週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2009年 06月 10日号
最後のチャンス?! 天然の全身フィッシュリフレクソロジー
 13日からラスベガスコンベンションセンターで、エステ、コスメ、SPAの業界人が集まる3万人規模の世界的なコンファレンス (www.iecsc.com) が開催されるが、今週の話題のキーワードは、「フィッシュリフレクソロジー」、「解禁論」、「アッシュスプリングス」、「希少生物保護」、「公聴会」、そして 「今年が最後のチャンス?!」。
 これだけではなんのことだかわからないので、以下に順を追って説明していきたい。

 まずはフィッシュリフレクソロジーについて。これは簡単にいってしまえば、小魚に足の皮膚を食べさせるセラピー。アジア各地、特にシンガポールのものが有名で、日本からわざわざこれを目当てに行くツアーもあると聞く。日本にもフィッシュリフレクソロジーはあるらしいが、固くなった角質をよく食べてくれるのはシンガポールの魚が一番だとか。
 ちなみにこの魚に求められる能力は、よく食べること以外に、高い水温を好むことも不可欠。冷たい水に長時間足を入れるのは心地よくないからだ。理想は風呂の温度ぐらいということになるのだろうが、それは無理としても最低でも32〜33度はほしい。そんな高温でも食欲が低下しない魚でなければこの仕事はつとまらない。
 この条件を満たす魚で、なおかつ繁殖コストの採算性がよいのはトルコ原産のものらしい。ドクターフィッシュ、スパフィッシュ、ヒーリングフィッシュなどと呼ばれているようだが、気になるセラピーとしての効果のほどは今ひとつあいまいで、懐疑的な意見の専門家も少なくないようだ。

 科学的な根拠や効果はさておき、薬品などに頼らない天然のこのセラピーは、安全、安心、やさしいといった印象があるばかりか、アメリカ人にとっては非常に珍しいので、「ビジネスになる」 と考える者がいても不思議ではない。
 たしかにここラスベガスには世界中からたくさんの人が集まり、各ホテルのSPAではさまざまなセラピーが提供されているので、ビジネスとしての環境は非常に整っている。
 じつは案の定というべきか、中国系のコミュニティーから早くもこれをビジネスにしようという者が出てきた。魚はもちろんトルコ産。
 ところがそれに 「待った」 がかかった。ネバダ州のコスメ業界を管轄する当局 Nevada Cosmetology Board だ。フィッシュリフレクソロジーは州の法律で認められないという。
 「コスメやエステの店舗で使う道具は、一人ひとりの顧客に対してそのつど滅菌消毒したものでなければならない」 がルールとのこと。なるほどたしかに生きた魚は消毒できないのでルール違反は明らかだ。
 さらに、魚が持つ菌が人間に感染しないとも限らないばかりか、ひとりの顧客の皮膚を食べた魚が別の顧客の皮膚を食べることに対する安全性も証明されていないというのが当局側の主張だ。1回ごとにすべての魚を処分するほど魚のコストは安くないらしいが(約10ドル)、仮にそれをやったとしても事前の消毒が必要になるので当局は営業許可を出さない。
 この方針に対して物言いをつけてきた団体が現れた。チャイニーズ系の商工会だ。彼らの言いぶんは、この不景気なときにこそユニークなビジネスでラスベガスに多くの人を呼び込むべきで、すでに他の州でも前向きに検討しているところがあり、それらの州に遅れを取るべきではないという解禁論だ。景気対策という意味ではもっともな意見で、この話題は今週の世界コンファレンスでも議論されるらしい。

 さて、そんな騒動とはまったく別に、人間の皮膚を食べる魚の保護を理由に公聴会が開かれようとしている場所がある。ラスベガスから車で1時間40分ほど北に行った荒野の中にポツリと存在するアッシュスプリングスという小さな天然温泉だ。
 なんとここにはラスベガス版のドクターフィッシュがたくさん生息しており、実際に足の皮膚を食べてくれる。ちなみにこのページに掲載されている写真はすべてそのアッシュスプリングスで先週撮影したもので、シンガポールなどの写真ではない。その証拠に足や魚の背景は天然の川底になっているはずだ。一般のフィッシュリフレクソロジーは魚を入れた洗面器などに足を入れて行うので川底は写らない。(右上の写真で、すわっている部分の木は天然の倒木。クリックして拡大させると魚の多さがわかる)

 驚くべきことに水温は実測値で36度。冬にも測定したことがあるがやはり36度で、年間を通じて一定しているようだ。
 人間にとっては、ややぬるいといった感じの水温だが、魚にとっては限界に近い高温なのではないか。ここは世界屈指の高温全身フィッシュリフレクソロジーが楽しめる場所かもしれない。

 この温泉、地元では古くから知られる場所で、魚の存在も前から知られていた。しかし昨今のフィッシュリフレクソロジー人気の影響かどうかは定かではないが、利用者が増え続け、魚の保護が騒がれ始めたのである。
 生物学者によると、この魚は 「ホワイトリバー・スプリングフィッシュ」 と呼ばれる種類の中のアッシュスプリングス独自の固有種で、1985年に絶滅危惧種に指定されている。つまりこの狭い範囲内 (せいぜいテニスコート1〜2面) にいるのがすべてで、これが絶滅したら終わりだ。

 雑食性で、藻類などの植物だけでなく、水中の小さな昆虫も食べる。そのため人間の足にも興味を示すわけだが、何でも食べるわりには成魚になっても3センチ程度にしかならない。メダカに近い種類らしい。
 したがって口も小さく、噛まれて痛いと感じることはまったくない。むしろ多くの人は、「もっとちゃんとかじってくれよ」 と物たりなさを感じることだろう。
 生息数に関しては、幸いにも今回見た限りではかなり魚影が濃く、今すぐ絶滅するようなことはなさそうだが、ゴミを捨てていくような不心得者も多いようで、突然絶滅しないとも限らない。特に生息範囲が非常に狭いので、ちょっとした汚染や外来種の侵入が危機的状況を招きかねない。

 そんなこともあって、ついにこの希少生物を保護するために、この施設を閉鎖もしくは管理するかどうかの公聴会が 6月25、26日に Tonopah (アッシュスプリングスから近い町) で開かれることになった。ちなみに現在はだれもが自由にアクセスできるようになっており、柵などで囲まれているわけでもなく管理人もいない。もちろん利用は無料だ。
 今回の公聴会で閉鎖が決まっても、すぐに実行に移されるわけではないが、もし決まったらこの秋までが最後のシーズンになる可能性もある。この地域は標高1000メートルの高地にあるため冬はかなり冷え込み、この水温では事実上さむくて利用できないからだ。
 ということで、公共の交通機関がないためレンタカーで行くしかないが (エリア51 の観光ツアーに参加して立ち寄るという方法もあるが、この温泉には30分ほどしか滞在しない)、完全天然でなおかつ無料の高温全身フィッシュリフレクソロジーを楽しんでみたいという者は、今のうちに行っておいたほうがよいかもしれない。

 気になる温泉の水質は、限りなく透明で無味無臭。ミネラルなどの成分に関しては情報収集していないので不明。
 温泉の流れは完全に自然に任されており、日本の温泉でいうところの 「掛け流し式」 (溜めたり循環させたりしていない) なので非常に清潔だ。
 水量は季節などによって変動するようだが、毎分30〜40トンとのこと。上流側にある浴槽のように囲まれた部分にいる限りは、それほど多く湧き出ているようには感じないが、池全体の底から湧き出ている温泉が下流方向に流れている様子を見ていると、その程度の水量があることは体感できる。

 なお魚はある程度の高温を好むためか、温度が低い下流のほうへはあまり行かず、大部分は温泉客がいる池の周辺に集まっている。魚に触れることはかまわないが、持ち帰りはもちろん厳禁。
 このエリアでピクニックなどを楽しんでいるグループをしばしば見かけるが、アルコールの持ち込みも禁止されている。
 着替える場所などは残念ながら特に用意されていない。ただし、かなり広いトイレが男女ひとつずつあるので、そこで着替えることは可能。現場に立てられた注意書きに 「全裸禁止」 とは書かれていないが、今までここで全裸の者を見かけたことはない。駐車スペースの心配は無用。
 なおこれは余談になるが、皮膚が汚れていたほうが魚が多く集まるというので実験してみたところ、たしかにその傾向は確認できた。ということは、魚とたわむれたければ、しばらく風呂に入らず体臭を放ちながら行ったほうがいいということか。同行者に嫌われても魚に好かれたほうがいいという者はぜひ試して結果を報告していただきたい。

 行き方は、ベラージオホテルなどがあるフラミンゴ通りから高速15号線の北行きに乗って、その乗った場所を起点として (そこで距離計をゼロマイルにセット)、そこから北にひたすら26マイル走る。すると出口番号が64で、93号線北行きに乗る出口の標識 (EXIT 64、93 NORTH と書かれている緑の標識。写真右) が見えてくるので、そこで高速15号線を降り、左折するカタチで93号線北行きに乗る。
 そこからさらにひたすら 81マイル、つまり起点から合計107マイル走り、左手にシェル石油 (写真右) の給油所が現れたらそこがほとんどゴール。そのシェル石油の向かい側にある小さな砂利道を右折するカタチで入れば、100メートル先に温泉が見える。
 合計107マイル、キロに換算すると 170km以上ということになるが、ラスベガスダウンタウン周辺を除き非常にすいているので、休憩無しなら1時間40分ほどで着く。途中はほとんど荒野で休憩するような場所もないので、休憩は最終目的地のコンビニ併設のそのシェル石油ということになるだろう。
 なお、93号線は高速道路ではあるが高架道路ではなく、中央分離帯もない対面通行なので、日本と勘違いして逆車線に入ったり居眠りには十分注意すること。
(エリア51 のツアーへの参加に関しては、このラスベガス大全のツアーセクションまで)



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