週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2009年 12月 02日号
ダウンタウンのビニオンズ、ホテルを打ち切りカジノに集中
 先週はゴールデンナゲットホテルの新館 「ラッシュタワー」 が、そして昨日は全室キッチン付きの豪華ホテル 「ヴィダラ」 がそれぞれグランドオープンした。また数日後には、日本でも有名な高級ホテル 「マンダリンオリエンタル」 がオープンする。
 めでたい話題が続いているところに、なんと一昨日、11月30日、驚きのニュースがラスベガスを駆け巡った。
 ダウンタウン地区の老舗カジノホテル 「ビニオンズ」 (写真右上、クリックで拡大) が、12月14日を最後に客室部門の営業を打ち切るという。つまりホテルとしての機能を自ら放棄することになった。
 ビニオンズは、有名な電飾アーケード 「フリーモントエクスペリエンス」 のほぼ中央に位置するダウンタウン地区のかなめ的な存在。1951年創業というから、その歴史は半世紀を超える。また、単なる歴史の長さだけでなく、露出度や知名度でもダウンタウン随一で、特にポーカーファンにとっては、ここのカジノは聖地といってもよい。2004年までの34年間、ポーカーの世界大会 「ワールドシリーズ・オブ・ポーカー」 の会場だったからだ。

 幸いにもそのカジノの営業だけは続けるという。それでもホテル部門の閉鎖が意味するところは大きく、業界関係者の多くがことの重大性を危惧している。わずか365部屋と規模的には大きな話ではないが、ビニオンズに続くところが出てくる可能性があるからだ。
 ちなみにリーマンショック以降のダウンタウン地区の宿泊料金の低下はすさまじく、平日の相場は1泊20ドル以下。これは一人の料金ではなく一部屋の料金なので、2人で泊まれば一人10ドルだ。
 なぜそこまで下げる必要があるのか。それはストリップ地区の料金が下がっているからに他ならない。現在ストリップ地区でも30ドル前後で泊まれるホテルはいくらでもある。
 各ホテルの公式サイトで12月の平日の宿泊料金を調べてみると、サーカスサーカス、リビエラ、サハラ、インペリアルパレス、トロピカーナ、エクスカリバーなどは30ドル前後かそれ以下。ダウンタウン地区のホテルが20ドルにするのも無理はない。
 しかしそれでは利益が出るわけもなく、業界関係者によると、ここ数ヶ月、ダウンタウンのどこのホテルも客室部門の閉鎖を視野の中に入れてきたという。ただ行動に移せなかっただけのようだ。それがゆえに今回のビニオンズの行動が呼び水になる恐れがある。

 もともとダウンタウン地区は、「ストリップ地区は高くて泊まれない」 という価格志向の者が利用することが多かった。しかしストリップ地区に次々と誕生する新設ホテルによる供給過剰が市場を乱し、だれでも安くゴージャスなストリップ地区に泊まれるようになった。
 このままではダウンタウン地区に宿泊する者はどんどん減ってしまい、やがてダウンタウンは 「観光に行く場所」 であっても 「宿泊する場所」 ではない、という価値観が定着しかねない。
 そうなると一人当たりの滞在時間はますます短くなるため、カジノの売り上げは減り、資金的な体力がなくなればホテル部門の維持もむずかしくなる。関係者が恐れているのはまさにこの悪循環だ。

 100人以上のリストラが可能という今回のビニオンズの決定を、多くの近隣ホテルはうらやましく思っているらしい。20ドルでしか売れない客室部門はどこのホテルにとってもお荷物だからだ。
 逆に考えると、カジノだけに集中できるビニオンズはダウンタウン地区のライバルホテルに対して優位なポジションに立ったともいえる。
 これはビニオンズでプレーするギャンブラーにとっては歓迎すべきことかもしれない。サービスのアップが期待できるからだ。

 今回の決定を早くから見据えていたのか、ビニオンズのカジノは最近あれこれといろいろなことをやり始めている。
 最も目立っているのは 「カウガール」 と呼ばれるセクシーなカジノディーラーだ (写真右)。当初はごく一部のブラックジャックテーブルだけだったが、今ではほとんどすべてのカジノゲームの場所に彼女らが立ち、男性客を魅惑している。
 無料カジノレッスンにも積極的で (写真右下)、周辺カジノよりも多く開催するなど集客に余念がない。また時間帯の条件付きではあるが、初心者にはありがたい1ドルブラックジャックもある (2枚上の写真)。2ハンドでプレーし、配られたカードを入れ替えることができる 「ブラックジャック・スイッチ」 もこのカジノの自慢のひとつだ。一時期中断していた 100万ドルの前での無料記念撮影も復活した (3枚上の写真)。

 今回のビニオンズのホテル撤退をネガティブにとらえず、何か新しい前向きな変化の始まりと考えれば、街全体としては悪い話ではないのかもしれない。十年一日のごとく何も変わってこなかったダウンタウンに、何か大きな変化が起こるのであれば、仮に宿泊施設の需要や供給がなくなってしまったとしても、それはそれでストリップ地区に対する差別化につながる。半世紀に一度くらいは大きな激変があってもいいし、それを期待したい。今のままではダウンタウンに未来はないような気がする。
 最後に余談になるが、ネバダ州の規則により、マシンゲームを15台以上保有するカジノは、201部屋以上の宿泊施設を運営していなければならないが、その規則が制定される1991年よりも前から存在していたカジノに対しては、既得権としてこの条件は除外される。今回のビニオンズのケースでは、この既得権を拡大解釈し当局が許可を出したとされる。


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