週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2009年 10月 28日号
今が旬! 移動用にも使える観光用2階建てバス
 砂漠都市ラスベガスの夏は長い。40度を超える猛暑が何ヶ月も続く。その一方で冬はきちんと寒くなる。冷暖房が不要な時期は非常に短い。
 そんなラスベガスに "今が旬" とも言えるバスが登場した。真っ赤な車体でストリップ大通りを行き来する2階建てバス "Open Top Sightseeing" だ。
 名前が示す通り屋根の部分は完全にオープン。柱も窓もないので景色を眺めるには最高だが、当然のことながら暑さ寒さにはめっぽう弱い。心地よく快適に乗れるのはあと1ヵ月程度といったところか。それでも1階席は冷暖房完備なので、移動手段のバスと割り切れば一年中使える。

 運賃は$35。2階席にすわっての観光バスと考えれば高くはないが、移動手段のバスとしてはべらぼうに高い。ちなみにその乗車券は48時間有効で、何度でも乗り降りできる。
 これを高いと考えるか安いと考えるかは意見が分かれるところだが、2階建バスといえば Deuce と呼ばれる公営の路線バスもストリップを走っている。右の写真(クリックで拡大) のピンク色のビルボードは奇しくもその Deuce の広告だ。ここからも読み取れる通り、その運賃は1回券が$3、1日乗り放題券が$7。やはり単純比較では Deuce のほうがかなり安いことになるが、それだけでこの Open Top を見捨ててしまっていいかというと、そうでもない。

 Deuce との最大の相違点は、バス停の位置だ。どちらもストリップを南北に走っているという意味では同じだが、路線バス Deuce のバス停がストリップの路上にあるのに対して、観光バス Open Top のそれはホテルの構内にある。(右の写真はエクスカリバーホテルの構内)
 どちらが便利とは一概には言えないが、ホテルからバス停までの距離という意味では Open Top のほうが短いので、目的地や出発地がホテルの場合は断然便利だ (ホテルによっては例外もあるが)。
 逆に、いちいちホテルの構内まで進入するため、走行距離は長くなる。結果として所要時間も長くなりそうだが、必ずしもそうとは言えないところがむずかしい。

 たしかに Deuce は寄り道をせずに一直線にストリップを走るが、各バス停での乗降客が多い上、運転手しか乗っていないいわゆるワンマンカーのため、乗客が運転手に質問をしたりしていると運賃の支払いに時間がかかり、停車時間が長くなりがちだ。 (写真右)
 一方の Open Top はまだ知名度が低いためか料金が高いためか、乗降客が少なく、さらに車内にいる車掌が運賃の回収をするため停車時間が短い。結果として、Open Top が Deuce を追い越すという現象が実際に起こっている。

 もうひとつ Open Top の利点を挙げるとするならば、「国家歴史登録財」 (National Register of Historic Places) に指定されているラスベガスの名物看板 "Welcome to Fabulous Las Vegas" に5分ほど停車し (写真右)、そこで写真撮影ができるということ。この場所はホテル街から決して遠くはないものの、なかなか行きづらい位置にあるので、ここでの停車は大いなるメリットと考えてよいだろう。

 以上のように、観光バスとしての利便性が確実にあるばかりか、1回乗車した以降も路線バスとして利用できるので、初めてラスベガスを訪問する者にとって 35ドルは高くないのではないか。道路事情にもよるが、約1時間半から2時間でストリップ大通りのほぼすべての景色をオープンエアの環境からひと通り見てまわることができるのは画期的といってよいだろう。
 とはいえ、純粋な移動手段としては、タクシーと比べるまでもなく不便で、また運行間隔も30分に1本と、数分間隔の Deuce に比べるとかなり使い勝手が悪いのも事実。また Deuce とちがい 24時間運行ではない。まだ流動的で最終確定ではないようだが、始発は午前10時ごろ、最終は午後9時ごろで、不夜城ラスベガスとしてはなんとも早い夜だ。

 運行の範囲は北端の停車場がストラトスフィアタワー (右の写真内の白い塔)、南端が前述の名物看板で、その間に15ヵ所のホテルのバス停が点在している。ダウンタウンには行かない。
 南北にエンドレスで走り続けるので、どこから乗ってもどこで降りてもかまわないが、名目上の起点・終点となっているのがMGMグランドホテルのバス停で、ここで実際に時間調整の停車や、運転手、車掌、車輌などの交代も行われる。したがってこのバス停を挟むような位置から乗車すると、ここで30分ほど待たされたり、車輌交換のために一度下車しなければならなかったりするので、観光目的で利用し街全体を見たいという場合は、とりあえずこのMGMから乗るようにしたい。

 このバス停の正確な位置は、MGMグランドの構内ではなくストリップに面した場所にある。目印は Grand Canyon Experience という名前の大きなギフトショップ (右の写真内の黄色い看板の店)。バスはそのショップのすぐ脇の路地の部分に停車する。
 乗車券は車内の車掌、もしくは現場にいるスタッフが販売するので、事前に買ったりする必要はない。現金でもクレジットカードでも支払い可能。一度下車して再乗車する際は、レシートを提示すればよい。

 最後に注意事項を2つ。冒頭でもふれた通り、2階席は柱も窓もなく360度開放されているので、快適かつ安全のようにも思えるが、それはあくまでも水平方向の話であって、頭上方向は障害物が多く非常に危険だ。
 たとえばサーカスサーカスホテルの玄関前に進入する際は、その屋根が非常に低く (写真)、座席から立ち上がると命を落としかねない。
 すわっていれば安全かというと、そうでもない。各ホテルの構内にある植木の枝は、すわっていても頭に当たるので、右上の写真のように意識的によける必要がある。特にヤシの木は葉が鋭いので危険だ。

 もうひとつの注意事項は安全に関することではないが、これも非常に重要なことなのであえてふれておきたい。
 この記事を読んでわざわざバス停まで足を運んでも、このバスの運行自体が消えてしまっている可能性がある。気候がよい今の時期でも空席が目立ち、このあとの厳しい冬を乗り切れるとは思えないからだ。走行中はものすごい風を受ける。寒さに強い白人といえども真冬にあの強風を1時間以上受け続けることは耐え難いだろう。
 失敗した前例もある。かつてトロリーバスと称するバスが、同じくホテル構内に入るルートで運営していたことがあるが、わずか数ドルの運賃であったにもかかわらず利用者が思うように伸びず撤退を余儀なくされた。
 もしこのバスが生き延びることができるとすれば、徹底した宣伝が不可欠だろう。そのためには Deuce のようにわかりやすい愛称のようなものがあったほうがよいと思われるが、Open Top Sightseeing では長すぎるのか歯切れが悪く印象も薄い。せっかくスタートさせたからには、ネーミングもじっくり検討し、何とか頑張ってもらいたいものである。


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