週刊ラスベガスニュース バックナンバー   1997年5月7日号
MGM、早くも経営方針変更か??
 このたびMGMグランドホテルは、世界的に有名な超高級ホテルチェーン「リッツカールトンホテル」と共同出資でハイローラー(高額ギャンブラー)専用の高級スイートルーム棟をMGMテーマパーク内に建設する計画があることを非公式ながら明らかにした。

 具体的なプランはまだ未定だが、リッツカールトンホテルの親会社であるマリオットホテル側もこの計画の存在を否定していないため、話が一気に具体化する可能性は十分にある。
 もしこの計画が実行に移されるとなると、現在MGMに併設されているテーマパーク “MGMグランドアドベンチャー” の一部を取り壊して建設が進められることになりそうだ。

 開業してまだ5年というこの時期に、テーマパークの大改造を伴うこのような計画が浮上してきた背景には、ここ数年ブームになっていた「ファミリー路線」というコンセプトそのものがラスベガス全体で見直され始めてきているということがあげられる。
 MGMに限らず家族連れをターゲットとしてきたアミューズメント施設はどこもそのホテルの収益にあまり貢献していないという。
 たしかにジェットコースターに乗ってはしゃいでいるのは子供たちではなく大部分が大人だ。だったらそのような大人たちをジェットコースターからカジノに引き戻した方が賢明ではないのか、というのが最近のホテル経営者たちの共通した意見である。もちろん、「ジェットコースターがあるからラスベガスを訪れる」という大人も多いことはたしかだが、そういう大人たちはもともとカジノであまりカネを使わないという。

 つまり今のファミリー路線の現状は、「本来カジノで遊ぶギャンブルファンがジェットコースターで時間をつぶしてしまっている」ということのようで、当初のもくろみである「子供を遊ばせておく施設があるからラスベガスに行こう」という新規需要の掘り起こしに、テーマパークなどはあまり役立っていないことになる。

 MGMが今回の計画を浮上させたことにはもうひとつ大きな理由がある。それはハイローラーマーケットにおいてMGMは他のホテルに比べ大きく出遅れているということだ。
 もともとMGMはその雰囲気やサービスがハイローラーたちに不評のようで、最近特にシーザーズパレスやミラージにその分野で大きく水をあけられているという。
 そのような背景もあり、超高級ホテルとして世界的に知名度が高いリッツカールトンホテルをMGMの敷地内に建設することによって、ハイローラー客の需要を掘り起こそうというのが今回のMGM側の思惑のようである。

 毎年なにもかもめまぐるしく変化するラスベガスにおいては、今回の話のような経営コンセプトやトレンドの変化の周期も非常に速い。そして今がまさにその「変化」の時期と言ってよいのではないか。
 ファミリー路線があまりカネにならないということがわかり始めた今、多くのホテルが「ハイローラー獲得こそが成功のカギ」とばかりに高級路線指向に向かい始めている。サーカスサーカスはハシエンダホテルを買収し(すでに爆破解体)、そこに超高級ホテル「フォーシーズンズ」を建てるという。ミラージグループは現在建設中のベラージオを「完全なハイエンドホテルにする」とその位置付けを明確にしている。またバリーズを買収したヒルトンホテルも計画中のパリカジノリゾートホテルのコンセプトを高級路線で統一するという。

 90年代に入ってから一気にラスベガスに浸透したファミリー路線もどうやら一過性のブームに終わってしまうのか、それともまだそのトレンドは続くのか、その解答はまだ出ていない。しかし少なくともニューヨークニューヨークホテルに完成した話題のローラーコースターの前の行列を見る限り、解答はすでに出ているような気がしないでもない。行列を作っているのはいつも大人ばかりなのである。


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