週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2009年 12月 23日号
シティーセンターの本丸 「アリア」 がついにオープン
 12月16日深夜、ストリップ地区の中心部にある大型複合施設 「シティーセンター」内に高級カジノホテル 「アリア」 (客室数4004) が、打ち上げ花火と共に華々しくオープンした。(写真右、クリックで拡大)
 シティーセンターおよびアリアは、ラスベガスに数多くのカジノホテルを所有する MGM Mirage 社による開発プロジェクトで、ドバイの政府系企業も出資している。民間企業によるプロジェクトとしては全米史上最大とされ、シティーセンターの総工費は約8000億円。
 そのシティーセンター内には、マンダリン・オリエンタルやヴィダラといったホテルやコンドミニアムなど、いくつもの高層ビルが建ち並んでいるが、その中でアリアは規模でも露出度でもひときわ目立つ突出した存在で、広大なシティーセンター内のまさに本丸。ちなみに右上の写真内で、花火が打ち上がっていない左側のビルも手前のビルもすべてアリア。マンダリンもヴィダラもこの写真内には写っていない。

 そんな巨大なアリアにさっそく宿泊してみたわけだが、結論から先に書くならば、期待ハズレというほどひどいわけではないものの、期待が大きかっただけに感動は少なかった。
 まず、最高級ホテルを自称するわりには使い勝手がよくない。ストリップ大通りから約250メートルも奥まった場所にあるにもかかわらず、動く歩道のような施設がないのは残念だ。通常その種の施設は、250メートルも離れていなくても設置されるのがラスベガスの常識で、シーザーズパレス、バリーズ、エクスカリバー、ミラージなどには大なり小なり動く歩道が存在している。

 無料モノレール (写真右) があるのはありがたいが、それはシティーセンターの両端に存在するモンテカルロホテルおよびベラージオホテルと結ばれているだけで、それに乗って表通りにアクセスできるわけではない。つまりモンテカルロやベラージオの宿泊者がアリアにアクセスする際には便利な乗り物だが、アリアの宿泊者がこのモノレールを使ってわざわざ格下のモンテカルロへ頻繁に行くようなことはあまり考えられないので、このモノレールはアリアの宿泊者にとってはほとんど利便の向上になっていない。
 蛇足になるが、何年か前、当時のアラジンホテルはストリップ大通りにピッタリと面していたにもかかわらず、「入口の位置や形が理想的ではないため館内への人の流れが悪い」 とのことで大規模な改良工事が行われ現在のプラネットハリウッドホテルに生まれ変わったという経緯がある。つまりほぼ完璧な立地条件でも、通路などに少しでも不具合があればそれを改善して人の流れを良くしようと努力した。それに比べ、250メートルも奥に入っているにもかかわらず動く歩道を設置していない今のアリアの無頓着ぶりはなんなのか。アラジンが神経質すぎたのか。たぶんアリアでも近い将来、動く歩道の設置などが議論されるようになるにちがいない。

 次にこれは他のカジノホテルにも言えることだが、チェックインカウンター (写真右) から客室へのエレベーターまでの距離が長すぎる。
 「客室へ出入りする際は必ずカジノ内を通ってください。できればカジノで遊んでください」 といった発想に基づいたわざとカジノ内を歩かせる設計は理解できるが、カジノの売り上げ比率が相対的に下がってきている昨今、もうそろそろやめてもいいのではないか。最新のアリアでその古典的なラスベガスの経営理論がまだ守られていたのにはガッカリした。「最高級ホテル」 をうたうならば、利用者の利便性をもう少し考えるべきだろう。
 不便はエレベーターに乗ってからもさらに続く。このホテルは横方向に巨大なため、エレベーターを降りてから部屋までが遠くなってしまいがちだ (特に低層階)。運よくエレベーターの近くの部屋になればいいが、そうでなければ最長で約140メートルも廊下を歩くことを覚悟しておかなければならない。

 部屋も思ったほど広くない。入口のドアから窓までの縦の長さと部屋の横幅は 916cm x 450cm。あくまでもレギュラールームでの比較だが、ライバルとなるウィンのこの数値は 1000cm x 550cm。天井もウィンのほうが45cmも高い。(ただしそれはウィンが飛びぬけて高いだけで、アリアが特に低いというわけではない)
 とにかく部屋の規模としてはアリアはごく平凡なので、それを期待しているとガッカリすることになる。(右上の写真で窓や壁が歪んで見えるのは魚眼レンズによる撮影のため)

 もちろん悪いことばかりではない。驚くことに、このアリアのバスルームでは、日本の風呂と同じように浴槽から湯をくみ出し浴槽の外に腰を下ろして体を洗うことができる。
 一般のホテルでは、安いホテルの場合、バスタブだけだ。高級ホテルではバスタブとシャワールームの両方が設置されているが、その2つは別々に独立して存在するのが普通で、結局、浴槽の外に湯をくみ出したりすることはできない。
 しかしアリアの場合、「広いシャワーブースの中にバスタブを設置」 という単純な発想で、日本式を実現している。なぜこんな簡単なことが他のホテルで採用されていないのか不思議でならないが、とにかく画期的なことなので歓迎したい。
 ただ残念なことに、実際に浴槽の外で体を洗うとなると現実問題としてはかなりむずかしく、通常のシャワーと同じように立って洗うしかないだろう。なぜなら、湯をくみ出す手桶がないのと、シャワーブース側には高い位置に固定されたシャワーヘッドがあるだけで、低い位置には湯が出てくる蛇口がないからだ。もしどうしても日本的にすわって体を流したいのであれば、客室内に置いてあるワイン用のアイスペールを手桶にして使う方法もあるが、品位的にも機能的にも賛同者は少ないだろう。

 このホテルが他のライバルホテルに誇れる画期的な部分は、室内の集中管理システムをおいて他にあるまい。枕元にあるタッチスクリーン式の端末パネル (写真右)、もしくは 42インチの薄型テレビの画面を見ながらそのリモコンを操作することによって、各種の選択や設定を行うことができる。ちなみにリモコンよりもタッチスクリーンのほうが操作しやすい。以下は、この装置で選択や設定が可能な項目だ。

テレビのチャンネル選択。室内に置かれているガイドブックに記載されている放送局以外にも世界各国の言語の放送が受信可能で、約100局の中から選べる。ちなみに中国語放送6局、韓国語放送2局など、ほとんどの主要言語の放送が受信可能だが、日本語だけはない。
音楽の選択。ジャズ、ロック、クラシックなどほとんどすべてのジャンルを網羅。25チャンネルの中から選択可能。音楽に合った美しい写真なども42インチの大画面に映し出されるので、見て楽しむこともできる。
有料放送の選択。映画など無数にある。
電動カーテンの開閉コントロール。寝る前の 「何時に閉じる」、起きる際の 「何時に開ける」 などの設定が可能。
照明のコントロール。寝る前の 「何時に消灯」、起きる際の 「何時に点灯」 などの設定が可能。さらに点灯の場合、調光可能な電球に対して、「何秒かけてゆっくり点灯」 の設定も可能。
目覚めの放送局もしくは音楽の設定。たとえば、「朝7時にCNNニュースをオンにする」、「朝8時にジャズで目覚める」などの設定が可能。
ラスベガス国際空港のフライトインフォメーション (写真右)。
空調コントロール。温度や風量の設定。
ドアの外の廊下側の 「起こさないで下さい」、「部屋を清掃して下さい」 の意思表示のランプの ON/OFF。
朝食などを部屋に運んでもらう際のメニューのオーダー。(これはプログラムの準備中だった)

 その他、細かい部分で気づいたことを列挙すると、カーペットが安っぽく見えることと、ベッドの高さが約73cmもあること。これはアメリカのベッドとしても高いほうで、眠る際には問題ないが、軽く腰掛けたりする際には飛び乗るようにすわらなければならず、さらに足が床につかず使い勝手が非常に悪い。
 あと先週紹介したヴィダラ (同じシティーセンター内で MGM Mirage社が経営) との比較だが、アリアのレギュラールームにはスリッパもバスローブもない。冷蔵庫に自分が持ち込んだものを冷やすスペースもまったくない。
 一方、良い部分もある。ヴィダラのように 「リゾートフィー」 と称して勝手に15ドル請求されるようなことはない。ただし、ヴィダラのそのフィーにはインターネットの接続料が含まれているが、アリアにはリゾートフィーがないので、ネットを利用する者は個別に払う必要がある。ちなみにアリアでのネット接続料は24時間15ドル。
 もう少しアリアのいいところを紹介しておくと、ヴィダラでは安っぽかった洗面台のカウンタートップが天然石で、さらにシンクが2つある。また、ヴィダラにはなかったツインのルームもある。
 ところでヴィダラもアリアも全館禁煙をうたっているが、アリアにはワンフロア(6階)だけ喫煙フロアがあり、現時点ではそのフロアの全ルームが喫煙可能となっている。将来的にはそのフロアも禁煙にするとのことなので、愛煙家は今のうちに泊まっておいたほうがいいかも知れない。

 まだまだレストラン、劇場、カジノなど、特徴的な施設はたくさんあるが、長くなってしまったのでそれらに関しては日を改めることとするが、とにかくアリアは客室内に関しては好き嫌いで意見が分かれる部分があったとしても、ストリップ大通りへの出入りという部分においては、ほぼ全員が不便を感じるはずだ。400メートルのヴィダラほどではないにしろ、250メートルのアリアも奥に引っ込みすぎている。今となってはもう遅いが、利用者のみならず、関係者の多くが、「もっと手前に建てるべきだった」 と後悔しているのではないか。
 ちなみに MGM Mirage 社の株価はヴィダラの開業時の月初は11ドル台。その約3週間後の23日は20%ほど安い9ドル前後で取引されている。


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