週刊ラスベガスニュース バックナンバー   1999年9月22日号
エッフェル塔がラスベガスを変える?!
 9月 1日のパリスホテルの開業と共に登場したエッフェル塔は 2つの意味でラスベガスを大きく変えようとしている。
 ( 展望デッキへの行き方やその料金は最後に記載してあります )

 ひとつはラスベガスの中心地が新フォーコーナー (ストリップ大通りとトロピカーナ通りの交差点) からフォーコーナー (ストリップ大通りとフラミンゴ通りの交差点) へ戻り、それと同時にストラトスフィアタワーが夜景展望スポットとしての使命を終え完全にその存在感を失ないつつあるということ。
 もうひとつが、知名度抜群のエッフェル塔が完成したことにより、ますますラスベガスが “ギャンブルとは無縁の一般の人たちのための観光地” となりつつあるということだ。

 かつてラスベガスストリップを代表する写真といえば、リビエラホテルやスターダストホテルのネオンサインだった。それがいつの日かフラミンゴヒルトンやシーザーズパレスなどが並ぶフォーコーナー周辺の写真に取って代わられた。
 ところが 90年代初頭、フォーコーナーを代表するホテルのひとつデューンズホテルが爆破解体され、時期を同じくして始まった大型テーマホテルの建設ラッシュとともに、ラスベガスの中心地は新フォーコーナーへ移った。当然のことながら観光ガイドブックの表紙などを飾る写真も MGMのライオンやピラミッドが中心となった。

 しかしこのたび完成したエッフェル塔はそんなラスベガスの中心地を再びフォーコーナーへ呼び戻すこととなった。市当局の調べでもフォーコーナー周辺の歩行者数は明らかに増加しているという。
 さらに観光局などの分析によると、ラクソーホテルのピラミッドがそうであったように、世界中の誰もが見て知っている (少なくとも写真で見ている) エッフェル塔は、名前そのものの知名度はもちろんのこと、視覚的なアイデンティティーが抜群なため、ラスベガスという街全体を対外的に知ってもらう上で絶大なる宣伝効果があるという。
 ベラージオの噴水やトレジャーアイランドの海賊船ショーもすばらしいアトラクションだが、それらはあくまでもラスベガスに来た観光客を楽しませるためのものであって、世界各地に住む人々の目をラスベガスに向けさせ実際に足を運ばせるという役目としてはエッフェル塔に遠くおよばないとのことだ。

 さて、そんな偉大なるエッフェル塔によって早くも影響が出てきているのが夜景見学スポットとして親しまれてきたストラトスフィアタワーだ。これまでにも 「高さはすごいがストリップの中心街から遠くて夜景がよく見えない」、「○×ホテルの屋上ラウンジからの方がよく見える」 などという声も少なくなかったが、エッフェル塔が完成したことにより決定的にその存在感を失った。すでに客足が大幅に落ち込んでいるという (ストラトスフィアタワー商店街のテナント主)。

 今回登場したエッフェル塔はその完成前、本場フランスのそれの約半分ほどのサイズしかないとあって夜景見学スポットとしてはあまり期待されていなかったが、実際に完成してみると大方の予想に反して見晴らしがすばらしく、ストラトスフィアタワーを完全に駆逐してしまった。
 遠くの夜景がただ漠然と見えるストラトスフィアタワーと異なり、地上 140m 地点のエッフェル塔の展望デッキ (右下の写真) からは、向かい側のベラージオや隣の建設中のアラジンはもちろんのこと、最南端のマンダレイベイに至るまで実によく見える。ストリップ上で見えない主要ホテルは巨大なベネシアンにブロックされてしまったスターダストとサーカスサーカスぐらいだ。

■ 以下は展望デッキから見た各方向の写真(各ホテルがわかるように夜ではなく昼の写真)

 ・ 南方向 (建設中のアラジン、MGM、NYNY、マンダレイベイまでがよく見える)
 ・ 西方向 (ベラージオの噴水が飛び出る瞬間もよく見える)
 ・ 北方向 (フラミンゴ、ミラージ、トレジャー、ベネシアンなど)
 ・ 東方向 (手前はパリスの屋上。はるか奥にハードロックホテルが)
 ・ 北西方向 (シーザーズパレスのほぼ全容)



 では、エッフェル塔人気でパリスホテルの前途はバラ色かというと、これがそうでもない。展望デッキへのエレベーターの前はいつも長蛇の列 ( 写真クリック) だが、カジノは逆にガラガラだ( 写真クリック)。ちなみにこれら 2枚の写真はどちらもほぼ同じ時刻 (9月 21日の 3:00pm 頃) に撮影されたものだが、スロットマシンセクションにほとんど人がいないのと、視界に入っているブラックジャックテーブルのすべてがクローズになっているのは大いに問題だろう。平日の午後 3時という条件を差し引いて考えても、開業後一ヶ月もたたないホテルの光景としてはあまりも寂しい限りだ。

 この 「エッフェル塔に登りたい者は山ほどいるが、カジノでプレーをしたいと考える者はほとんどいない」 という現象をどうとらえるか。これはまさにラスベガスが “鉄火場” から “普通の観光地” へ移り変わろうとしているなによりの証拠といってよいだろう。
 かつてのラスベガスは、その訪問者の大部分がギャンブルを目的としてこの街へやって来た。賭け金の大小こそあってもいわば全員がギャンブラーだった。当然ホテルもカジノ収入を原資にさまざまなアトラクションを無料で提供してきた。ただ、アトラクションといってもギャンブルの途中での息抜き程度が目的のため、プールの無料開放やラウンジでの生バンド演奏などがサービスの主流だった。しかし現在ではアトラクション自体が肥大化してしまい、ホテル経営を圧迫しているという。

 豪華な噴水で客を集め、その客の何割かがカジノでお金を落としていってくれるだろうとの計算で始めたベラージオの噴水アトラクションも巨額の運営経費に見合うだけのカジノ収入を得られず多くの問題を抱えているという。原因はもちろん、無料アトラクションだけを楽しんで帰ってしまう者があまりにも多すぎるからだ。
 かつてはみんながギャンブラーであり、みんながある程度のお金を落としていったため、バフェィも今よりはるかに安く、プールなどの入場制限もしていなかった。つまり完全な “カジノ依存型” の経営が成り立つ時代だった。しかしここ数年、非ギャンブラーの数が相対的に増えたため、“ごく一部のギャンブラーたちが落としていく資金で大多数の者に無料でエンターテーメントを奉仕する” というある意味ではアンフェアな “変則的なカジノ依存型経営” になってきていたが、ここへ来てその構図が崩壊しようとしている。  カジノホテルの健全経営という意味でもサービスの “受益者負担” という意味でもその崩壊は当然のことであり、今後は多くのアトラクションが有料化や値上の方向へ動いていくことだろう。
 現在のラスベガスは明らかに “構造不況業種” と言ってよい。エッフェル塔の展望デッキへのエレベーターの料金が決して安くはない $8に設定されたことはある意味で大いによいことだろう。行列ができ需要が供給を上回っている現状を見る限り、安すぎることはあっても高すぎることはない。アトラクション経費を受益者が負担しなければラスベガス全体がいつかは滅びてしまう。

 いずれにせよ確実に 「非カジノ観光客」 が増えていることだけはたしかで、それはエッフェル塔という知名度抜群の観光スポットが出現したことによりますます加速されるだろう。「アトラクションは無料、収入はカジノ一辺倒」 というこれまでのスタイルではラスベガスに 21世紀はない。アトラクションの構造上、料金を徴収できない噴水、火山、海賊船ショーなどを有するホテルは今後ますます苦戦を強いられることになりそうだ。今回のエッフェル塔の出現は良くも悪しくも “鉄火場から一般観光地へ変わりつつあるラスベガス” に警鐘を鳴らしてくれたような気がしてならない。

 
■ エッフェル塔の展望デッキへの行き方:

 パリスホテルの西側 (ベラージオ側) 歩道にあるチケット売場でチケットを購入する。料金は $8。なお、エレベーターや展望デッキの混雑を避けるためにチケットには搭乗時刻が記載されている。黙って購入すると最も早い時刻を指定される。夜間などの希望する時刻に乗りたい場合はその希望を告げて購入する必要がある。営業時間は 9:00am〜1:00am。
 エレベーター乗り場はカジノ内に架かっている白い橋(歩道橋のように見える橋) の上。時刻が指定されていても 30分ぐらいは並ぶ覚悟が必要だ。エレベーターは約 10人乗りとかなり小さめで、展望デッキも一辺が 5m ぐらいの正方形で決して広くない。
 展望デッキは安全のためかなり目の細かい鉄格子と金網で囲まれているが、ところどころにカメラのレンズを差し込むための穴が用意されているので撮影の際はそれを利用するとよいだろう。ただし一眼レフではないカメラの場合、ファインダーのレンズと主レンズの位置が異なるため、ファインダー内に鉄格子がかかっていなくても主レンズが鉄格子に隠れてしまっていることがあるので注意が必要だ。夜景の撮影はシャッタースピードが非常に遅くなるため三脚がないと手ぶれを起こしてしまう。とはいっても現場が狭いこともあり混雑時は場所的にも時間的にも三脚を組み立てているほど余裕がない。したがって、カメラの一部を金網などに押しつけて固定させ、息を止めて静かにシャッターを切るテクニックが必要になるが、そのテクニックがない者はセルフタイマーを使えばシャッターを押す動作による手ぶれだけは防ぐことができるので試してみるとよいだろう。


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