週刊ラスベガスニュース バックナンバー   1999年4月14日号
新モノレール、カジノ優先の設計に不満の声
 試運転を兼ねた仮営業として 4月 2日から運行を開始していたエクスカリバーホテルとマンダレイベイホテルを結ぶモノレールが、4月 9日、派手なオープニングセレモニーと共に正式に開通した。

 オーストリアでスキー場用のリフトなどの製造を手がける Doppelmayr Cable Car 社の設計によるこのモノレールは、車輌自体に駆動用のモーターやエンジンなどを搭載しておらず、サンフランシスコのケーブルカーと同様、軌道に沿って張られたケーブルによって推進するしくみになっており騒音が少ないことが売り物だ。
 全長は約 1.5km、複線軌道、5輌編成、運行間隔は 5〜8分で 24時間運転となっている。料金はもちろん無料だ。
 ボディーカラーは何ごとにおいても派手なラスベガスにおいては珍しく極めて目立たないブラックとなっているが、これは途中駅のラクソーホテルの色に合わせてのこととか。

 さて気になる駅の位置とその利便性だが、これが今いろいろ話題を呼んでいる。
 右図の青で示された部分が駅のホームで、北側から順に、新フォーコーナー駅 (交差点に架かる歩道橋に直結)、エクスカリバー駅、ラクソー駅、マンダレイベイ駅と 4ヶ所あるが、今回特に問題となっているのがエクスカリバー駅の位置だ。また、あえて輸送力を落とした “一方通行輸送” にも非難の声があがっている。

 右図の通り、軌道が複線になっているにもかかわらず、乗客の移動は矢印で示された方向のみとなっており、結果として輸送力の半分しか有効利用されていない。つまりストリップ (ラスベガス大通り) に近い側の軌道は乗客を北から南へ運ぶだけで、乗客をマンダレイベイ駅で降ろしたあとは新たな乗客を乗せることなくカラの車輌が北端の新フォーコーナー駅へ向かう。また、この南行き路線では途中のラクソー駅を通過してしまうため (乗降用のホームすらない)、MGM や ニューヨークニューヨーク方面からラクソーへ向かいたい者は、一度マンダレイベイ駅まで行って北行き路線に乗り換えなければならない。
 その北行き路線の評判がすこぶる悪い。 マンダレイベイ駅から出発した車輌は途中ラクソー駅に停車したあとエクスカリバー駅へ向かうが、車輌はそれ以上北へ進まない。エクスカリバー駅に到着した後はそのままマンダレイベイ方向へ戻ってしまう。つまりエクスカリバー駅と新フォーコーナー駅間の区間における北行きは存在しないということになる。結果としてマンダレイベイから MGM や ニューヨークニューヨーク方面へ向かう者はエクスカリバーのカジノ内を延々と歩かなければならない。

 なぜこんなことになってしまったのか。それは言うまでもなくカジノを通過する人の交通量を増やすためだ。ちなみにエクスカリバー、ラクソー、マンダレイベイはすべてサーカスサーカス社が保有しており、この 3つのホテルはいわば “3兄弟” だ。
 サーカスサーカス社としては、観光客がこれらのどのホテルでおカネを落としてくれてもかまわないわけだが、大切なことはエクスカリバーよりも以北のホテルへ簡単に出て行かれてしまっては困るということだ (ちなみにマンダベイ以南にはホテルが存在しない)。そして、エクスカリバー以北のホテルからやって来くる者に対しては、できるだけ 3つのホテルすべてを見ていってもらいたいということになる。
 そのような思惑が働くと結果として、「新フォーコーナー側からは簡単にモノレールに乗れるようにし、なおかつ全員をとりあえず最南端のマンダレイベイまで連れていく。また、北行きではラクソーで降りたい者は降ろし、残りは全員エクスカリバーのカジノ前で降ろす」 という運行パターンになってしまう。そしてこの目的を遂行するために、南行き路線のマンダレイベイ駅の到着ホームにわざわざ係員を配置し、カラで新フォーコーナーに向かう車輌に乗客が乗り込まないように監視するという半ばいやがらせ的なことまでしなければならないことになる。

 せっかく造った複線軌道と立派な新フォーコーナー駅やマンダレイベイ駅を有効に利用していないばかりか、利用者にあえて不便を押しつけている現在の運行方針にはさまざまな方面から不満が出ている。したがって限りなく近い将来、南行き路線にもラクソー駅のホームが造られたり、北行きの終点を新フォーコーナー駅まで延長するなど (すでに軌道自体は存在している)、なんらかの変更が加えられる可能性は十分にある。
 しかし、すべてがカジノによって支えられているラスベガスという街の性格を考えると現状の運行でもやむを得ないとする意見も少なくない。利用者側の利便を優先するあまり、有料運行になってしまうことなど利用者側も望んでいないだろう。であるならば、カジノ収益のお陰でアトラクションもモノレールも無料になっているという現実を観光客自身もよく認識し、ここは少々の不便も寛大な気持ちで受け入るという姿勢が必要なのかもしれない。

 さて不便な部分ばかりを強調してしまったが、このモノレールの利用価値は非常に高い。特に MGM や ニューヨークニューヨーク側 (もちろんモンテカルロやベラージオ方面も含めて) からマンダレイベイへ向かう際は必要不可欠な交通機関だ。新フォーコーナー駅もマンダレイベイ駅もじつに使いやすい位置にあり、MGM とバリーズを結ぶモノレールに比べはるかに存在価値が高い。
 あと、ラクソー駅では必ず降りてみることをおすすめする。スフィンクスの目の前にあるこの駅からの眺め (写真右上) はなんともいえない。スフィンクスとピラミッドが織りなすシンメトリックな荘厳かつ滑稽な光景は一見に値することだろう。
 最後に、どうせ乗るなら先頭車両もしくは最後尾の車輌に乗るとよい。運転席や車掌室がないため全面ガラス張りとなっており、他の車輌より多少でも景色がよく見えるからだ。




バックナンバーリストへもどる