週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2007年 06月 13日号
和製ミュージカル "MATSURI"、進化して一年ぶりに再登場
 「筋肉で音を奏でる」 をコンセプトに、日本で話題を集めている和製ミュージカル 「筋肉 (マッスル) ミュージカル」 のラスベガス公演が、5月 29日からサハラホテルで始まった。ラスベガスでのタイトルは "MATSURI"。
 実はこの MATSURI、昨年もラスベガスにやって来ており、今回が2回目だ。
 「昨年と同じだろう」 と、大した期待もせずに観に行ったところ、予想に反してその内容は驚くほど洗練されており、わずか一年でかなり進化していた。以下、昨年のバージョンとの違いを中心に、最新の MATSURI をレポートしてみたい。

 昨年は 2ヶ月間の短い公演だったが、今年は 「とりあえず 1年」 (サハラホテルの広報部門) ということで、腰をすえた本格的なラスベガス挑戦になる模様。当然スタッフやパフォーマーの意気込みもちがってくるわけで、それが洗練度の差となって現れているのかもしれない。
 しかし、最大の違いはなんと言っても会場だろう。昨年はリビエラホテルで今年はサハラホテル。ホテルとしては地理的にも格的にも大差ないように思えるが、劇場は大きく異なる。リビエラの劇場は何十年も前に造られたもので、かなり老朽化しているばかりかステージが狭く天井も低いが、一方、2000年に完成したサハラの劇場は一回り大きいだけでなく、音響設備も照明も格段に進歩している。
 激しい動きや、和太鼓風のダイナミックなサウンドをウリにしている MATSURI にとって、ステージの広さや音響設備は重要な要素のはずで、その違いがこのたびの進化と無縁でないことは想像に難くない。また、観る側にとっても、サハラの会場はフロアの傾斜が十分すぎるほどあるため、それがほとんどないリビエラの劇場に比べると、はるかに観やすいし、心地よい。

 さて内容についてだが、各演出がまったく新しく変わっているか、変わっていなくても洗練度がアップしており、昨年のバージョンとまったく同じ演出は半分以下といった感じだ。
 出し物を具体的に列挙するならば、跳び箱、フラフープ、縄跳び、自転車、皿回し、傘回し、柔道、相撲、ピアノの鍵盤、鳩時計、ラート、ヨーヨーなどで、昨年の公演を観ている者にとっては、「ほとんど同じじゃないか」 となってしまうが、そうではない。
 「どこがどのようにちがっているのか?」 と問われると、その答えを言葉で表現するのはむずかしいが、ひとことで言ってしまえば、照明技術などを中心に 「見せ方がうまくなっている」 ということだろう。その証拠に、昨年の取材時には見られなかったスタンディングオベーションが、今年はごく自然の雰囲気の中で見られ、エンディングの際、かなりの観客が立ち上がって拍手をおくっていた。また、笑いを誘う場面も増えており、そういった部分もアメリカ人の観客をひきつけるのに一役買っているように思える。

 「筋肉ミュージカル」 といってもストーリーがあるわけではなく、基本的にはアクロバットショーだ。日本側では 「ミュージカル」 という言葉がかなり前面に押し出されているようだが、こちらではパンフレットの一部にごく小さくその文字が見られる程度で、このショーをミュージカルだと思って会場に足を運んでいる者はほとんどいないはずだし、それでいいと思われる。ラスベガスでは、ストーリー性のあるミュージカルよりも単純明快なショーの方がヒットする傾向にあるからだ。
 そしてこのショーには、単純明快なアクロバットの中にも、アメリカ人にとっては異国情緒あふれる日本的なテイストが随所に織り込まれており、奇抜性や意外性にもこと欠かない。激しいアクロバットを演じた若い女性たちが、その直後に日本的な衣装に身を包み、上品でかわいらしい踊りを演じる場面などはその典型で、この MATSURI はひょっとするとヒットするかもしれない。

 せっかく日本からラスベガスに乗り込んで来たからには、同じ日本人として、1年とはいわず2年でも3年でも頑張ってもらいたい。
 そういう願いをこめてあえて注文をつけさせてもらうならば (今回の取材では、彼らに直接会ってインタビューしていないので、この紙面を通じてメッセージを送りたい)、この集団の名物ともいえる "Body Slap" をきちんとした形でやって欲しかったし、やった方が一般のアメリカ人客にはウケたように思える。
 Body Slap とは、自分の手足を和太鼓などの楽器に見立ててピシャピシャと打ち鳴らす動作で、これは 「筋肉で音を奏でる」 というキャッチコピーのまさに元となるパフォーマンスといっていい。25人ほどの役者が一斉に自分の太ももをたたき、痛々しく真っ赤に腫れ上がってもさらに自虐的に叩き続ける姿は、やっている方にとってはつらくても、観る側にとっては奇抜さの中にもコミカルな部分も感じられ、少なくとも昨年の公演ではアメリカ人にはかなり新鮮かつ印象的に映っていたようだ。
 結果的に Body Slap は、このショーが口コミで広がる際の重要な要素となっており、これを演じないのはマーケティング的にも非常にもったいないように思える。ちなみに昨年の公演では、これをオープニングでもエンディングでもかなり本格的に演じていたが、今回の公演ではエンディングの場面でごく短い時間さらりと見せてくれるだけで、ほとんどないに等しい。一緒に観に行ったアメリカ人はこれを観たくて行ったようなもので、少々がっかりしていたが、他にも口コミで会場に足を運んだ者は同じようにがっかりしていたに違いない。 (その一方で、「Body Slap は好きじゃない」 という日本人の声も少なからず耳にしているので、こればかりは好みの問題ということか)

 あと、これは細かいことになるが、会場やステージの照明を消し、真っ暗な中で蛍光色の衣装を着たパフォーマーがラートを演じる場面での光のコントロールには改善の余地があるように思えた。本来見えるべきではないラートの存在がハッキリ見えてしまい、せっかくの幻想的な場面での幻想度が半減してしまっていたからだ。会場に光が漏れていた原因が、客席の後ろにある音響コントロールブースのディスプレイモニターだったように見受けられたが、であるならばその演出のときだけでもモニターの電源を切るようにするか、もしくはラート自体の表面を、光を反射しにくい黒い塗料で塗るなり、何か一工夫すればもっと幻想的な演出になるように思えた。
 音楽も工夫が必要かもしれない。エンディングに近い場面で 「斎太郎節」 のメロディーを取り入れた演出があったが、日本人が聞いてもメロディーの中に斎太郎節が隠されていることに気づかないほど大胆に洋風にアレンジされていたため、少なくともそのサウンドから一般のアメリカ人が日本を感じることは不可能に近い。障子をイメージした舞台セットに、はっぴ姿の役者。せっかく日本を演じているのだから、サウンドにおいてももっとそのまま日本を出してよいような気がした。つまり少々大げさに言えば、北島三郎が歌うような純和風の斎太郎節でよかったのではないか。

 成功してもらいたいので、最後にもうひとつだけ注文をつけさせてもらうと、少しでも多くの集客を考えるならば、ホテル側の広報部が配信している写真のクオリティーをもう少しレベルアップさせたほうがいい。
 このページの写真を見て、感動するほど美しいと感じる写真はないのではないか。右の写真はかなりきれいに撮れているほうだが、この場面に限らず実際のステージではもっとコントラストがハッキリしたカラフルな原色が多く、感動するほど美しい場面がいくつもあるだけに非常に残念だ。
 ここではウェブでの利用なのでまだ問題は少ないが、雑誌など紙媒体での利用を考えると、現状の広報用の写真では少々心もとない。(動きの速い被写体を暗い劇場内で撮影するのはたしかにむずかしいが、ホテル側が配信している写真は、4年前に発売されたカメラで撮影されたもの。当時のカメラは暗い場所でのノイズに弱いが、今ではもっと性能が高い機種が出ているはず)

 なにやら一般読者には無関係なようなことばかり長々書いてしまったが、地理的に日本での公演を観る機会がない人、日本公演とラスベガス公演を比較したい人、日本人の海外での活躍を見たい人・応援したい人などなど、観て後悔するようなショーではないので、予算と時間が許す限り、ぜひ足を運んでみていただきたい。
 場所はサハラホテル内の 「サハラシアター」。日本人観光客の大多数が滞在するストリップ地区の中心街からはやや離れているが、モノレールを使えば簡単に行くことができる。(モノレールの利用方法に関しては、このラスベガス大全の市内交通セクションに掲載)
 公演は日曜日を除く毎日 7:00pm 開演。公演の正味時間は約 80分。チケットはカジノフロアにあるボックスオフィス (ストリップ大通り側にある玄関を入ってすぐの場所) で買うことができ、料金は VIP席が $92.95、一般席が $81.95、5才から 12才までの子供はどちらの席も $48.95。子供の年齢に特に制限はなく、5才未満は無料。
 まだ始まったばかりで知名度が低いためか空席が目立つので、当日券でも大丈夫と思われるが、どうしても売り切れが心配、という者は、サハラホテルの公式ウェブサイト www.saharavegas.com から事前に手配することが可能。また、ウェブサイト経由での英語での手配は苦手、という場合は、以下のようなサービスもあるので、そういったサービスを利用するのもいいだろう。

 


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