週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2009年 07月 29日号
リックトーマスがサハラホテルで2年ぶりに復活
 ラスベガスでマジシャンといえば、今ならだれもがランスバートンを想像するだろうが、その次に来るのは誰か。
 日本人観光客からの期待と地元からの期待という意味では、たぶんこの人、リックトーマスではないか。そんな彼が2年ぶりにサハラホテルで復活した。
 マジシャンにとってラスベガスは聖地のようなもの。これまでにも数多くのマジシャンが活躍してきたし、今でも活躍している。
 トラを使ったショーで有名だったシークフリート&ロイは、ロイがトラに噛まれるという6年前のまさかの事故で公演が打ち切られ、残念ながら今ではすっかり過去の人となってしまっている。知名度ではだれにも負けないデイビッドカッパーフィールドは、ラスベガスに常駐しているわけではなく、1年のうちの半分以上は休演かアウエー公演ということもあり、地元ラスベガスにおける存在感も、日本人観光客の関心も意外と低い。
 ペン&テラー、マックキングは一流マジシャンとして確固たる地位を築き評価も非常に高いが、いかんせんコメディーマジックのため、日本人観光客には言葉のハンデがありなじみが薄い。クリスエンジェルは知名度こそ抜群だが、基本的にはテレビでのマジシャンであり、不慣れな最近のステージ公演では評価を落とし存在感も今ひとつだ。ネイザンバートン、スティーブワイリック、ダークアーサーはローカルでの知名度こそあるものの、地味な公演が続き、なかなか飛躍できないでいる。

 そんな中、地元密着型のリックトーマスがこのたび起死回生の復活を果たした。
 これまでトロピカーナホテル、スターダストホテル、オーリンズホテルで活躍してきた第一人者だが、オーリンズを去ったあとのこの2年は、日本で公演したり充電期間が続いていた。
 これまでの会場ホテルの格を見ると、今回のサハラも含めて、カッパーフィールド(MGM)、クリスエンジェル (LUXOR) などに比べやや見劣りするが、地元での貢献度や存在感はいまだに大きく、また日本人にとってもわかりやすいマジックを演じる一人として、今後の期待は大きい。

 彼のショーのウリはやはりトラだ。トラに関しては、以前からシークフリート&ロイに勝るとも劣らぬ入れ込みようで、現在もラスベガス北西部 (ローカルカジノ「サンタフェステーション」 の近く) にある自宅の広大な敷地の中で7頭のトラを飼っている。
 それらのトラをショーで使い続ける限り、その移動経費を考えるとアウエー公演を多数こなすことはむずかしく、結局ラスベガス密着型の常駐公演に活路を見い出すしかない。ちなみにトラ 1頭を日本へ運ぶと15,000ドルかかるという。
 そんな事情もあり、世界不況という厳しい時期ではあるが、このたび彼はサハラホテルと 1年契約を結び、地元に軸足を置いた活動を再開することにした。
 人間は新天地を求めてどこへでも移動できるが、トラの環境を簡単に変えることはむずかしい。1年後、契約延長となるのか、去ることになるのか、この1年が正念場となるが、もはや彼はこのラスベガスで7頭のトラと運命を共にするしかない。そんな熱意を感じる今回の再スタート公演をさっそく観てきた。

 会場自体はなんら問題ないが、街の最北端というサハラホテルの立地条件を考えると集客においてやや不安があったが、思ったより盛況で、1階席の8割ほどが埋っていた。(2階席はもともと使用していない)
 スタートはハトを使った古典的なマジックで、これまで以上にこの部分の演出に力が入っていた。ハニカミ屋系のランスバートンに比べると男性的でやや荒削りなところが彼の特徴だっただけに、この手先の器用さが求められるハトのマジックは、かなりランスバートン的な味わいがあって意外だった。衣装こそタキシードではなくラフな格好だが、ハトの出し方や消し方は非常にスムーズで、今までの彼とはちがった側面を見せてくれた感じだ。
 その後は人間切断、空中浮遊、そしてオートバイやトラを出したり消したりする大掛かりなイリュージョンが続き、さらに会場から子供をステージに上げての笑いがたえないマジックなど、かなりコミカルなパフォーマンスもあり、バラエティーに富んだ演出だった。

 2年前までの演出と比較してちがっている点をしいてあげるとするならば、総じてよくしゃべるようになったということ。結果的に会場が笑いに包まれるシーンが多く、それは言葉にハンデがある一般日本人観光客にとっては歓迎しがたい部分ではあるが、しょせんはマジックショーなので言葉で楽しむ部分よりも見て楽しむ部分のほうが圧倒的に多く、たとえトークの部分を聞き取れなくても、このショーの楽しみの本質を失うようなことにはならないだろう。
 大きなトラがステージに登場するということ自体、それだけで観る価値は十分にあり、そのトラを毎日自宅から会場に運んでいるという苦労や経費を考えただけでも応援したい気持ちになるショーだ。

 公演は、休演日の月曜日を除く毎日 7:00pm。土曜日と日曜日は 4:00pm の部もある。
 チケット料金は $39.95。チケット売り場はサハラホテルのストリップ側の正面玄関を入ってすぐの右側。会場は、その正面玄関を入ってカジノを横切る形で少し進んだ右側。
 最後に、このショーとはまったく関係ない余談だが、この会場の入口の前は、「最低賭金1ドル」のブラックジャックを中心とした低額テーブルゲームの特設エリアになっていて (写真右上)、メインカジノフロアよりもはるかに盛況で活気がある。
 ブラックジャック初心者や、予算が少ない者はぜひ足を運んでみるとよいだろう。ただしルールにきびしい制限があり、5ドル以下の賭金の場合、ブラックジャックが完成しても通常の勝ちと同じで払戻しは1倍、それ以上の賭金でも 1.2倍 (通常は1.5倍) になっているのであらかじめ了解しておく必要がある。



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