週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2008年 02月 27日号
イリーの 「エスプレッサメンテ」 がラスベガスに進出
 本格派高級イタリアンコーヒーとして世界的に名高いイリー社の会長 Ernesto Illy 氏が今月3日、82才で他界したニュース (←クリックでニューヨークタイムズの写真付きニュース記事) は世界中を駆け巡ったが、偶然にも時をほぼ同じくして、そのイリー社の世界戦略店 「エスプレッサメンテ」 がこのたびラスベガスにもオープンした。

 たかがコーヒー屋の会長、と思うなかれ。欧米、特にヨーロッパでの知名度は非常に高く、コーヒー業界はもちろんのこと、経済界やグルメ族などの間では知らない人がいないほどの著名人だ。ちなみに彼のもともとの専門はコーヒーや会社経営ではなく化学系の学者とされている。
 赤いロゴ illy がトレードマークのイリー社は、1933年に北イタリアの港町トリエステで Ernesto 氏の父、Francesco Illy 氏によって創業。トリエステは、アフリカなどからのコーヒー豆の陸揚港として古くから知られるコーヒーゆかりの地で、同社はそんな町で科学的手法を導入しながら長年に渡ってコーヒーの入れ方などを研究してきた。今でこそ珍しくなくなってきているが、伝統や流儀や習慣が重んじられる食文化の世界において、科学を持ち込み既存のやり方をゼロから見直すという発想は、当時としてはかなり進歩的だったようだ。

 現在のコーヒー業界は、アメリカのスターバックス社が世界を席巻しつつあるが、イタリア流の飲み方として人気が高いエスプレッソの分野では必ずしもそうではない。本家ともいえる老舗のイリー社がじわりじわりとその勢力を伸ばしてきている。
 エスプレッソはコーヒー豆にかなりの高圧をかけて作るのが基本とされ、その圧力と温度と時間の関係は非常に微妙かつ複雑らしい。同社はその分野のノウハウを多数蓄積しており、そのため、スターバックスのような店舗としての存在よりも、豆の製造技術やエスプレッソマシンのメーカーとして名高く、実際に特許取得の製法や製品も少なくないようだ。

 そのような同社の体質からか、これまでは直接外食産業にかかわることよりも一般の流通に頼りがちで、結果的にイリーのエスプレッソは店舗ではなく、マシンと豆を購入して自宅で飲むか、あるいはそのマシンと豆を使っているレストランなどで楽しむのが一般的だった。
 そんな同社が長年のスタイルを破り店舗展開し始めたのがエスプレッサメンテで、ここでは、特許技術などを結集させて作った最新鋭機によって最高級のエスプレッソがサーブされる。まだ全世界でも百数十店舗しかなく、数の上ではスターバックスに遠く及ばないが、今後の成長性という意味では非常に注目されている世界ブランドのフランチャイズだ。
 なお、日本にも1年ほど前から進出しているが、残念ながらそのほとんどは東京の銀座周辺および羽田空港、成田空港などで、首都圏以外の者にとっては日常的に足を運べる立地条件にない。だからといって、イリーのマシンは簡単に買えるほど安くはなく (安いモデルでも4万円前後、高いものは8万円以上)、地理的にも経済的にもスターバックスほどは身近な存在ではない。

 このたびラスベガスに出現したエスプレッサメンテの場所は、先月17日にグランドオープンしたばかりの大型ホテル 「パラッツォ」 内。
 隣接する同系列のベネシアンホテルとの連絡通路を歩いていればすぐに見つけることができるので、「イリーの本格的な作りたてのエスプレッソを飲んでみたいが、首都圏の住民ではないしマシンも買えない」 というラスベガス旅行者はぜひ足を運んでみるとよいだろう。
 メニューとしてはスターバックス同様、サンドイッチ、ケーキ類、フルーツなどの軽食類から各種コーヒーまでさまざまなアイテムが用意されているが、やはりメインはエスプレッソで、その値段は $3.50。ミルクを少したらしたエスプレッソ Gocciato も、泡立てたミルクをたっぷり盛りつけたエスプレッソ Macchiato Caldo も同じ $3.50。(参考までに、サイズが大きいカプチーノは $4.95)
 ちなみにそれら料金は持ち帰り (紙コップ) の場合で、店内に座ってゆっくり楽しむ場合は、"Dine-In charge " という名目の $0.75が加算されカップは瀬戸物になる。紙コップではせっかくのイリーも味気ないものになってしまうので、急いでいない限り店内に座り瀬戸物のカップでゆっくりと味わいたい。
 なお、最近日本では 「バリスタ」 なる言葉が定着し、実際に熟練したバリスタが、エスプレッソやカプチーノの上に絵を描くようにミルクをたらしたりするなど、きめ細かい演出も珍しくないようだが、残念ながらこの店ではまだそこまでの繊細なサービスにはこだわっていないようだ (写真右上。特に模様などは描かれていない)。営業時間は朝6時から深夜1時まで。

 さて最後に、これはこっそり教えてもらった秘話というか裏情報。
 じつはこのフランチャイズ店のイタリア人オーナーである Stefano Ripamonti 氏はこの店以外にもベネシアンホテルおよびそのショッピングモール内に店を7軒も持っている。
 カジノフロアにあるチョコレート専門のスタンド型店舗 G.G.Santi Venezia (写真右)、ショッピングモール 「グランドキャナルショップス」 内にあるベネチアングラスの専門店 Ripa de Monti、そのとなりにあるベニスの民芸品店 Il Prato。以上の3軒はエスプレッソと無関係なのでいいとして、次の4軒ではイリーのマシンと豆を使ってエスプレッソを $2.75 〜 $2.95 で売っているので、細かい価格差を気にする者は知っておいて損はないかもしれない。
 カジノフロアにあるフードコート内のカフェ Santa Lucia、そのとなりにあるアイスクリームショップ Cocolini、グランドキャナルショップス内にある Cocoloni 2号店、そして同じくグランドキャナルショップス内のバー Very Venice だ。ただし、これら店で使用している豆やマシンはエスプレッサメンテとはがちがう、との噂もあるが、真実は教えてもらえなかった。


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