週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2009年 09月 02日号
夜景が自慢、元 Center Stage のドームにタパス店がオープン
 「センターステージ」(Center Stage)という言葉を聞いて、そのかつての繁栄を思い出せる者がどれほどいるだろうか。夜景の美しさで一世を風靡した今は亡き有名レストランの名前だ。
 70年代初頭、まだストリップ地区よりもダウンタウン地区のほうが主役だった時代、そのダウンタウンの 「メインストリート1番地」 という文字通り 「ラスベガスのヘソ」 とも言える一等地に出現したカジノホテル 「ユニオンプラザ」 (現プラザホテル。写真右上、クリックで拡大)。立地条件はもちろんのこと、当時としてはラスベガス最大規模のカジノを持つなど大いに注目された人気ホテルだ。

 そんなホテルのメインダイニングがセンターステージで、夜景が最も美しい店として長年に渡って親しまれてきた。
 "Glitter Gulch" (光り輝く渓谷) とも称されるほどの明るいネオン街の全景を縦位置から見渡せる場所にあり、なおかつ全面ガラス張りの円形ドーム型の施設とあっては注目されないわけがない。 (一番上の写真の中の黒い円形の施設)
 当然のことながら数々の映画の舞台にもなっており、たとえば 「カジノ」(1995年、ユニバーサル映画)ではロバートデニーロとシャロンストーンがこの店で密談シーンを演じている。
 そんなセンターステージも、ストリップ地区に巨大テーマホテルが次々と現れ始めた90年代以降、ダウンタウン地区の衰退と共にその存在感を失い、2007年にはとうとう閉店に追い込まれてしまった。
 その後はカジュアルなバーラウンジとして使われたりしてきたが、ラスベガス屈指の夜景という付加価値があるにもかかわらず、いつも人影はまばらで、もはや円形ドーム自体が完全に忘れ去られようとしていた。

 そこにこのたびオープンしたのがタパスを得意とするレストラン 「Firefly」 (写真右。赤い線はドームの骨格、背景は透けて見える屋外の景色) で 、日本人としては大いに気になる要チェックの店だ。
 タパス (tapas) とは、スペインで親しまれている 「小皿料理」 のことで、調理方法や食材に特に決まりは無く、とにかく小さな皿に少し盛られたミニ料理であればなんでもタパスだ。
 日本人がアメリカで食事をすると、その量の多さにだれもがビックリさせられるが、このタパスはまさに日本人向きで、サイズは日本の居酒屋の一品料理程度。一人で2〜3皿はオーダーでき、大勢で行けばかなりの数の料理を楽しむことができる。また、料理のジャンルの幅も非常に広く飽きが来ないのも特徴だ。そこにラスベガス屈指の夜景も付いてくるとあっては行ってみないわけにはいかない。

 現場レポートの前に店のバックグラウンドについてふれておくと、この店はラスベガスで初めての店舗ではない。多店舗展開するチエーン店でもなく、6年たってやっとオープンした2号店だ。
 ちなみにラスベガスでタパス料理というと、ストリップ地区ではファッションショーモールの正面入口にある 「Cafe-Ba-Ba-Reeba」 が、そして地元民向けの郊外店としてはパラダイス通りにある 「Firefly」 (写真右上) がそれぞれ有名だが、不思議なことに両者には接点がある。
 今回オープンしたのはその Firefly の2号店ということになるが、Firefly のオーナーシェフ John Simmons 氏は、6年前に独立してその1号店を開業するまで、パリスホテルの歩道沿いにある人気のフレンチレストラン Mon Ami Gabi で4年間シェフをしていた。奇遇にも、Cafe-Ba-Ba-Reeba も Mon Ami Gabi のオーナーが5年ほど前に始めた姉妹店だ。フレンチ料理にかかわっているとタパス店をやりたくなるということか。

 さて今回オープンした Firefly の2号店についてだが、立地条件はもちろんのこと、全面ガラス張りのドーム構造も往年のまま引き継がれており、夜景を楽しむ環境はこれまでどおり何ら申しぶんない。もちろん1時間ごとに演出されるフリーモントエクスペリエンスも、雑踏から離れて静かに鑑賞でき、その優越感がなんともいえない。
 ただ料理に関しては、1号店や Cafe-Ba-Ba-Reeba に比べるとややタパスっぽくないのが少々気になる。つまりスペイン料理らしからぬ平凡なメニューが少なからず存在しているばかりか、サイズもタパスとしてはかなり大きく、一皿で満腹になってしまうようなアメリカ的アイテムが多い。
 たとえばこの店の名前が付いた人気メニュー Firefly Fries ($5.50) や、どこのレストランでも見られる Crispy Calamari ($7.50) は内容も量も完全なアメリカンで、味は悪くないものの一人で食べ切るには多すぎる。また、Paella ($15)のようにタパスではない大きなサイズの料理もいくつかあり、小皿だと思ってオーダーすると、残すことになりかねないので注意が必要だ。
 それでも値段はストリップ地区のレストランに比べかなり安めで、コストに対する満足感は高い。シーフードタパスが8種類、肉類タパスが10種類、その他の冷たいタパスが8種類、温かいタパスが15種、合計41種類のうち37種類が10ドル以下だ。またスペイン料理店では必ず飲みたくなるスペインの国民的ドリンク「サングリア」(写真右) も6ドルと決して高くない。ビールの4ドルも良心的だ。
 世界に冠たるラスベガスダウンタウンの夜景を楽しみながらの食事がこの料金ならだれも文句を言えないだろう。景気が悪いためか特に混んでいる様子も無いので、予約無しでもすぐに入れると思われるが、どうしても予約しておきたい場合は電話 702-380-1352 まで。営業時間は毎日午後5時から深夜12時まで。



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