週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2009年 07月 22日号
新料金システム 「朝、昼、晩、食べ放題」 は定着するか
 「ギャンブラーには一分一秒でもカジノで長く遊んでもらいたい。だから食事の時間は短いほうがいい。そのためには、いつでもすぐに食べられる料理を提供する必要がある。」
 そんなカジノ側の思惑に基づいて何十年も前に登場したのが、日本でいうところのバイキング、つまり均一料金で食べ放題の BUFFET と呼ばれる食堂だ。なぜか 「レストラン」 とは決して呼ばない。少なくともラスベガスではレストランと BUFFET は明確に区別されている。

 この BUFFET の発音がむずかしい。日本語表記の 「バフェ」 や 「ビュッフェ」 をそのまま発音しても絶対に通じない。もちろん通じないからといって 「バイキング」 だと北欧の海賊になってしまうのでまったく論外だ。したがってこのサイトでは、現場で通じやすいようにあえて 「バフェィ」 (うしろの [ェィ] にアクセント) と表記しているが、今回の話題はそれではない。
 とにかくこのバフェィはラスベガスの食文化として古くから広く定着しており、その規模も存在感も他の都市のホテルのそれよりはるかに大きく、利用者数もけた違いに多い。そして競争が激しいからか、利用者の期待が大きいからか、ラスベガスのバフェィは常に進化しており、各ホテルは陳列方法や演出の工夫などに余念がなく、料理のジャンルや料理の種類も増え続けている。

 前置きが長くなってしまったが、そのラスベガスのバフェィ文化に新たな常識が定着しようとしている。「終日料金」 の導入だ。
 これまで 「食べ放題」 の意味は 「1回の入店」 に対してだったが、数ヶ月前からエクスカリバーホテルが 「25ドルで終日食べ放題。何回でも入店可」 という料金システムを試験的に導入した。
 朝の入店時にレジで終日料金を支払うと、代金支払い済みを意味するリストバンドをその場で手首に巻いてくれ、その後はそのリストバンドを見せるだけで何回でも入店できる。なお不正利用防止のため、そのリストバンドは取り外すと壊れてしまうようになっているので、街を歩く際にカッコ悪いからと言って途中で外そうとしてはいけない。

 この新料金システムは、不況に悩むエクスカリバーホテル (写真右) が、客を他のホテルに奪われないようにするための苦肉の策として始めたもので、「その客が、どこのホテルをふらついていようが空腹になったら必ず戻ってきてくれる」 という発想に基づくアイデアだ。
 その一方で、館内の他のレストランの売り上げを圧迫しかねないという懸念もあり、「諸刃の剣」 でもある。
 したがって、この終日食べ放題はそれ自体が顧客に受け入れられるかどうかという心配はもちろんのこと、他のレストランへの悪影響も試される大いなる実験として始められたわけだが、果たしてその結果はどうだったのか。

 「朝、昼、晩、同じ店で同じようなものを食べたいとは思わない」。豊かな食文化を持つ日本人ならそう思う人もいるにちがいない。
 そもそもバフェィは1回食べると少なくとも数日間はイヤになるものだ。ちなみに料金は朝食だけの食べ放題が12.99ドル、昼食が14.99ドル、夕食が17.99ドルで、それが終日だと25.00ドルになる。
 たしかに価格的な割安感はあるかもしれないが、食にこだわる人はこの終日価格に魅力を感じないのではないか。

 そんなネガティブな先入観を持ちながら、ホテル側から聞かされた結果を知って驚いた。予想に反して非常に好評とのこと。さらにその結果をふまえて、系列ホテルのラクソーとMGMグランドでもこの終日料金をすでに導入しているという。
 にわかに信じられなかったので、日を改め実際に現場へ足を運び、レジでの様子をしばらく観察した。
 なんと朝7時30分前後にやって来る客の約8割はリストバンドを手首に巻いてもらっている。10時30分ごろでも約半数の人が終日料金だ。その人たちはそんな遅い時間から、この店で同じようなものを本当に3回も食べるのか。もちろん3回食べなくてもいいが、2回では割安感があまりない。
 ちなみに営業時間は夜10時までで、食べ放題なのは 「その日の朝から晩まで」 であって、「最初の入店時から24時間後まで有効」 ではない。

 それだけ人気があるということは、同じ店で3回食べても一般のアメリカ人はうんざりしないと推測できるが (ラスベガス訪問者の大半はアメリカ国内在住者という統計がある)、我々日本人の味覚でもうんざりしないのか。勝手な推測はよくないので、実際に3回食べてみた。
 実験会場はエクスカリバーではなく、ホテルとしては格上のラクソーのバフェィで (写真右上)、こちらは料金が終日29.99ドルとやや高い。さて結果はどうだったか。

 意外にも、思ったほどは苦痛ではなかった。食べ過ぎなければそれぞれの食事を楽しめる。理由は、料理のジャンルが豊富なため、似たような味のものを避けることができるからだ。
 たとえば朝食はごく普通にトースト、ハム、ソーセージ、卵、フルーツなどだけにして量を抑える。昼食はピザ、ハンバーガー、スパゲティーなどのパスタ類、タコスなどのメキシカン、焼きソバなどの中華から好きなものを選べばよい。夜はのり巻きなどの簡単な寿司類 (写真右上)、ステーキ、シーフードなどが加わり、選択肢はさらに広がる。もちろん各種ケーキやアイスクリームなどのデザートも豊富だ。

 ということで、個人差はあるだろうが、料理のジャンルが重複しないように工夫すれば何とか楽しめるだろう。ただ、翌日も同じことができるかというと、それは絶対に無理と感じた。考えただけでもうんざりする。
 しかしアメリカ人は 「これはお得!」 とばかりに、多くの人が連日同じバフェィを利用しているというから、我々日本人とはかなり食へのこだわりがちがうようだ。日ごろ質素で単純なものばかり食べている彼らにとっては (本当に一般のアメリカ人の日ごろの食事は質素)、バフェィの料理は何度足を運んでも飽きないほど豪華ということかもしれない。

 結果を見る限り、この終日食べ放題は 「客を他のホテルに逃がさない」 という目的達成には十分効果がありそうで、今後は他のホテルも追随する可能性が十分ある。ただしそれが定着すると、従来に比べバフェィで食事をする回数が確実に増えることになり、既存レストランへの悪影響は避けて通れなくなるだろう。また、バフェィ側にも座席数のアップなど、施設全体の増強が必要になるかもしれない。
 結局今後この料金システムが広く普及するかどうかの分かれ目は、各ホテルがバフェィとレストランのどちらにどの程度依存するのかといったバランス感覚ということになりそうだ。
 いずれにせよ、料金設定に選択肢が増えるということは利用者にとってはプラスなので、今後この終日食べ放題が定着することを期待したい。なお料金は以下の通り。
赤い数字が終日食べ放題の料金。B はブランチ、CB はシャンペンブランチ)

 EXCALIBUR
時 間 料 金 4〜12歳 3歳以下
毎日 07:00am 〜 11:00am $12.99 $11.99 無 料
11:00am 〜 02:00pm $14.99 $12.99
02:00pm 〜 10:00pm $17.99 $14.99
終日 07:00am 〜 10:00pm $25.00

 LUXOR
時 間 料 金 子供:4-11歳 子供:3歳以下
月〜金 07:00am 〜 11:00am $13.99 $ 9.99 無 料
月〜金 11:00am 〜 03:00pm $14.99 $10.99
CB 土・日 07:00am 〜 03:00pm $19.99 $12.99
毎日 03:00pm 〜 10:00pm $19.99 $12.99
終日 毎日 07:00am 〜 10:00pm $29.99 $14.99

 MGM Grand
時 間 料 金 料金 ( 4〜11才 )
朝 (月〜金) 07:00am 〜 11:00am $14.50 $ 9.50
朝 (土・日) 07:00am 〜 10:00am
昼 (月〜金) 11:00am 〜 02:30pm
( 02:30pm 〜 04:30pm はクローズ )
$17.50 $10.99
B (土・日) 10:00am 〜 02:30pm $22.99
CB +$2.50
$11.99
夜 (日〜木) 04:30pm 〜 10:00pm $25.99 $15.99
夜 (金・土) 04:30pm 〜 10:30pm $27.99
終日 (月〜木) 07:00am 〜 10:00pm $29.99
終日 (金〜日) 07:00am 〜 10:30pm $39.99



バックナンバーリストへもどる