週刊ラスベガスニュース バックナンバー   1997年6月25日号
アムトラックの消滅と復活
 日本のJRに相当するアムトラック(全米鉄道旅客運輸公社)の名物特急「デザートウィンド」のロスアンゼルス-ラスベガス間の運行が、極度の営業不振を理由にこのたび廃止となった。 100年近く続いてきた伝統の路線だけに廃止を惜しむ声も少なくないが、交通の主役が鉄道から航空機や自動車に移行してしまった今日の現状を考えると、「やむを得ない」というのが大方の意見のようである。

 ところがなんと廃止が決まったとたんに早くも新たな鉄道計画が浮上してきたからおもしろい。
 計画推進母体のスポークスマンによると、運行区間も本数も往復運賃もこれまでのアムトラックとほぼ同じのままで、1998年夏ごろをメドに営業を開始したいという。車輌は新たに調達することになるが、軌道そのものはアムトラックのものをそのまま使用するという。

 採算が合わなかったために廃止に追い込まれたというのに同じ路線で同じようなビジネスを始めるとはなんとも奇妙な話だが、多くの経済ジャーナリストたちはこの新計画を高く評価している。

 新計画が従来のアムトラックと違うところは、運営の主体が公社から第3セクターに変わるということと、車輌を豪華にして走行スピードをアップさせるということぐらいで、さほど大きな違いはないのだが、その第3セクターを構成する企業の顔ぶれが非常に特徴的で、そこに新プロジェクトの最大の秘密が隠されている。
 じつは10社ほどから成るその参加企業のほとんどすべてがカジノホテルになるという。さらに列車のチケット販売などもすべてカジノホテル主導型で行なわれるというからなんともラスベガスらしい話である。

 現在のプランによると、経営母体となるその第3セクターが1編成320人乗りの列車をラスベガス-ロスアンゼルス間で毎日1往復運行させ、チケットは全席前売制とし、参加企業である各カジノホテルにそれらチケットのすべてを事前に買い取らせるという。チケットの価格は額面上は往復$100前後とする予定だが、実際には各ホテルが重要顧客(高額ギャンブラー)などに無料でバラまくことになりそうだ。
 この販売方法により、第3セクターはチケット販売に関する営業経費が一切かからないことになり大幅な経費削減が実現できるという。巨大都市ロスアンゼルスに潜在するギャンブル人口の大きさを考えると十分に採算が取れるというのが専門家の見方のようである。

 線路を提供するアムトラック自身も200万ドルまでの出資を約束しており、この話の実現性は非常に高いが、それでもラスベガス側の停車駅の場所をどこにするかといったような利害が絡む細かい問題も少なくなく、各カジノホテルの足並みがそろっているわけではない。

 ちなみに車輌はスペインからハイテク車輌を輸入し、1編成の中の1輌をナイトクラブ形式の車輌とするとか。さらにもう1輌をカジノ専用車輌に改造したい意向のようだが、2つの州(ネバダ州とカリフォルニア州)をまたがって走行するため、それぞれの州の法規制の相違からその「カジノ車輌」が誕生する可能性は低いようだ。それでも「カジノレッスン用の多目的車輌」程度の車輌は造るという。

 実現が確定したわけではないが、ロスアンゼルス地区に住むギャンブラーたちには朗報といえそうだ。また、日本の観光業界がまとめてチケットを購入したりする可能性もあるわけで、日本人観光客にとっても新たな楽しみが増えそうである。


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