週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2008年 08月 20日号
女性マジシャンのショー 「スカーレット」 の楽しみ方
 ナイトショーといえば、有名なシンガーやマジシャンが演じるゴージャスなショー、もしくは巨額をつぎ込んだ大掛かりなミュージカルなどが話題になりがちだが、その一方で、無名の役者が場末風の会場で演じるマイナーなショーも少なくない。少なくないというよりも、むしろ数の上では半分以上だろう。
 どんなスーパースターにも下積み時代はあったわけで、その種のショーを始めから否定すべきではないし、それらを避けていたのではラスベガスのショービジネスの半分も楽しめないことになる。
 もちろんこの世界はきびしく、大半は駄作で短命に終わるのが現実だが、それでも数多く観ていると、中には安くて楽しい価値あるショーに遭遇することもある。
 またそこに、将来開花するであろう役者のきらりと輝く才能を自分なりに発見できたときなどは楽しいものだ。そして実際にスターになったりしたらなおうれしい。
 そんなことを思いながら、8月1日から始まった女性マジシャンによるマジックショー "Scarlett Princess of Magic" を観てきた。

 会場は、その種のショーの登竜門的存在ともいえる 「Vシアター」。
 プラネットハリウッドホテルに隣接するショッピングモール「ミラクルマイル」内にある小さな劇場で、昼間からさまざまなショーをやっているという意味では浅草演芸ホールのような存在だ。狭いばかりかゴージャスさもまったく感じられない簡素な施設だが、役者と客の距離が非常に近く会場全体に一体感があるところは好感が持てる。

 女性マジシャンといえば、ショーのタイトルに 「プリンセス」が含まれていたこともありプリンセステンコーや、90年代にラスベガスでそこそこ名をはせたメリンダ(ランスバートンの元妻) などの名前が頭の中をよぎったが、このショーの主役スカーレットはそのどちらともちがっていた。
 女性にしては体格がかなり大柄でプリンセステンコーとは対照的。またマジシャン特有のスムーズかつ機敏な動作はあまり見られず、メリンダともまったく似ていない。
 どちらかというと動きは荒削りでぎこちなく、また雰囲気は華麗というよりはコミカルな要素を持ち合わせており、マリリンモンローに扮したりもする。一般のマジシャンは自分独自の華麗かつ神秘的なイメージを大切にし、およそ他人のモノマネなどしないので、そういう意味では彼女は独特なキャラクターを持っているのかもしれない。

 個々の出し物としては、小鳥を消したりする古典的なマジックから、瞬時に人間が入れ替わる大掛かりなイリュージョンまで多岐に渡っているが、やはりどれも総じてぎこちない。簡単にいってしまえば、素人っぽい動きが目立つ。
 そんな中、ワインボトルを筒で隠したり出したりするマジック(これも古典的ではあるが)は、彼女のキャラクターと、動作、表情、BGM、舞台セットのすべてがうまくマッチしており一番の出来といってよいだろう (写真左上)。
 その演出を見ていると、マジックで重要なことは大掛かりな装置やタネの不思議さよりも、「ま」 の取りかたや 「流れ」 にあることを痛感させられ、彼女も腕を磨けばもっとうまくなる素質を持っているようにも感じられた。だからといって将来スターになれるかどうかとなると大いに疑問だが、そのへんのことは人それぞれ感じ方がちがうはずなので、彼女の才能を探し出すつもりでじっくり観てみるとおもしろいかもしれない。
 いずれにせよこの種のショーは、ただばくぜんと観ると期待ハズレだった際にガッカリするので、役者の将来を審査するつもりで観るのが賢い鑑賞方法だ。「金を払って審査員をやって何が楽しい」 などと固いことは言わず、審査員をやらせてもらう権利金がチケット代だと思って現場に足を運んでみれば、きっと新たな楽しみ方を発見できることだろう。

 ちなみに彼女のマネージャーのジョン・アンドリュー氏 (元マジシャン)によると、これまでハリウッドのマジックキャッスルなどでもやってきたが、これからはラスベガスに本格挑戦したいので最低でも6ヶ月は頑張ってやってみるつもり、とのこと。
 とはいっても、集客が芳しくなければすぐに退場させられるのがこの業界のおきて。ということで、「審査員」をやってみたい者は早めに行ったほうがいいかもしれない。

 公演日時は金曜日から月曜日が 2:30pm、火曜日と水曜日が 4:00pm。木曜日は休演。
 つまりこのショーはナイトショーではなくアフタヌーンショーということになる。夜の活動が中心となりがちなラスベガス滞在においては、昼は比較的何もやることがないので、それはそれで便利な時間帯といえなくもない。ちなみに上演時間は正味約55分で、通常のナイトショーよりかなり短い。
 チケット料金は$35 + 手数料 + 税金などとなっているが (12才以下の子供は $15)、この劇場で行われているショーは基本的にすべて半額チケットショップ(TIX 4 TONIGHT など) で売られているので、そこで買うとよい。(半額チケットでも手数料などが加算され $21 ほどになる)
 会場から一番近い TIX 4 TONIGHT は、日本語が通じるギフトショップとしておなじみの「横浜おかだや」が入っているハワイアンマーケットプレース内にあり (写真左上)、ストリップ地区全体から見た位置は、プラネットハリウッドホテルとMGMグランドホテルのほぼ中間地点。


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