週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2008年 11月 26日号
スロット業界、「1セントマルチプレイ」 のトレンドが一段と加速
 先週ラスベガスコンベンションセンターで毎年恒例の Global Gaming Expo (通称G2E) が開催された。これはカジノ業界の祭典のようなイベントで、世界中のカジノ関連企業が一堂に集まり新製品や新サービスを発表する大型コンベンションだ。今回そこで注目すべきトレンドが見られたので報告してみたい。

 この G2E には、トランプやサイコロのメーカーはもちろんのこと、監視カメラなどを製造する大手家電メーカーから、カジノディーラーのユニフォームを作る縫製業者まで、さまざまな分野のカジノ関連ビジネスが出展する。
 そんな中、スペース的にも視覚的にも断然露出度が高いのがスロットマシンメーカーで、そのスロット各社のブースで、大きな変化が起きていた。従来型のスロットマシンから 「1セント、マルチプレイ機」 へのシフトだ。

 数年前からその傾向は確認されていたので、この種のマシンの出展自体は特筆に値しないが、今年はそのトレンドが予想をはるかに超えて一気に加速していたので驚かされた。つまりどこのブースも展示機種のほとんどが 「1セント、マルチプレイ機」 になっていたのだ。限りなく近い将来、実際のカジノフロアの様子もそのように変化することは間違いないだろう。

 「1セント、マルチプレイ機」 とは、プレーの基本単位が1セントで、1回のプレーで何通りもの的中ラインが存在する機種のこと (写真左)。
 ちなみに昔からある標準的なスロットマシンでは、5セント、25セント、1ドルなどが基本単位で、それら金額のコインを1度に1枚から3枚投入し、当たりのマークが中央の位置に横一列に並ぶと的中になる。
 参考までに、実物のコインを使う 1セントマシンは 20年以上前にほとんど姿を消し、ダウンタウン地区のプラザホテルに最後まで残されていたマシンも数年前に撤去された。
 なのに再び1セントの復活。景気が悪くなってきたのでプレー単価を引き下げたのかと思われるかもしれないが、そうではない。むしろ実態はインフレ気味になっている。

 1セントといっても 1枚や2枚投入するのではない。もちろん1枚でもプレーできるが、そういうプレーを想定してのマシンではない。1度に50枚、100枚賭けるのは当たり前で、今回の出展で見られた新機種などでは数百枚が常識といった感じだ (右写真のマシンの場合、25 x 10 で 250枚)。つまり、「最小単位が1セント」 と表記されているだけで、実際には 1度に2ドル、3ドル賭けることになる。
 ならば従来からある 1ドルマシンに2枚、3枚賭けるのと同じではないか、と思われるが、プレーする側の心理としては微妙にちがうようだ。それは 「マルチプレー」 に秘密がある。「的中ライン」 がたくさんあるため、機種によっては毎回のようになんらかの当たりが出て、楽しい気分になれるからだ。

 つまり、従来のマシンでは、中央の横一列に的中マークが並ばなければならなかったが、マルチプレイ機では、縦、横、斜めはもちろんのこと、さまざまなジグザグパターンまでもが的中となり (左の写真は、W字型の的中ラインに的中マークが並んだところ)、機種によっては何十もの的中ラインが存在する。
 手順としては、プレーする際にその的中ラインの数を選び、そしてその各的中ラインに対して5枚賭けとか10枚賭けなどの設定ができるようになっているわけだが、結局は 1プレーに数百枚賭けることになり、カジノにとっては 「儲かる機種」 ということになる (もちろんカジノ側の控除率などは機種や設定によって異なる)。
 カジノからの需要が多ければ、メーカーもその種のマシンの開発に力を入れるのは当然のことで、今年の G2E のブースの様子は、そんな業界の実情を反映したものといってよいだろう。

 カジノ側から見て需要がある機種が、必ずしもユーザーから見て需要があるとは限らないが、とりあえず現時点ではユーザーからの支持も得ているようで、実際にカジノへ足を運んでみても、この種のマシンに人が集まっていることがわかる。
 そんな人気のマシンだが、その一方で、ささいなことから法廷論争にまで発展しているから興味深い。それは、「WIN」 という言葉の使用に対する個人ギャンブラーからの異議の申し立てだ。
 数ある的中ラインのどこかに的中マークが並んだ際、「WIN」と表示されるわけだが、実際には枚数が減っていてもそのように表示されることがしばしばある。たとえば、1セントを 200枚賭けてプレーしたら、どこかの的中ラインで50枚ゲット、といったケースだ。この場合、150枚減ってしまうことになるが、その状況において 「WIN」 という言葉を使うのはいかがなものか、というのが争点だ。
 争いの結果がどのようになるにせよ、この論争は 「ひんぱんに的中しているように見えても、実際はなかなか増えない」 といった最近のマルチプレイ機の特徴や問題点を浮き彫りにしたことだけはたしかで、今後この種のマシンをプレーする際は、そういった特徴を十分知った上でプレーしたほうがよいだろう。
 なお、昔のラスベガスしか知らない人のためにあえて書き加えておくと、今ラスベガスのカジノにあるスロットマシンからはコインが消えている。昔は(5年ほど前までは)、実在するコインをマシンに投入し、当たれば実際にコインが吐き出され、勝ちも負けもすべて物理的な存在としてのコインの枚数で管理していた。しかし現在は数値だけをマシンが管理し、勝ち負けの精算はマシンがプリントアウトする換金可能なチケット(レシートのような薄い紙)によっておこなわれている。このシステムの導入により、「100枚賭け」 も 「10,000枚払い戻し」 も瞬時に可能になり、結果としてマルチプレーなどのマシンが登場することになったと考えてよいだろう。


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