週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2008年 06月 04日号
当たりハズレが大きいカリスマシェフの "Table 10"
 今週は、ラスベガスで最も新しいホテル 「パラッツォ」 内に登場した話題のレストラン "Table 10" を紹介してみたい。
 パラッツォに数あるレストランの中でも最も混雑しているのがこの店。週末のピーク時などは1時間待ちは当たり前で 2時間待つことも。
 なぜそれほど注目されているのか。それはすべてシェフにある。アメリカでは有名シェフのことをスターシェフもしくはセレブリティーシェフなどと呼ぶことが多いが、ようするに日本でいうところのカリスマシェフ。そのカリスマの名は Emeril John Lagasse (以下、エメリル)、48才 。

 カリスマシェフは全米にたくさん存在しているが、料理のレベルはともかく (それは人によって意見が分かれる)、知名度という意味では間違いなく全米で1、2を争うレベルで、特に最近は、日本でもカリスマ主婦と称されるほど有名なマーサ・スチュワートとテレビで競演したりするようになったため、グルメに興味がない者の間でも広く知られるようになった。
 また、レストラン経営やテレビ出演のみならず、自分の名を冠したキッチン用品やレシピ本の販売を始めるなどビジネスにも余念がなく、ついに今年の春、マーサ・スチュワートの会社がそれら商品の販売権を 5000万ドルでエメリルから買い取ったことは、料理界で大きな話題となった。

 そんな彼が監修した店となれば注目されないわけがない。
 ちなみに Table 10 は彼にとってラスベガスで3番目の店で、1番目は MGMグランドホテル内にあるニューオリンズ料理の Emeril's、2番目がベネシアンホテル内にあるステーキハウス Delmonico だ。
 ラスベガス以外では、本拠地ニューオリンズにある Emeril's 本店の他、フロリダなどにも数店あるが、総店舗数は全米で10店と、自身の知名度のわりにはそれほど多くない。

 Table 10 のジャンルはニューオリンズ料理を取り入れながら創作したという 「ニューアメリカン」。言葉自体は単純明快だが、具体的にどのような料理なのか、いまひとつわかりにくい部分もある。メニュー内にガンボ、ジャンバラヤといった名前が見られるので、単なるニューオリンズ料理のようにも見えるが、じつはそうでもなさそうだ。後述するが日本料理の存在も見え隠れしている。さっそくいくつか食べてみた。

Bread : Free
無料で出てくるパン。ニューオリンズ料理はフランス食文化を引き継いでいるので固いフランスパンが出てくるのかと思いきや、しっとりしたフワフワのパンで、味も食感も非常に良い。食べ過ぎに注意。
Barbecued Kurobuta Pork Roll : $11
最近アメリカのレストランで急に見かけるようになった KUROBUTA。メニュー内に解説なしで登場するが、どれだけの人が理解しているのか。それはともかく、期待に反して味はいまひとつ。
Tartare Trio  $13
細かく刻まれたサーモン、マグロ、ハマチの3種の刺身。それぞれに香辛料やクリームチーズ、カリッと揚げたパスタや細かく刻んだ香味野菜などが加わり絶妙な味に仕上がっている。しょうゆ系の味ではない。
New Orleans Oyster Fritters : $11
カキを細かくたたいてペースト状にした揚げモノ。カキの香りはするものの歯ごたえがなく最低の一品。ペースト状につぶす理由が理解できない。そのままでは使えないほど形や鮮度が悪いということか。
Crispy Calamari : $12
上記カキの失敗作の口直しにオーダーしたのがこのイカフライ。これはどこのレストランでも当たりハズレが少なく、未知の楽しみはないが安心してオーダーできるのがうれしい。味は想像以上でも以下でもない。
New Orleans style seafood and andouille gumbo : $9
ニューオリンズ料理でおなじみのガンボスープ。1人前が鍋で運ばれ、客の前でスープ皿にあけてくれる。とろみとなめらかさが絶妙で、しっかりしたカキの歯ごたえもよい。色など見た目は悪いが味は絶品。
Pasta Jambalaya : $28
ジャンバラヤといえば米を使うのが一般的だが、ここではフィットチーネのようなパスタが使われている。チーズの風味もありイタリアンとケージャンの融合といった感じでなかなかよい。パスタにコシもある。
Lobster Pot Pie : $38
高いだけのことはあってこれは非常によい。こってりしすぎず、あっさりしすぎず、クリーム系のスープをベースに ロブスターの香りと食感が絶妙にマッチ。量が少ないのが難点。
Rotisserie Half Chicken : $25
鶏肉自体は悪くないが、甘味もなく辛味もなく、いまいちハッキリしないピントがボケたような味付けのソース。添えられているクスクスの味付けも同様に意味不明。ぜひ避けたい一品。
White Chocolate Malassadas : $9
デザートメニューの中からウェイターが自信を持ってすすめて来たのが、この揚げドーナツのようなマラサダ。中のホワイトチョコレートも含めて全体が甘すぎ。あたたかい状態でサーブされる。
Sweet Potato Cheesecake : $9
これもウェイターおすすめのデザートだが、味も食感も甘さも、すべてにおい失敗作 (店側は失敗とは思っていないだろうが)。日本人と味覚が異なるウェイターに聞くこと自体が失敗と考えたい。
Blue Mountain : $12
「日本人の日本人による日本人のためのコーヒー」 ともいえるBMがアメリカのレストランで出されるのは極めて異例。アメリカでこの値段で売れることがわかれば日本の某商社も流通方針変更か。味は GOOD。

 以上のように、「当たり外れの落差が大きい店」 というのが正直な印象だ。つまり、メニューを慎重に選べば十分楽しめる店だが、そうでない場合はガッカリしかねない。クセがある店を好む者にはいいかもしれないが、味に冒険を求めない者は避けたほうがよいかもしれない。
 メニューは日によって多少の変化があるとのことだが、とりあえず現時点でのメニューは以下の通り。なお、「マーチャンダイズ」 は、マーサスチュワート・リビング・オムニメディア社の商品として店内で販売されている。

 メニュー1、  メニュー2、  デザートメニュー、  マーチャンダイズ

 ところで、宣伝広告や広報資料の中には、New Orleans、Mediterranean、French、Italian といった言葉がたくさん出てくるが、Japan も Japanese も Asian もまったく出てこない。つまり、ヨーロッパ系のモノをアレンジして創作した料理、といわんばかりの説明だが、その一方で、メニューの中には前述の Kurobuta、そして Wasabi、Kobe Beef、Hamachi、Miso、Tamari といった言葉が出てくる。また、ジャマイカで日本の企業が生産から流通までを独占し、ほぼ全量が日本で消費されているブルーマウンテンがこの店にあるというのもアメリカでは珍しい。日本の食文化を少なからず研究し影響を受けていることは間違いないところで、最近のアメリカの料理界のトレンドを象徴しているような店、といってよいのではないか。
 知名度、露出度、発言力、どれをとってもアメリカの料理界では絶大なる影響力を持つシェフなので、日本の食文化の繊細な部分をもっと研究し、デザートなどのさらなる進化に貢献してもらいたいところだ。
 場所はパラッツォホテルのカジノフロアの上にあるショッピングモール内。営業時間はランチタイムから深夜12時ごろまで。


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