週刊ラスベガスニュース バックナンバー   1997年12月24日号
オンラインカジノはラスベガスを滅ぼすか?!
 オンラインカジノの数がとうとう 100を超えたという。1995年8月、その名もまさに “Internet Casinos”という世界最初のオンラインカジノがこの世に登場してからわずか2年の出来事である。
 当時それが合法か非合法か、規制すべきかすべきでないかが議論されようとしたが、まさかここまで普及するとはだれも思わず、そのままうやむやにされたまま今日に至ってしまった。そのような背景から、オンラインカジノの法的解釈は今をもってグレーゾーンを行ったり来たりしているが、もはやその存在だけはどうにも否定しがたい既成事実として認めざるを得ない状況にある。
 
 「オンラインカジノ」とは、説明するまでもなくインターネットを使ったカジノのことだ。スロットマシン、ブラックジャック、ルーレットなど、ラスベガスのカジノと同じ感覚で、自宅に居ながらにしてギャンブルを楽しむことができる。もちろんギャンブルである限り現金が動くことはいうまでもなく、前述の通りまだアメリカでは合法化されていない。
 したがって、“胴元”を開設する側も、それに参加してプレーを楽しむ側も、アメリカの法律では明らかな違法行為で罰則の対象となる。ただいかんせん胴元の場所(ホストコンピューターの場所)がギャンブルを規制していないカリブ海の小島などにあったりするため話が複雑になっている。
 幸いにも詐欺的行為を行っている胴元は今のところ非常に少なく(払戻率の調整という意味での詐欺的行為はあるかもしれないが、勝った金を返却してくれないといったトラブルはほとんど聞かれない)、被害者なども特に表立って出ていないためこれまで放置されてきた。しかしこのまま “野放し状態” が続くと既存の社会システムに大きな支障が出て来ることがわかってきた。
 たとえば、宝くじなどを取り扱うオンラインカジノが増えると、公共機関が発行する宝くじが売れなくなってしまう。皮肉なことにオンラインカジノが発行する宝くじの方が公共機関が発行する宝くじよりも払い戻し率が高い場合が多い。これでは宝くじの収益に頼っている公益事業は頓挫してしまう。
 同様に競馬界の存在もあやうくなる。オンラインカジノの多くは各地で行われている実際の競馬のレースに対する賭けを受け付けている。“本物の競馬場”で買う馬券にはレースの優勝馬に対する賞金や運営費などが含まれていたりするため払い戻し率(期待値)は決して高くないが、オンラインカジノのそれは運営コストが低いだけでなく、いい意味での自由競争原理が働いているため非常に高く設定されていることが少なくない。このままでは、「ケンタッキーダービーの馬券を買うなら競馬場へ行くよりもオンラインカジノで買った方がおトク」などということにもなりかねず、競馬界そのものの存続が危うくなる。
 また、自宅に居ながらにしてギャンブルが出きるとあれば、わざわざラスベガスまで足を運ぶ必要もなくなるわけで、オンラインカジノの無法増殖は明らかにラスベガスのカジノホテルにとって死活問題となる。ギャンブルに無関係な一般市民にとっても他人事ではない。なぜならネバダ州の税収はカジノホテルが納める税金に大きく依存しているため、その税収が期待できないとなれば市民生活にも大きな影響が出て来るからだ。
 
 このようにオンラインカジノの増殖を放置することは、社会基盤を揺るがしかねない重大な問題に発展する。一方、インターネットの世界には地域や国境という概念がないため既存の立法プロセスではどうにも対応できない部分も多く、なんら具体的な規制ができていないのが現状である。
 現在のオンラインカジノの市場規模は、約 400億ドルといわれるギャンブル市場全体の 5%ほどを占めるに過ぎないが、現存の 100社の存在をこのまま容認すれば間違いなく急増殖することは明らかであり、まさに “蟻のひと穴”になりかねない。小さな蟻の穴からラスベガスの巨大ホテル群が崩壊する可能性があるのである。


バックナンバーリストへもどる