週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2007年 09月 19日号
5周年を迎えた大衆芸能 "V"、成功の秘訣は劇場にあり
 アメリカ人の間では人気でも、日本人観光客の間ではそれほど話題になっていないナイトショー "V"。
 5年前のこのコーナーで紹介して以来、あまり気にかけてこなかったが、このたび 9月12日に 5周年を迎えたというので改めて観てきた。
 ちなみにこのV、2002年9月にデビューしたときの会場はベネシアンホテルだったが、現在はミラクルマイル (プラネットハリウッドホテルに隣接するショッピングモール) 内の V-Theater で行われている。

 短命に終わるショーが少なくない中、5年という数字は立派だ。決して完成度の高いショーではなかったので、ここまでのロングランは予想していなかったが、5周年公演を観て、その人気の理由がわかったような気がしてきた。(5周年公演も、通常とまったく同じ内容で演じられたとのこと)

 内容は名前の通り、ジャグリング、マジック、アクロバット、コミカルパフォーマンス、モノマネなどバラエティーに富んでおり、観る者を退屈させない。
 ちなみに名前の V は、Vegas の V ではなく、Variety の V で、副題は 「The Ultimate Variety Show」 となっている。
 さまざまな出し物を寄せ集めたレビュー型のショーは、これまでにもたくさん存在していたし、今でも珍しい存在ではない。古くはフラミンゴヒルトンで行われていた City Lights や Great Radio City Rockettes、スターダストの Enter The Night、昨年姿を消したリビエラの Splash、そして現存組ではバリーズの Jubilee、トロピカーナの Folies Bergere などがまさにその種のショーだ。

 V もジャンル的にはそれらのショーと同じだが、雰囲気やコンセプトはどこか異なっている。目に見えるハッキリした違いは劇場そのもので、Vの会場は正直言って狭くて安っぽい。
 しかし違いはそれだけではない。劇場の狭さと無縁ではない 「観客のノリ」 も大きく異なり、それこそがこのショーの特徴といってよいだろう。つまり、役者のトークに対する観客の反応は天下一品で、他のどのレビューにも見られないかなり高いレベルの 「役者と客の一体感」 というものを感じることができる。とにかく 「アメリカ人はなんでそんなに盛り上がることができるんだろう」 と思いたくなるほど反応が速くて素直だ。

 しかしその反応やノリは、アメリカ人の気質だけによるものではないだろう。なぜなら、この Vに登場している役者の一部は、かつて Enter The Night や Splash などに出演していた者だが、彼らは当時、今の Vほどの盛り上がりを見せていなかった。
 つまり、この Vの会場に何かが存在しているように思えてならない。それはたぶん劇場の造りの安っぽさから来る大衆芸能的な雰囲気で、それがこのショーの内容と実にうまくマッチしているものと思われる。浅草の演芸場ではゴージャスな宝塚公演よりも (スペース的に無理だが)、地元密着型の庶民的な芸人の方が似合っているのと同じ理屈といってもよいだろう。
 ちなみにここの舞台、日本の一般的な小学校の体育館のものよりも狭いと思われるサイズで、客席側の造りも非常に安っぽい。もともとはショッピング街のフードコートだった場所で、通常の劇場とは生い立ちが根本的に異なる。したがって、サイズも含めた構造上の問題は少なくないわけだが、その弱点をうまく利用し、役者と客の距離を縮めることに成功しているのが、このショーの特徴といってよいだろう。

 5周年という節目を迎えたわけだが、期待に反して、個々の出し物としては基本的には 5年前とほとんど変わっていない。今後も特に大きく入れ替える予定はないという。
 したがって、近代的な施設を使っていたベネシアン時代の公演しか観ていない者は、現在の大衆芸能的な雰囲気の中での公演も味わってみるべきだが、すでに現在の会場での公演を観ている者は特に改めて観る必要はないと思われる。

 ハイテク装置を駆使したゴージャスなシアターを使うシルクドソレイユのようなショーばかりがラスベガスのエンターテーメントではない。このVを観ると、まだラスベガスに昔ながらの大衆芸能がしっかり根を下ろしていることがうかがえる。シルクドソレイユなどに飽きてきたリピーターなどには、趣が変わっておもしろいかもしれない。ぜひ観ていただきたい。

 公演は毎日 7:30pm と 9:00pm の2回。休演曜日はない。会場の場所はミラクルマイル内を歩いていると見えてくるのですぐにわかる。
 チケットは劇場の目の前にあるボックスオフィスで買うことができ、料金は General 席と呼ばれる劣悪な席 (左右の端の席で、柱などがじゃまをしてステージがよく見えない) が $65、VIP席と呼ばれる中央付近の席が $76、その他にレストランの食事券などとセットになったパッケージ料金もいくつかある。
 よほど予算がきびしい者以外は VIP席にすべきだろう。なお、このショーのチケットは、市内に点在する半額チケットショップでも売られている。


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