週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2007年 09月 26日号
人気パティシエ、受賞の直後に店は閉鎖、今が最後のチャンスか
 外来語好きな日本といえども、一昔前まではほとんど使われていなかったフランス語 「パティシエ」。今ではすっかり市民権を得たのか、「菓子職人」はもはや死語になりつつあるようで、求人の世界でも 「パティシエ募集」 が普通だ。職種としての人気も高いと聞く。それだけ日本は洋菓子ブームということか。
 そんなご時勢だからか、レストラン情報には遠く及ばないものの、ごくまれにラスベガスの洋菓子情報を求める読者の声が寄せられる。
 今週は、ラスベガスのカリスマパティシエ Frederic Robert 氏 (写真右上。クリックで拡大表示) の店 "Chocolat" を紹介してみたい。
(アメリカではフランス語をそのまま使った charisma patissier と表現されることはほとんどなく、それと同義の言葉は celebrity pastry が一般的)

 場所は、ラスベガス屈指の高級ホテル・ウィンラスベガスのショッピング街 The Wynn Esplanade 内。ルイヴィトンの3軒となり、シャネルの4軒となりというなんともゴージャスな立地環境だ。
 最近登場したわけではなく、かなり前から日本人観光客の間でもそこそこ知られる存在で、事実この店を訪れる日本人も少なくないという。

 ではなにがゆえに今週この店の話題なのか。じつは、ちょっとしたおもしろいハプニングが起こっている。
 料理界の最高の栄誉とも言われる賞 James Beard Foundation Award を Robert 氏が受賞したということで、地元最大の日刊紙 Las Vegas Review Journal が先週、この店のことや彼のケーキについて、2ページに渡って大々的に紹介したところ、なぜか店が閉鎖になるという噂が流れ始め、今この店がこれまで以上にホットな状態になっている。もちろんその記事内では閉鎖のことは報じられていない。

 今回取材に応じてくれた現場責任者 Gergana さんによると、新聞記事と閉鎖の噂はまったく無関係で、偶然タイミングが重なっただけ、とのこと。
 とにかく記事のおかげで急に忙しくなったのは事実のようで、取材時はケーキを買う人たちが列を成していた (左上の写真は、朝のすいている時間帯のもので、午後はもっと混んでいる)。店が活況を呈しているときに閉鎖とはなんとも皮肉な話だ。
 それでも噂は事実のようで、Gergana さんいわく、「確定ではないが」 との前置き付きで、遅くとも 10月末までには店を閉じることになりそう、とのこと。
 ということで、「カリスマパティシエ Robert 氏のケーキを食べてみたい」 と前々から思っていた者は、急いだほうがいい。それがこの記事の主旨だが、せっかくなので、そのケーキを全部食べてみた。

Le Chapeau Le Chapeau Le Chapeau Le Chapeau Le Chapeau  Robert 氏が今の季節にこの店で販売しているオリジナルケーキは全部で5つ。
 右の写真の上から Le Chapeau、Elegance、Desir、Plaisir、Le Reve。価格はどれも $6.50。

 味に関しては、あえてコメントを避けるが、各写真をクリックすると、そのケーキの内部も見ることができるようになっているので、興味がある者は写真を見ながら各自で味をイメージしていただきたい。おおむね 「写真から想像できる想定内の味」 と考えてよいが、アメリカの実情を知らない者にとっては想定外ということもありそうだ。

 なお、店の名前 "Chocolat" からも想像が付くとおり、ここで販売されているものは、ケーキ以外のクッキー類なども含めて、すべてチョコレートがテーマ。
 したがって、どれも似たような色、似たような味になってしまいがちなのが少々難点だが、今回いろいろ食べてみた中では、一粒単位で販売されているチョコレート (←クリックで写真) がそこそこまともな味だった。
 ちなみにそれは1個 $2 と決して安くはないが、買うならそれが一番おすすめかもしれない。$1 を追加すれば、贈答用のきれいなケースに入れてもらうこともできる。そのケースは 9個用、16個用、28個用の3種類。左下の写真は 9個用のケースに実際に入れてみたところ。

 さて、Robert 氏の今後についてだが、現在も Chocolat だけのために働いているわけではない。Executive Pastry Chef というタイトルでこのホテルのために働いており、彼が手がける洋菓子 (チョコレート系だけではない) はこの店以外でもバフェィやその他のレストランでも出されている。
 したがって彼は、「名ばかりのカリスマレストラン」のボス、つまり自分の名前だけ使って実際には弟子に任せ、本人は年に一度しか店に顔を出さないカリスマシェフたちとはちがい、ほとんど毎日 Chocolat やその他の現場に顔を出している勤勉なカリスマだ。

 今後に関する現時点での有力な説は、Chocolat は消えるが、ケーキは引き続き他の場所で販売するという案で、具体的には、アイスクリームやサンドイッチなどを販売している "Suger & Ice" (Chocolat から決して遠くない場所に存在) が候補にあがっている。すでにそこで売られているアップルパイやタルトなどはRobert 氏が監修しているので、上記5つのケーキ類もそこで売られることになるかもしれない。

 さて、気になるこの店が閉鎖されたあとのことだが、なんと携帯電話屋になるとの噂がある。ルイヴィトン、シャネル、さらにはカルティエ、ディオールといったそうそうたる顔ぶれに囲まれたゴージャスな環境に携帯電話屋とはなんとも場違いだが、聞くところによると、純金製や宝石をちりばめた電話を売るとか。なんともこのホテルらしい。

Note:
James Beard Foundation Award にはさまざまな部門がある。Robert 氏が今回受賞したのはパティシエを対象とした賞 "Outstanding Pastry Chef" ではなく、料理に関する書籍や研究などを称える賞 "Cooking from a Professional Point of View" で、"Alain Ducasse's Desserts and Pastries" という本の著者として受賞した。
彼は長年、世界的に有名なカリスマシェフ Alain Ducasse 氏と一緒に仕事をしていたことがあり、この本の題名にも彼が尊敬するその Ducasse 氏の名前が使われている。Ducasse 氏も実際にこの出版に関与している。詳しくは www.jamesbeard.org/awards/index.php まで。


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