週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2007年 05月 09日号
英語力不要の "STOMP"、プラネットハリウッドで公演開始
 プラネットハリウッドホテルでユニークなショー "STOMP OUT LOUD" が始まった。会場は、2800万ドルの巨費を投じて新設された専用劇場で、場所はカジノフロアの2階。

 この STOMP はセリフもなければストーリーもない、というかなり珍しいミュージカルだが、「ミュージカル」 と呼ぶことすら正確ではないかもしれない。
 なぜなら、ステージ上で繰り出されるのはリズムだけで、メロディーは一切存在しないからだ。
 STOMP は 1991年、イギリスのブライトンで発祥したストリートパフォーマンスで、ごみバケツやデッキブラシなど、身の回りにあるものを打楽器に見立て打ち鳴らすという非常にシンプルな内容だ。
 しかしその斬新なアイデアで瞬く間に人気を博し、まもなくロンドンで初演。1994年にはオフ・ブロードウェイにも進出し、現在もロングランを続けている。
 また、2005年の東京公演を含め、これまでに世界約30カ国、1万回以上の公演を行っており、観客動員数は実に1000万人を超えているというから驚く。
 そのパフォーマンスは世界各地で高い評価を受けており、イギリスでは 「ローレンス・オリビエ賞」、ニューヨークでは 「アウター・クリティックス・サークル賞」 など、名誉ある賞をいくつも受賞している。
 なお、一説に創設者のルーク・クレスウェルは、イギリスで見た「鼓動」の和太鼓演奏からインスピレーションを得て、STOMP のアイデアを思いついたとも言われている。

 さて今回、プラネットハリウッドで始まったパフォーマンスには、オリジナルのタイトル 「STOMP」 に「OUT LOUD」 を付けた新しいタイトルが採用されているが、これは 「従来の STOMP より大きくパワーアップしている」 というのがその理由らしい。
 パワーアップのひとつは、パフォーマーの人数が増えたことで、ラスベガス公演では 16人がステージに立つ。これはこれまでのどの都市の公演よりも多いとのこと。また、ドラム缶を打ち鳴らすシーンで、天井から雨が降ってくる、という演出があるが、これも今回、初めて採用された演出らしい。
 パフォーマンスそのものは至ってシンプルだ。ドラム缶、ごみバケツ、モップ、ごみ袋、排水用パイプ、ダンボール箱など、日常生活のどこにでもある身近な物をたたいたり、ふったり、床に打ち付けたりして音を出す、という、いってみればそれだけのパフォーマンスではあるが、そうした単純な行為によって独自の音楽世界を創り出し、それをきちんと芸術の域まで押し上げているところが STOMP のすごさなのかもしれない。
 音だけではなく、ダンスもなかなかの迫力で、パフォーマーたちは体全体を使ってリズムを表現し、独特の動きをもってそれを伝える。彼らが着ているのは、薄汚れたランニングシャツや Tシャツ、それにひざに穴の開いたワークパンツと、決してファッショナブルな装いではないが、そうしたミニマルな衣装もストリートでパフォーマンスを見ているかのような臨場感をうまく演出している。

 笑いもちゃんと盛り込まれているところがうれしい。パフォーマーの一人がピエロ役で、パントマイムのような動きで笑わせてくれる。日用雑貨をたたいて音を出すパフォーマンスとなると、「最初はおもしろいかもしれないけれど、すぐ飽きてしまうのでは」 という心配もあるが、この笑いがいいアクセントになっていて、最後まで飽きさせない。
 登場する楽器(?) もバラエティーに富んでおり、ドラム缶やごみバケツだけではなく、新聞紙やビニール袋まで登場する。新聞紙を破るときに出る 「ビリビリ」 という音も、ちゃんとリズムを刻み音楽になっているから驚く。舞台が暗転するたびに、「次は何を楽器にするのだろう」 と期待を持たせてくれ、そしてそれを裏切らないところがすばらしい。
 STOMP が一時的なブームにとどまらず、現在も世界中の観客を魅了し続けているのは、アイデアの面白さ、ユニークさに頼らず、常に新しい音を創り出すという努力を怠らず、進化し続けているからだろう。
 セリフも歌もないため、ステージを楽しむ上で英語力は一切必要ない、という部分も日本人にはありがたい。英語が理解できなくても楽しめるショーというとこれまで、アクロバット系やマジックなどが定番だったが、STOMPも英語のハンディを感じることなく、アメリカ人と同じ土俵で楽しめる数少ないショーに加えることができそうだ。

 事前にストーリーを知っておかないと理解しづらい一般のミュージカルと異なり、このパフォーマンスを楽しむのに予備知識は一切必要ない。内容の単純さを考えると料金の高さがやや気になるが、しばし頭をカラにし、ステージで繰り出されるリズムに身をゆだね、パフォーマーたちと一緒に音の持つエネルギーを堪能してみてはいかがだろう。
 公演は月曜日が 6:00pm と 9:00pm、土曜日が 7:00pm と 10:00pm の 2回、火、木、金、日は 7:00pm の 1回。水曜日は休演。チケット料金は $50〜$110、劇場前のボックスオフィスで買うことができる。


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