固定するためのパッドをあごの下に入れて準備完了だ。

 興奮状態を味わう余裕もなく、ドライバーがアクセルを踏み込むとあっという間にピットレーンから本線へ突入する。すぐにコーナーにさしかかるが、それもつかの間、向正面の直線で早くも時速 250km に。車体が小さく地面や景色が近い分だけ新幹線よりはるかに速く感じるが、15秒もしないうちに再びコーナーにさしかかり急減速。わずか数秒後、視界に 10万人収容のスタンドが飛び込んで来る。放送席などもある巨大なメインスタンド前にさしかかるといよいよ興奮も最高潮。時速 265 km で直線を一気に走り抜ける。あとは何がなんだかわからないまま 2分が経過しスタート地点のピットへ。

 さて DRIVE クラスに話を移すと、こちらは初級の Rookie クラスでも 3時間の講習を受けなければならない。メカニック、運転技術、安全知識など、ビデオや実地による厳しい講習が待ち受けている。さらに最後に 「DO」 と 「DON'T」 というテストを受けなければならない。つまり安全のために 「必ずやらなければならないこと」 と 「絶対にやってはならないこと」 の最終テストだ。

 受講およびテストが終了するといよいよ体験ドライビングだ。助手席にインストラクターはいない。車内は自分だけ。習ったばかりの知識で 4速マニュアルシフトの 600馬力マシンをすべて自力で操作しなければならない。
 スピードは残念ながら Rookie クラスの場合、時速 220 km までしか出すことができない。物理的にそれ以上スピードが出ないように設計されているというわけではなく、インストラクターが運転する先導車輌を追いかけるように運転しなければならないというわけだ。パワー的には 220km で走行する先導車輌を追い越すことは可能だが、追い越しは 「絶対にやってはならないこと」 のひとつとなっており、やったら即退場となる。Rookie クラス以外においてもすべて先導車輌のうしろを走ることになっており、どのクラスを取っても単独で自由に運転することは許されていない。
 体験ドライブが終了すると、コンピューター出力によるラップタイムなどが記載されたデータと卒業証書が手渡される (自分で自由に走ることができないのでデータは “成績表” というよりもあくまでも “体験記録” といった色彩が濃い)。

 有料でさまざまなシーンの記念写真を撮影してもらうことができるが、おもしろいのが記念タイヤだ。レーシングカー用のタイヤは耐久性を犠牲にし走行性を重視しているため柔らかくて消耗が早い。自分が体験ドライブしたあとに運よくタイヤ交換となった場合、そのタイヤを 1本 $5で記念に買って帰ることができる (写真 ← クリック)。日本まで持って帰りたい者もいるだろうが、かなり重いことを覚悟しておこう。
 その他、Tシャツや帽子といったロゴグッズが現場で売られているので記念に買って帰るとよいだろう。

 参加資格は 18才以上の運転免許所持者。外国人は国際免許と自国の運転免許の提示が必要。予約 (英語のみ) は DRIVE のみ必要で電話番号は以下の通り。

 【予約電話】 702-643-4343 (ラスベガス市内からは 702 は不要)

 なお RIDE の場合でも現地へ行く前に必ず電話をした方がよいだろう。なぜなら、Las Vegas Motor Speedway 自体がプロの試合やイベント会場として使われていることが多く、Richard Petty が営業をしていないことがしばしばあるからだ。ちなみに向こう半年の暫定スケジュールを見る限り、月の内の約半分かもしくはそれ以上が休みとなっている。


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