週刊ラスベガスニュース バックナンバー   1997年12月17日号
戦国時代に突入したマジックショー
 最近ラスベガスのナイトショーにおいて、マジックを主体としたショーが急激に増えてきている。
 2年前まではマジックショーといえば有名な SIEGFRIED & ROY(Mirage)と、SPELLBOUND(Harrah's)、それに今は無きハシエンダホテルで細々とやっていた LANCE BURTON (Hacienda)、そしてすでにラスベガスを去ってしまった Melinda(Lady Luck)しか存在していなかったが、今では以下のリストのように9つものタイトルがひしめいている (注: シーザーズパレスの David Copperfield のような不定期ショーはこのリストに含まれていない)。
 
 この背景にはそれなりの理由がある。それは海外からの観光客に対するホテル側の戦略だ。コメディーなどに比べマジックショーは語学力を必要としないばかりか、文化的バックグラウンドの違いに関係なく楽しむことができるエンターテーメントであるため、主催者側にとってマーケットサイズがそれだけ大きいのである。
 コメディーショーはその国々の文化や価値観が違うと言葉がわかっていても理解できないことが多い。また、モノマネショーなどはモノマネの対象となる芸能人を知らないと話にならない。その点マジックショーは “万国共通のエンターテーメント”として幅広い人種や文化に受け入れられている。
 
 マジックショー戦略のターゲットは海外からの観光客ばかりではない。ラスベガスへの観光客の最大の供給源である南カリフォルニア地域(ロスアンゼルス、サンディエゴ一帯)の人口の 20%〜30%は英語を話さないヒスパニック系(中南米系)の住民といわれているが、彼らもラスベガスにとって重要な顧客なのである。南カリフォルニアからは自家用車でラスベガスへアクセスできるとあって、この地域に住む住民は年に何回も足を運んでくれる。高度な英語力を必要とするコメディー主体のショーではロスアンゼルス周辺のヒスパニック系住民を取り込むことができないのである。(下へ続く↓)
 
タイトルホテル料金
SPELLBOUNDHarrah's$34.95
SIEGFRIED & ROYMirage$89.35
SHOWGIRLS OF MAGICSan Remo$19.95
LANCE BURTON MASTER MAGICIANMonte Carlo$34.95〜
CAESARS MAGICAL EMPIRECaesars Palace$65.00〜
COMEDY MAGICMaxim$8.25
THE ILLUSIONARY MAGIC OF RICK THOMASTropicana$12.95
STEVE WYRICK'S SEXY MAGICLady Luck$27.95
IMAGINE, A Theatrical OdysseyLuxor$39.95

 
 これだけマジックショーが増えてくると、当然のことながらその勢力図にも変化が現れてくる。事実これまで圧倒的な人気を誇ってきた SIEGFRIED & ROY が相対的にその存在感を失いつつある。その証拠に最近はひところに比べチケットの入手がかなり簡単になってきているという。他のショーが低価格路線で参入してきているだけにこの $89という価格設定では、価格に敏感なアメリカ人から益々そっぽを向かれてしまう可能性がある。
 一方、“打倒 SIEGFRIED & ROY ” の旗頭である LANCE BURTON は相変わらず好調だが、ここへ来て突如ラクソーがビッグタイトル “IMAGINE” をぶつけてきたためなにやら異変が起きそうな情勢である。
 さらに、明日のスーパースターを夢見て超低価格路線で参入してきた STEVE WYRICK と RICK THOMAS が台風の目となっており業界全体の様相は益々混沌としてきている。
 その影響をもろに受けているのが古参の SPELLBOUND で、かなり集客に苦労しているもようだ。また MAGICAL EMPIRE も集客力にかげりが見え始めたのか、開業当初やっていたランチタイムの公演をやめてしまった。
 
 このよに今後は SIEGFRIED & ROY といえども安泰とはいえない戦国時代の様相を呈してきており、主催者側としては厳しい時代に直面しているが、観光客にとっては選択肢が増えチケットも取りやすくなり、また競争激化で価格も下がるとあっては大いに歓迎したいところである。
 


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