週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2008年 05月 28日号
貸切状態でプレー! ジャックニクラウス PGA The Chase
 ラスベガスで最も贅沢と思われるゴルフコース PGA The Chase がコヨーテスプリングス地区にオープンした。
 「贅沢なコース」 とは何か。グリーンフィーや会員権の高さ、メンバーの少なさ、豪華絢爛なクラブハウス、地価が高い立地など、人によってその基準や価値観はさまざまだろう。
 しかしこのザ・チェイスはそれらのどれにも該当しない贅沢さを持っている。混雑度だ。実はこのコース、4月25日の開業から約 1ヶ月が経過するが、今も毎日1組か2組しかプレーしていない。つまり、ほとんど自分たちだけの貸し切り状態でプレーできる。
 会員数が少ないメンバーコースで天気が悪かったりすると、そのようなことがたまにあるが、ここはだれもがプレーできるパブリックコース。天気が良い週末でも、広大なコースの中にいるのは自分たちだけ。これを贅沢と言わずしてなんと言おう。

 では人気がない劣悪なコースなのかというと、そうではない。ラスベガス屈指の内容を誇る本格的なコースで (7471 yrd、Par 72、Rate 75.8、Slope 141)、また、芝生のコンディションなどもまちがいなくラスベガスでナンバーワンだろう。
 最も高級コースとされるハイローラー向けのシャドークリークやカスケータもたしかにメンテナンスは抜群で、ディボットやディボットマーク、そしてグリーン上のボールマークなどはきれいに直してあるが、このザ・チェイスには始めからディボットなど存在していない。プレーしている人がいないのだから当然だろう。(写真ではそれほどきれいに見えない部分もあるが、実際は完璧なコンディション)
 コースを設計したのはジャックニクラウス。砂漠の中だというのに池も滝もたくさんある。水不足が社会問題となっているラスベガスだが、ここでは水も贅沢に使われており、水問題とは無縁の世界だ。(地下水が豊富なため)

 ではなぜ客が来ないのか。現場スタッフの説明は単純明快だ。「新しすぎてだれも知らない上に、ほとんど宣伝もしていないから」 とのこと。
 たしかに明快な理由だが、よく考えてみるとおかしい。どんなコースでも 「開業直後」 という時期はあったわけだが、新設コースでだれもプレーしていないなど、聞いたことがない。仮に宣伝をしていなくても、少なくとも地元民には建設時からその存在は知られてしまうのが普通で、知名度ゼロなどということは一般的にはありえない。しかしこのザ・チェイスの開業は、本当にまだ知られていないようだ。ではなぜか。

 実はコヨーテスプリングスという地区に原因がある。(左はその広大なエリアの入口の様子)
 ラスベガスから北に車で1時間弱の場所にあるこの地区には、まだほとんどだれも住んでいない。周囲は360度、見渡す限りの砂漠で、また、このエリアを貫く道路(93号線) の交通量も非常に少なく、さらにゴルフコースはその道路から見えにくい位置にある。
 そのような理由で知名度が極端に低いわけだが、このゴルフコースの本質を理解するためには、コヨーテスプリングスについてもう少し知っておく必要がある。
 2004年11月30日付けの「スポットニュース」でも取り上げたが、コヨーテスプリングスとは、何もない砂漠の中にゴルフコース、ショッピング施設、学校、病院などを造り、そのまわりに数千軒 (最終的には数万軒) の住宅を建設しようというビッグプロジェクトで、完成すれば砂漠の中に巨大コミュニティーが出現することになる。ゴルフコースの数も予定では最終的に10コースになるというから半端ではない大規模開発であることがうかがえる。
 今回オープンしたザ・チェイスはそんなプロジェクトの中の第1号のゴルフコースというわけだが、あいにくサブプライム問題などによる景気後退で、住宅などその他の施設はまだ完成しておらず、現在はザ・チェイス以外に何も存在していないのが現状だ。

 ここまでのストーリーを聞くとだれもが心配することは、客が来ないザ・チェイスの経営はどうなるのか、ということだろう。それに対する現場スタッフの答えは極めて前向きのものだった。
 「プレーヤーからのグリーンフィー収入などは最初からあてにしていない。ゴージャスなゴルフコースを造れば、それに面した住宅用の土地は高く売れる。タダ同然の砂漠の土地に付加価値を付けて売るためにゴルフコースを造って運営しているだけ」 という意外なようで極めて当然な理論。ちなみにこのコースはジャックニクラウスの会社とPGAのジョイントベンチャーによって運営されている。
 そんな事情があるためか、グリーンフィーに対しては商売っ気がまったくないようで、「曜日や季節に関係なく一律 200ドル」 というなんとも 荒っぽいドンブリ勘定的な料金設定になっている。(なお、キャディーが必ず付くことになっており、キャディーフィーとチップで最低 $50 ぐらいは必要)

 話は長くなってしまったが、とりあえず今はすばらしいコースを貸し切り状態で楽しむことができるので、興味がある者はぜひ行ってみるとよいだろう。もちろん今後、大々的に宣伝を打って客が急増しないとも限らないが、たぶん混雑するようなことは、住民が住み始めるまではないと思われる (まだ住宅の建設はまったく始まっていない)。むしろ心配なのは混雑よりもメンテナンスで、これだけ客が少ないと、グリーンを毎日刈ったりする意欲もなくなり現在のコンディションが保てなくなるのではないかと気になってしまうが、よけいな心配だろうか。

 行き方は、ストリップ地区のホテル街から高速15号線を北 (ソルトレイクシティー方面) に向かってひたすら走る。ベラージオホテルを起点とすると 26.2マイル(41.9km) 走ると、93号線が出てくるので、そこで 15号線を降り、93号線に乗り換える。あとはそこから 31マイル (49.6km)、つまりベラージオから 57.2マイル (91.5km) の地点に、コヨーテスプリングスに入る道 (168号線) が出てくるのでそこを右折 (左上の写真は 93号線)。右折したあとは 2分も走らないうちに左手に仮クラブハウスが見えてくる。所要時間約 55分。

 なお、コース自体は完璧ですばらしいが欠点もある。クラブハウスが未完成なため、レストランなどの施設がまったくない。したがって、今は飲み物や食べ物の持ち込みが自由となっているので、出発前にホテル街のコンビニなどでそれなりのものを買い込んでいくとよいだろう。予約方法や各ホールのレイアウトなどは以下の公式サイトまで。
www.coyotesprings.com/golf_chase18.html


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