週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2009年 12月 16日号
ナゾ多き超高層コンドホテル Vdara は使えるか?
 こっそりオープンするには巨大すぎ、華々しくオープンするには話題に欠けるナゾ多き超高層ホテル Vdara。(写真右、クリックで拡大)
 名前の意味も発音もわかりにくいそんな不思議なホテルが今月初め、大型複合施設 「シティーセンター」 内の奥まった場所で、静かに淡々と営業を開始した。さっそく宿泊してみた。
 ちなみにシティーセンターとは、ラスベガスに数多くのカジノホテルを所有する MGM Mirage 社が、ベラージオホテルとモンテカルロホテルの間の広大な土地で社運をかけて進めてきた約8000億円規模のプロジェクトで、複数の高層ビルによるホテル、コンドミニアム、カジノ、劇場、コンベンション施設、ショッピングモールなどで構成されている。右下の写真は、シティーセンターの中核を成すホテル「Aria」(12月16日開業) を Vdara の正面玄関側から見た様子。

 地上57階、1495ユニットのこの Vdara は当初の計画ではコンドミニアムホテル (←クリックで解説) になる予定だったが、世界不況の昨今、買い手が極端に少なく、このたびはホテルとしてオープンした。将来的には当初の計画通りコンドミニアムホテルを目指す予定だが、景気の動向が不透明で先が読めないのが現状だ。
 とにかくこの Vdara はいろいろな部分で通常のホテルとは大きく異なっているので一つずつ順を追って説明していきたい。

 まずはその珍妙な名前から。現場のベルデスクに聞いてもコンシアージに聞いても 「意味はわからない」 という。ベガスの V と神聖なる dara を合体させた造語といった説もあるが、そんな深い意味はないらしく、「独創的なプロジェクトなので独自の名前をクリエイトしただけ」 (広報部) とのこと。
 商品名やブランドなどではよくあることなので造語自体はかまわないが、読み方がわかりにくいのは困る。
 読み方の正解は、「ヴィダラ」。アクセントはあまりないが、しいて言うならば先頭の「ヴィ」の部分をやや強く発音する。うっかりしていると日本語の 「みだらな行為」 の 「みだら」 と聞きまちがえることがあるといえば発音をイメージしやすいかもしれない。

 名前ばかりか実体もかなり変わっている。他のラスベガスのホテルとのちがいを列挙すると、カジノがない、劇場がない、バフェィがない、レストランも1ヶ所しかない、ストリップ大通りから400メートルも奥まった場所にある、全室にリビングとキッチンが付いている、電子レンジや冷蔵庫もある、全館全室禁煙。
 それには理由がある。この Vdara はコンドホテルだからだ。つまりホテルではなく、閑静なセカンドハウスとして買ってもらうことを前提として造られているということ。キッチンは必要でも騒がしいカジノや劇場は不要で、繁華街からは少し奥まっていたほうがいいというわけだ。

 コンドホテルの概念とはあまり関係ない部分でも、この Vdara には他のホテルと異なる部分がある。駐車場とベッドルームだ。
 宿泊客が自由に使える駐車場、いわゆるセルフパーキングがなく、すべてバレーパーキング (←クリックで解説)になっている。ラスベガスとしては非常に珍しい。理由は 「高級感をウリにしているため」 (ベルデスク) とのことだが、 数ドルのチップを惜しむ者にとっては歓迎しがたい営業方針だろう。
 またベッドに関しては日本でいうところのツインベッドルームがないので注意が必要だ。夫婦やカップルは問題ないが、同性での利用には向いていない。リビングルームにあるソファーが簡易ベッドになるが、基本的には夫婦やカップル、もしくはファミリーで利用する宿泊施設と考えたほうがよい。

 以上が Vdara の大きな特徴だが、せっかくなので細かい部分にも触れておきたい。まずは良い部分から。
 部屋に入ってまず驚くことは窓が広いこと (写真右)。これは素直に気持ちがいい。住居として長期利用した場合に息苦しくならないように設計してあるのか、玄関から窓までの奥行きよりも部屋の左右の幅のほうがかなり広い (そうでない部屋もあるが)。実測地6メートル80センチのカーテンが電動で開閉し、夜景など視界が一気に変わる様子は壮観だ。
 42インチの大画面薄型テレビがベッドルームとリビングルームにそれぞれあるのもうれしい。
 余談だが、テレビジャパン (アメリカでの日本語放送) は受信できないものの、チャンネルを 903 に合わせると英語版アルジャジーラを視聴できる。ドバイ資本がシティーセンターに出資していることが理由かどうか不明だが、ニュースの切り口などがCNNとは微妙に異なるところがおもしろい。

 前述の通り電子レンジや冷蔵庫、さらにはIHクッキングヒーターがあるのはありがたいが、現在はコンドミニアムとしての要素や機能を排除しているのか、ナイフ、フォーク、食器、鍋、フライパンなどは一切用意されていないので、料理をできるとは考えないほうがいい。持ち込んだファーストフードを電子レンジで再加熱する程度のことは可能だ。
 なお冷蔵庫は左半分があらかじめセットされたドリンク類でそれらは動かすと自動課金される。右半分が自分で自由に使えるスペースだが、写真の通りそれほど広くはない。
 バスルームではバスタブを評価したい。材質こそ高級感はないが、アメリカのバスタブにしては非常に深く、ゆっくりとくつろげる。さらに特筆すべきこととして、バスタブに給湯する蛇口以外に、引っ張り出せる可動式のシャワーヘッドが用意されている (右写真の左手)。バスタブ内で体を洗ったりする際には非常に便利だ。なお、バスタブのとなりにあるシャワーブース内のシャワーヘッドは残念ながら固定式。トイレの便器はなぜか日本のTOTOブランド。
 ラスベガスのホテルとしては珍しく、男女別々のサイズのスリッパとバスローブが用意されている。いつまで続くかわからないサービスではあるが (これまでに他の高級ホテルで、スリッパやバスローブを打ち切った例はたくさんある)、室内でクツを脱ぐ習慣がある日本人にとってはありがたい。
 室内金庫は必要十分な大きさで、16インチ程度のノートブックパソコンも楽に収納できる。ネット接続は無線も有線も可能。
 Vdara の宿泊客はベラージオのプール施設を利用できるのもうれしい。Vdaraにも3階にプール施設はあるが、規模も内容もベラージオのものに比べてかなり見劣りする。なお現在は季節的に一部の温水プールとジャクージしか利用できない。
 2階にあるフィットネスセンター(写真右) も無料で利用できる。各種トレーニング器具がそろったかなり立派な施設だ。同じ2階にあるSPAのビューティーサロンなどは有料。

 残念ながら悪い部分も少なくない。コンドミニアムホテルと聞いてゴージャスな調度品などを期待してしまいがちだが、じつはそうでもない。世界同時不況の影響で、来年3月ごろから分譲価格を約30%値引きして販売することにしているようで、その対策として、内装にかける予算を当初の計画よりかなり削ったらしい。
 その影響か、たとえば前述のバスタブはサイズこそ申しぶんないが材質はかなり安っぽい。洗面台のカウンタートップの材質も同様。シンクが1つしかないのも寂しい。最近オープンした高級ホテルでは、二人が同時に洗面できるようにシンク2つが主流だ。枕元の目覚ましラジオもなんとも安っぽくていただけない。
 枕元の手元を照らす読書用のスポットライトの存在はいいが、ベッド周辺にある照明のスイッチがかなり離れた壁にあり、ベッドからオンオフできないのは非常に不便だ。
 パソコン利用者にとってはデスクの周辺の電源コンセントも使い勝手が悪い。テレビスタンドの下にある引き出しを開けてやっと見つかるような使いづらい位置に1つあるだけで、それ以外にはパソコンから2.5メートルも離れた場所の壁にあるコンセントが最短だ。電源ケーブルが短い場合は届かない恐れがある。
 開かない扉や引き出しが多いのも気になる。コンドミニアムのオーナーの私物の収納用といってしまえばそれまでだが、タンスなどを開けようと思ってカギがかかっていると楽しい気分はしない。
 重箱の隅をつつくような細かい話になるが、体重計はポンド表示のみで、キログラム表示に切り替えるスイッチがどこにもない。他のホテルの体重計はすべて切り替わるのにどうしたことか。中東諸国やそのほかの海外からの利用客を想定していないのか。

 ということで良い部分も悪い部分もあるわけだが、結論としては、初めてラスベガスを訪れる一般の観光客は利用しないほうがいいだろう。
 その最大の理由は立地条件だ。市内観光やショッピングなどで頻繁に部屋から出たり入ったりする者にとってはあまりにも歩く距離が長すぎる。
 正面玄関が目抜き通りから400メートルも奥まったところにあり、無料モノレール (写真右上) の駅の位置も決して近くない。最も近い駅はベラージオホテル駅で、ロビー (写真右下) から200メートル以上歩く必要がある。飲食施設が館内にほとんどないのも、街に不慣れな者にとっては問題だろう。

 一方、ラスベガスのリピーターで、あまり出入りしないという場合は、カジノの喧騒もなく落ち着ける環境にあるので心地よいと感じる可能性がある。またレンタカー族でバレーパーキングのチップも気にならないという場合は、車の出し入れが早いばかりか (ナイトショーもレストラン街もないので利用者が少なくいつもすいている)、道路事情が良いのでフラストレーションがたまらない。標識などもわかりやすく (写真右下)、正面玄関から西側に抜ければ、少々迂回になるが渋滞するストリップをまったく走らずに高速道路にアクセスできる。

 最後に料金的な注意を。このホテルの公式サイトで予約をしても、その他の一般的なホテル予約の専門サイトで予約をしても、宿泊費以外に 「リゾートフィー」 と称するものを請求される。それは15ドルで、それに対しても12%のホテル税が加算されるので実質約17ドルが別途請求されることになる。
 最近のラスベガスのホテル業界では値下げ競争が激しく、少しでも競合ホテルよりも安く見せかけたいのか、目立ちやすい 「宿泊費」 を抑えて 「リゾートフィー」 という名目で別途徴収する悪しき習慣が広まりつつある。
 その金額はホテルによってまちまちで、2〜3ドルの場合もあれば、30ドル前後の場合もある。ちなみにこのホテルの場合、その15ドルの根拠をフロントデスクでたずねてみたところ、客室内でのインターネット接続料とフィットネスクラブの利用料、それに冷蔵庫内に用意されているミネラルウォーター2本がすべて無料になるサービス料とのこと。
 ネット接続だけでもラスベガスのホテルにおける一般的な相場は15ドル近くするので、パソコンを持ち込む者とってこのリゾートフィーは特に気になる金額ではないが、パソコンもフィットネスクラブも利用しない者にとっては納得しがたいルールだろう。実際に払う払わないでトラブルが起きているようなので、一刻も早く廃止してもらいたいものだ。


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