週刊ラスベガスニュース バックナンバー   1998年8月26日号
Megabucks 2000万ドル突破で風説が流布
 8月 22日、超高額賞金で話題を集めているプログレッシブ型スロットマシン “Megabucks” のジャックポット賞金がついに 2000万ドル (約 28億円)を突破した。
( Progressive および Megabucks については 「Jackpot速報」 もしくは 「ディクショナリ」 を参照のこと)
 
 これまでの “スロット賞金世界記録”である 1250万ドルをはるかに超えるこの異常なまでの高額ジャックポットは、昨年の 7月 13日にレイクタホの Biltmore で 830万ドルが飛び出して以来 1年以上もマシンが沈黙を続けていることの結果だが、この長期に渡る “異常沈黙” のためか、にわかに根拠のない風説がラスベガス中に広がり始めている。
 「前回の世界記録は開業直後のニューヨークニューヨークで飛び出した。新設ホテルは話題を集めるために意図的にそうしている。だから次回はベラージオで出るように仕組まれているはず」 というものだ。ちなみにベラージオは 10月 15日の開業を予定している。
 
 そう信じる者が多いためか、現在ネバダ州全土にある約 700台の Megabuck 台は閑古鳥が鳴いている。一方、ベラージオがオープンした際、台の奪い合いになるのではないかと早くもその混乱ぶりが心配されている。
 ラスベガス大全は Megabucks マシンの製造メーカーである IGT 社の長年の株主として、あえてこの風説がまったく根拠のないデマであることをここに説明しておきたい。
 
 まずネバダ州に設置されているスロットマシンの動作はすべて RNG ( Random Number Generator) によって制御されるようになっており、その RNG はネバダ州当局の厳しい管理下に置かれている。RNG とは、ランダムな数値を作り出す部品と考えればよいだろう。ではこの RNG がどのように作用してスロットマシンは動いているのだろうか。
 実際にはかなり複雑なメカニズムになっているが、原理としては各リール (図柄が描かれていて回転する部分。ドラムという人もいるがリールが正しい) の回転量 (回転角) を RNG がランダムな数値で制御している。たとえば 360 という数字が RNG から発信された場合、リールは現在静止しているポジションから 360度、つまり 1回転した位置で止まるということになる。540 であれば 1回転半、3600 なら 10回転というわけだ。実際には個々のリールに対して最低でも3回転させるとか、最高で 10回転までとか、最大値と最小値が決まっているため、リールの回転をつかさどるステッピングモーターへ送り込まれる最終的な回転角も 1000 〜 4000 などというようにある一定の範囲が定められている。つまりその範囲内でランダムな数値が選ばれるのである。
 
 ここまでで説明をやめてしまうと、「その理論だと 1年間もジャックポットが出ないのはおかしい。動作はランダムではないのでは...」 と誰もが思うにちがいない。
 たしかに今の説明だけではジャックポットがすぐに出てしまう。じつはさらに興味深い仕組みが仕掛けられているのである。各図柄ごとの割り当て回転角がそれだ。
 1つのリールに チェリー、オレンジ、スイカ、ラッキー7、BAR、Megabucksマーク など、全部で 12 の異なる図柄が描かれていたとしよう。時計の文字盤を見るまでもなく、 1周を 12 で均等に分割すると 1つが 30度になる。つまりそれぞれの図柄に割り当てられた回転角は 30度だ。このまま何も細工をせずに RNG でリールをランダムに回すと 12 回に 1 回は Megabucksマークが出てしまうことになり、これだと 3 リールマシンであろうと 4 リールマシンであろうとジャックポット (全部のリールが Megabucksマーク) は時間の問題ですぐに出てしまう。
 しかし実際には 1年間もジャックポットが出ていない。実は実際の Megabucks マシンでは Megabucksマークに割り当てられている回転角が非常に狭く設定してあるのである。つまり、リールに描かれている図柄だけを視覚的に見ている限りでは Megabucksマークも他の図柄と同じ幅になっているが、Megabucksマークがライン上に静止するために必要な割り当て回転角の幅は非常に狭いということである。たとえばその割り当て回転角が 0.1 度の幅だったとした場合 (RNG が小数点以下の数値も発信すると仮定して)、3600 回に1度しか Megabucksマークは出現しないということになり、3 リールすべてで Megabucksマークを出すためには 3600 の 3乗、つまり 466億回に 1度の割合でしかジャックポットが出ないことになる。このような仕組みで Megabucks は日夜動いているのである。
 
 ここまでに記載した内容はあくまでも RNG制御によるスロットマシンの原理を説明したまでで、実際の数値 (図柄の数や割り当て回転角) はこれと異なる。また、左側のリールから先に静止するように設計してある台 (ほとんどの台がそうなっている) では、左側のリールを制御する数値 (回転角) の最大値を、隣のリールのそれの最小値よりも小さく設定しなければならないなど、細かな配慮がなされている。その他、どの段階で (コインを投入した段階か、回転開始ボタンを押した段階か) RNG が数値を決定するかを決めるプログラムなども組み込まれている。
 
 いずれにせよ、すべてはランダムにコントロールされていることだけは疑いのない事実であり (台ごとの回収率の変更などは配当枚数や各図柄の回転角の設定変更などで調整するものであり、RNG そのものをいじくるわけではない。RNG はあくまでもランダムな数値を発信している)、ベラージオで出やすいなどということは決してない (広域型プログレッシブである Megabucks において、ベラージオのマシンだけ回収率を変更するということは許されていない)。
 ただ、多くの人がベラージオでプレーすれば当然のことながらベラージオでジャックポットが出やすくなる。これは発売枚数の多い宝クジ売場で一等賞が多く出やすいのと同じことで極めて当たり前のことだ。しかしそれは個々のプレーにおいて当たる確率が高まっていることとは違う。
 一番恐いことは、本当にベラージオで世界記録が出てしまった場合、さらに多くの者がこの風説を信じてしまうということだ。そういった知的不幸を避けるためにも次回のジャックポットはぜひともベラージオ以外のホテルで出てもらいたいものである。  


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