週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2009年 08月 12日号
MATSURI、少数精鋭のプロ集団に進化し3回目のデビュー
 7月31日、「筋肉で音を奏でる」 をコンセプトにした和製ミュージカル 「マッスルミュージカル」 のラスベガス公演がインペリアルパレスで始まった。当地でのタイトルは 「祭 MATSURI 〜OIRAN〜」。
(右の写真はインペリアルパレスと、その壁に貼られたこのショーの広告。そこに OIRAN という文字は入っていないが、広報部門によると入るのが正しいらしい。クリックで拡大)
 じつはラスベガス公演はこれが初めてではない。2006年にリビエラホテルで2ヶ月、翌2007年にサハラホテルで半年間おこなわれていたので、今回の開催は約2年の充電期間をおいての3回目ということになる。

 さて、マッスルミュージカルそのものに関しては今さら説明するまでもないと思われるので、リビエラ版、サハラ版との相違点などを中心にレポートしてみたい。
 まず会場となったインペリアルパレスについてだが、ここはその五重塔からもわかるとおりアジアをテーマにしたホテル。したがって、MATSURI、ホテル、双方にとってこの上ない最高の組み合わせといってよいだろう。またロケーション的にもストリップ地区のほぼ中央に位置しており、サハラやリビエラよりも条件は整っている。

 個々の出し物は当然のことながら微妙に変わっている。また、全体のコンセプト的な部分においても変化が見られ、その最も注目すべき点は役者の人数だろう。(以下の写真はすべて2009年7月20日の渋谷公開リハーサル時のもの)
 エンディングのスタンディングオベーションの場面でステージに立っていたのは男性10人、女性7人。サハラやリビエラでの公演ではその倍以上だったように記憶しているので、かなり少なくなった印象を受ける。
 結果的に、今までの公演ではマスゲームのように規則正しく整然と踊るシーンが相対的に多く、統制、集団、規律といった言葉が似合う演出が目立ったが、今回の公演では人数が少なくなっただけでなく雰囲気的にも自由にのびのび楽しそうに演技している様子が感じ取れ、統制、集団といった印象はすっかりうせていた。

 そのぶん一人ひとりの役者は明確な役割分担のもとで独自の演技を披露することになり、このショーにおける基本方針が少数精鋭主義に切り替わったことがうかがえる。
 その変化にともない、演出のコンセプト自体も 「集団」 から 「個人」 にシフトしているようで、今までは似た体形の役者による寸分の狂いもないシンクロした美しい動きなどが見どころであったのに対し、今回の公演では個人あるいは少人数での難易度の高い演技が増え、さらに全員で演じる場面でさえも一人ひとりの個性が生かされ、動き、体形、衣装、すべてにおいて統制や均一性といった部分にあまりこだわることなく、あえて不ぞろいや多様性を容認しているかのような演出が目立った。

 結局、「筋肉」 という自ら設定したテーマからも開放されたのか、演出の幅も広がり、実際に個性あふれるマジシャンが登場したり、他とはまったく異なる衣装を身にまといコミカルな演技で観客を沸かせる役者がいたり、各自のキャラクターや特技を生かしながらの多様化が進んでいる。
 これを歓迎すべきか、それともかつてのような集団演技に重点を置いた構成のほうがいいのか、それは人それぞれ好みのちがいで意見が分かれるところだろうが、ステージがそれほど広くないという物理的な制約や、観客との一体感などを考えると、今回の少数精鋭主義は正しい選択だったように思える。
 大人数によるマスゲーム的な演出では、観客にとって一人ひとりの役者の顔を覚えながらその個性までを堪能することはむずかしいが、今回のバージョンでは、それらが容易で親近感が増してくるのか、結果的に会場からの声援や笑いや拍手が明らかに増えているように見受けられた。

 ちなみに劇場の広さに関しては、リビエラのときにも同じようなことがいえたが、ホテル自体がかなり古く、往年のラスベガススタンダードともいえるディナーショー形式のレイアウトになっているため、座席の周囲にゆとりが少なく、また会場全体も決して広くはない。座席数としては、固定席ではなくテーブルとイスを並べる方式のため、その配置によって多少変動するが、通常のフォーメーションにおけるこの会場のキャパシティーは600席前後。極端に少ないわけではないが、渋谷の専用劇場マッスルシアターのような開放感はない。
 あまり広すぎて空席が目立つよりも、この程度のサイズのほうがいいという見方もあるので、これはこれでいいと思われるが、いずれにせよ、この会場に30人、40人の役者は多すぎるだろう。

 このように書くと、従来型の演出がまったくないようにも思えるが、そんなことはない。
 役者の人数こそ少ないものの、この集団の看板演目ともいえる「筋肉で音を奏でる」 はちゃんと披露され (写真右)、また、自慢の跳び箱を使った荒技も今までどおり健在だ。
 その他の運動系に関しては、あまり細かいことまで書いてしまうと観るときの楽しみが減ってしまうので演目を列挙するだけにとどめておくが、平行棒、あん馬、跳馬、ゆか運動、新体操のリボン、バトン、なわ跳び、フラフープ、ジャグリング、ラート、空中ブランコ、などがそれぞれの分野の一流プレーヤーによって披露される。

 下駄を履いたタップダンスやシャドー和太鼓などのユニークな演出も少なくない。前述のマジシャンの登場もこのショーとしては画期的かつ意外性があり、まさかの本格的なマジックに驚かされるはずだ。
 演出の中にダルマ落とし、獅子舞、和傘などを取り入れるなど、日本的なものを紹介することにこだわりを見せているところも、日本人としてはうれしい。
 なお、タイトルにもなっているおいらんに関しては、コシノジュンコ氏デザインの派手な赤い衣装が印象的ではあるが、それを着ている限り活発な動きがまったくできないため、「スポーツエンターテインメント」を標榜するこのショーとしてはマスコット的な存在以上にはなりえていないように見受けられた。それでもこのショーを日本というイメージで統一させるためのビジュアル的な効果としては大いに活躍していたと思われる。

 あれこれ長々書いてしまったが、観て後悔するようなショーではないので、予算と時間が許す限り、ぜひ足を運んでみるとよいだろう。特に地理的に日本での公演を観る機会がない人、日本公演とラスベガス公演を比較したい人、日本人の海外での活躍を応援したい人などは必見だ。
 場所はインペリアルパレスのカジノ内にある 「Geish Bar」 の脇からエスカレーターを上った左側。チケット売場もそこにある。
 公演スケジュールは、日、月、水、木、土が 4:00pm、金が 4:00pm と 8:00pm、火曜日は休演。公演の正味の継続時間は取材時の実測値で67分。
 チケット料金は $49.95 と表示されているが、税金や手数料が加わり実際に現場で支払うのは約59ドル。$10高いVIP席と呼ばれる席もあり、それはブース席。



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