週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2008年 03月 05日号
シーザーズパレスで始まったベットミドラー、まだまだ魅力全開
 歌って踊ってしゃべれるスーパーエンターテーナー、ベットミドラーのナイトショー "Show Girl Must Go On" が 2月21日からシーザーズパレスのコロシアム (写真左下) で始まった。

 この種のショーの評価はむずかしい。観る側がその主役のファンかどうかで、感じ方がまるでちがってくるからだ。ファンであればミドラーが何をやっても絶賛、嫌いであれば何をやっても酷評。もちろんファンだからこそきびしい評価をするという冷静な者もいるだろうが、一般的にはファンが観れば 「あばたもえくぼ」 になりやすい。

 幸いにも、好きでも嫌いでもないのでニュートラルな位置から観ることができた。
 結論から先に言ってしまえば、すばらしいとか、完成度が高いとか、感動的といった言葉よりも、ただ単純に 「非常に良いショー」 という印象を受けた。何が、と問われるとむずかしいが、とにかく良い。観客との一体感、コンサートだというのに笑いが絶えない楽しい雰囲気、古き良き時代のラスベガスのエッセンスが随所に見られるノスタルジックな演出、彼女の天真爛漫なキャラクター、それらが実にうまくマッチしており他に類を見ない個性的なショーに仕上がっている。

 最近のラスベガスのナイトショーは、次から次へとやって来ては消えていくミュージカル、それとシルクドソレイユばかり。お堅い雰囲気が漂うミュージカルはラスベガスには似合わないし、シルクドソレイユは多すぎる (すでに5本が常駐公演)。
 そんな中、このショーは、今のラスベガスでは珍しくなったさまざまな要素が凝縮されており、エンターテーメントの原点に回帰したような内容だ。つまり明るく楽しく単純明快で、なおかつどことなく懐古調。下品すぎるほどアブナイ言葉が飛び出す砕けた場面もあるが、それでいて安っぽくなく、ゴージャス感も漂っている。
 懐古調と言えば、今はなきスターダストホテルの電飾を連想させる広告デザイン(左下) も、コンセプトの刷り込みに一役買っていそうだ。

 ところでこのショーは昨年末に終了したセリーヌディオンのコンサートの後継という位置付けにあるためか、とかくそれと比較されがちだが、両者はまるで異なり似ている部分はほとんどない。
 セリーヌディオンのショーは、真剣に歌を聞かせる純粋なコンサートだが、こちらは歌が半分、コミカルなトークが半分のエンターテーメント。その歌の部分も替え歌やメドレーなどが多く、厳粛にかしこまって聞くような場面は少ない。そもそもミドラーは歌手というよりもむしろ女優、それもコミカルなキャラクターをウリにしており、ショーの内容がディオンと異なってくるのは当然の結果といえなくもない。どちらが良いかは好みの問題だろう。

 さて、いいことばかりを書いてきたが、問題もある。すでに地元メディアなどでも指摘されているが、会場が非常に広い(4000席以上) にもかかわらず、巨大スクリーンでステージの様子を映し出すような配慮がなされていない。つまり、彼女の姿をスクリーン映像として見ることができないので、2階席や3階席の奥から顔の表情などを確認することはほとんど不可能に近い。双眼鏡が不可欠だ。
 「映像で観るならテレビで十分。なんのためのライブか」 という考えもありそうだが、補足的なサービスとしてスクリーン映像はあったほうがいいだろう。「顔のしわがアップで映し出されるのがイヤだから」 という噂もあるが、真相は定かではない。ちなみに彼女は現在 62才。
 では1階席のほうがいいのかというと、必ずしもそうとはいえない。1階席の前方はステージ面に対して高低差がほとんどないため、ステージの表面を上方向から見ることができない。このショーでは、ステージ面を照らす照明の変化も楽しみのひとつで、たとえば彼女のナンバーワンのヒット曲ともいえる 「ザ・ローズ」 を歌う際は、そこを照らす照明が赤いバラをステージ上に描き出し、彼女はバラの中心にいるような演出がなされるが、ステージに近い席からはその様子がきれいに見えない。
 もうひとつの大きな問題は英語力。これは主催者側に起因するものではなく観客側の問題だが、彼女のトークが非常に早いのと、下品なスラングなどもたくさん飛び出すため、教科書英語ではまったく太刀打ちできない。非英語圏の者にとってはかなりきついという印象を受けた。

 すべてをここで紹介してしまったのでは楽しみが減ってしまうのでほどほどにしておくが、ショーの具体的な内容にも少しふれておきたい。
 ステージの幕開けは、右のビルボード (クリックで拡大表示) の中に描かれている写真から始まる。大自然の中の一本道にいる彼女、そこに突然竜巻が襲いかかる。そのあとはまさかの展開になり、笑いの中で幕が開く。
 歌われる曲は、前述の The Rose や From a Distance、Baby Mine を始めとする彼女の十八番以外に、シナトラやプレスリーのヒット曲など多数。特に彼らの Luck Be A Lady、 Viva Las Vegas、そして My Kind of Town の "Chicago" の部分を "Vegas" にした替え歌など、ラスベガスにゆかりのあるノスタルジックな歌で会場を盛り上げる演出は実にうまい。そして会場内が古き良きラスベガスにタイムスリップした状態で、今度は "Delores Delago" (彼女のトレードマークともいえる人魚の衣装でのパフォーマンス) など彼女自身の往年の時代を演じる。
 あとは In the Moode、When a Man Loves a Woman などの名曲を披露しながら、曲の合間に毒舌のギャグを連発。そして最後は Wind Beneath My Wings で静かに締めくくる。なお、その最後の部分だけは拍子抜けするほど演出がシンプルでアンコールもなく、やや物足りなさが残った。

 衣装は人魚も含めて5回ほど変更。彼女以外に登場するのは女性3人のコーラスと、約20人のダンサー 「シーザーズサラダガールズ」で、男性は1人も登場しない。(ただしエルビスのそっくりさんなど、映像で登場する男性は何人かいる)
 生バンドは常にステージ上の見える位置で演奏してくれ、構成はリードギター1、サイドギター1、ベース1(エレクトリックとアコースティックを使い分け)、金管楽器6、ドラムス1、パーカッション1、ピアノ1、キーボード1。バイオリンなどの弦楽器はない。

 チケットは劇場前にあるボックスオフィスまたは www.ticketmaster.com で買うことができる。
 料金は10%のライブエンターテーメント税を入れて $95、$140、$175、$250 の4種類。
 公演は月曜日と木曜日を除く毎晩 7:30pm。ただしこのショーは年間を通じて行われているわけではないので注意が必要だ。同じ会場をエルトンジョン (右の写真内の赤いビルボード) とシェールも使用するため長期の休演期間がある。現在確定しているベットミドラーの公演は以下の通り。ちなみに 3月の後半から4月の前半、さらに6月の前半はエルトンジョン、5月のほとんどはシェールが、それぞれこの会場を使うことになっている。


3月
1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031
6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930
7月
12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031
■■は公演日。

 最後に所持品検査に関する注意を。入場の際、空港の金属探知機と同じようなゲートを通過させられるが、これはまったく機能していないのか、車のキーなどをポケットに入れていても何も反応しない。が、うるさいのはカメラの持ち込みで、現場スタッフが、ハンドバッグなどの中身を手作業でチェックし、見つかればその場で預けさせられる。それ自体は特に問題ないが、ショーが終了したのち、ボックスオフィス(チケット売り場)でカメラを受け取ることになり、そこには行列ができてかなり待たされる。ショー終了後に時間的余裕がない者は、カメラはあらかじめ部屋などに置いておいたほうがよいだろう。ちなみにカメラ付き携帯電話の持ち込みはOK。もちろん携帯電話での撮影はOKという意味ではない。携帯電話はほぼ全員が持っているため預かり作業が困難なことと、無断撮影によるユーチューブなどでの配信には性能的に不十分と考えているようだ。


バックナンバーリストへもどる