週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2007年 05月 02日号
噂の3つ星フレンチ、ギー・サヴォアで豪華ディナー
 ラスベガスの最高級フレンチといえばこれまで MGMグランド内のジョエル・ロブション・アット・ザ・マンションの1人勝ちだったが、シーザーズパレス内に昨年 6月、ロブションを超えるといわれる超高級フランス料理店がオープン。そろそろオペレーションも評判も落ち着いてきたようなので、「味でもインテリアでもサービスでもロブションを超えた」 とも噂される話題の店を取材した。
(このページに掲載されている料理などの写真は、レストラン側からメディア向けに提供されたもので、実際の取材時に食べたものと必ずしも同一のものではありません)

 店の名は Guy Savoy。英語読みすると 「ガイ・サボイ」 となるが、フランス人なので 「ギー・サヴォワ」 と発音する。
 このギー・サヴォアなる人物だが、フランス料理界の第一人者として知られる名シェフで、パリにある本店はレストランとしては最高の勲章である 「ミシュラン3つ星」 に輝いている。
 現在、この 3つ星シェフでラスベガスに店を構えるのは他に、マンダレイベイの新館 THE HOTEL 最上階にある 「MIX」 のアラン・デュカスがいるが、MIX はデュカスのパリ本店とはメニューもコンセプトも大きく異なっている。
 しかし、今回ラスベガスに登場したギー・サヴォアについては、コンセプトやメニューはもちろん、インテリアにいたるまで、パリ本店をそのまま再現することにこだわったという。
 ちなみに、同店オープンまでに、シーザーズパレス側が費やした時間はなんと 5年。サヴォア氏の承諾を取り付けるのに 4年、オープンが決まってから内装デザイン、工事などに 1年を要したとのこと。

 電話予約時に 「7時頃に」 とリクエストすると、「6時45分ではいかがでしょう」 と聞かれた。ずいぶん中途半端な時間を指定するものだな、15分後にはテーブルがすべて埋まっているというわけでもないだろうに、と不思議に思ったが、その意味は店に足を踏み入れるとすぐに理解できた。
 大きなドアを開け受付に近づくと、「○×様でございますね」 と名前を呼んで出迎えてくれたのだ。15分おきに客を入れることで、次に来る客の名前を頭に入れ、まるで常連客のごとく 1グループごとに丁重に出迎える。カウンターの前で待たせるのはおろか、「ご予約のお名前は?」 などと聞いては 3つ星の名が廃る、ということだろう。なお、この 15分間隔には、後述するシャンペンの部分にも理由がある。

 店は天井が高く、ライバル店、ロブションと比べると広々した印象だ。メインダイニングは 75席あり、奥に 15人まで収容できる個室がある。また、ストリップに面した位置には 35席のプライベートパーティー用のダイニングも。
 エントランスのちょうど裏側にはバーもあり (左下の写真)、予約なしでふらりと立ち寄り、カクテルやワインを楽しむこともできる。暖炉が赤々と燃えるバーも洒落た大人の雰囲気で、食事の前に静かに 1杯というのには最適だ。
 パリの本店をそのまま再現するため、インテリアもその本店を手がけたデザイナー、ジャン・ミッシェル・ウィルモットが担当した。
 テーマカラーはグレーと茶。デコラティブで豪華絢爛なロブションとは打って変わって、シンプルでモダンな内装だ。壁に飾られた絵もシンプルなモダンアートで、飾り付けも最小限、正直いって拍子抜けするほどさっぱりしている。
 このインテリアに対する評価は分かれそうだ。「このほうが落ち着ける」 という人もいれば、「もう少し豪華に、高級店らしくしてほしい」 という人もいることだろう。

 テーブルにつくとまず、ウエイターがやってきて挨拶をし、「時間の制約はありますか?」 と聞かれる。ラスベガスの場合、食後にナイトショー鑑賞などの予定を入れている人も多いので、これはそのための配慮だろう。予定がある場合は、その予定に間に合うよう計算して料理を出す、というわけだ。我々は特に予定がなかったのでその旨を伝えると、彼は 「それではごゆっくりお食事を楽しんでください」 とフランス語なまりの英語で答えた。

 最初に 14種類のシャンペンを乗せたカートが登場する。それ専用のスタッフが 1本1本、産地、味の特徴などを、丁寧に説明してくれるが、よほどの知識がないとすべて理解するのはむずかしい。
 好みの 1本を選んでグラスについでもらい、「アスパラガスのスープ・鴨肉のコンフィ添え」 のアミューズブッシュ (つきだし) とともに楽しんでいるところで、ようやく別のスタッフがメニューを運んでくる。
 ここまでのシャンペンの儀式に約 15分を要し、同じ時刻に複数の予約を入れない理由がここにもあることがわかる。(右上の写真はワインやシャンペンの貯蔵庫)

 メニューは、好きな料理を個別にオーダーするアラカルトと、セットになったコースメニューのどちらかを選ぶことになり、コースメニューは 10品から成る Menu Prestige ($290) と 4品で構成された TGV Menu ($190) の 2種類ある。TGV とはフランスの高速鉄道、つまりフランス版新幹線のことで、こちらはその名の通り 90分で完了するエクスプレスコースだ。
 アラカルトはアントレ、レ・ポワソン (魚料理)、レ・ビアンド (肉料理) の 3種類に分かれており、アントレと魚、アントレと肉の組み合わせでもよいが、できれば 3種とも食べてみたいところ。
 ちなみにアメリカのレストランではメインディッシュのことを 「アントレ」 と呼んだりするが、この店では本来の意味である前菜を指している。アラカルト料理の値段は、アントレが $40〜$90、魚料理が $60〜$95、肉料理が $60〜$140ドルと、ラスベガスでも最高ランクの価格設定となっている。
 我々がオーダーしたのは、シェフの力量がすみずみまで堪能できる 10品コース。メニューの中身は季節ごとに変わるということだが、取材時に食した 10品は以下の通り。

■ Color of Caviar
オステラキャビアとビネグレット(ドレッシング)、グリーンピースのピュレを3層にした1品。ピュレがまったりと濃厚な口あたりで、キャビアと絶妙にマッチ。

■ Peas All Around and Poached Egg
グリーンピースのピュレとスフレに、うずら卵を添えた料理。旬の素材、新鮮なグリーンピースならではの甘みが堪能できるさわやかな料理。

■ Blue Fin Tuna, Asparagus and Black Truffle
さっと表面を焼いたツナに、グリーンとホワイトの2種のアスパラガスを添えた料理。ブラックトリュフをたっぷり使ったソースが贅沢。

■ Maine Lobster, Herb Crusted Claws and Heirloom Baby Carrots
ぷりぷりとした新鮮なメインロブスターをボイル、ハーブを混ぜたパン粉をのせたローストと、2種類の味で楽しむ。にんじんの自然な甘みを生かしたソースが美味。

■ Steamed Black Cod, Beets and Rocket Salad and Soup
蒸した銀だらにカリカリに揚げた薄切りビーツとロケットのサラダを添えた料理。2層になった皿を使った遊び心たっぷりの料理で、上を食べ終えた後におもむろに登場する下の料理はアスパラガスのスープ添え。同じ素材でも味がまったく異なり、シェフの底力に感動。

■ Artichoke and Black Truffle Soup, Toasted Mushroom Brioche, and Black Truffle Butter
アーティチョークのスープの上に、ブラックトリュフのスライスがたっぷりのせられた贅沢な1品。ブラックトリュフを混ぜ込んだバターを添えた、マッシュルーム入りのブリオッシュが添えられている。

■ Sonoma Duck Breast Poached and Seared, Spring Vegetable “Potee”
軽くゆでてからソテーした鴨肉の春野菜添え。驚くほどシンプルな料理だが、素材のよさが際立って美味。フォアグラのソテーとともに食べる。

■ Selection de Fromages Affines
17種類のチーズがカートにのせられて、うやうやしく登場する (写真右)。原料と産地、味の特徴に関する丁寧な説明を聞いた後、好みの3、4品を切り分けてもらう。

■ Raspberries and Litchi “Vacherin”
デザート第1弾は、ラズベリーとライチーのヴァシュラン。薄いメレンゲでサンドしたラズベリーに、ライチーのソルベが添えられている。さっぱりと軽く、甘さも上品。この前に口直しとして登場するココナッツのアイスクリームも絶品。

■ Chocolate Fondant, Crunchy Praline and Chicory Cream
チョコレートのフォンダンにプラリネとチコリでできたクリームを添えた、クリエイティブな1品。甘く濃厚なフォンダンを苦味のきいたクリームが引き立てる大人っぽいデザート。

 この 10品が終了したあとも、スィーツなどを乗せたワゴンが何回かやって来て、そのつど担当者と会話を楽しみながら食後のひとときを過ごすことになる。もちろんその間、コーヒーや食後酒に関するオーダーなども丁寧に取りに来るので、すべての時間の流れが非常にゆっくりしている。結局、店に入ってから出るまで約 4時間近く要したので、時間的なゆとりがない者はこのコースメニューを楽しむことはできない。

 さて、10品のコースと聞くと、「量が多過ぎて食べきれないのでは?」 と思われそうだが、1品 1品の量が少ないので、よほどの小食でもない限り完食できるはずだ。むしろどの料理も 「もう1口食べたい」 と思わせる絶妙な量。味も変化に富んでいて、最後まで飽きさせないどころか、「次は何が出てくるのだろう」 とワクワクさせてくれるところは、さすが 3つ星シェフといったところ。

 全体的な料理の印象は、さっぱりとして上品。フランス料理というと濃厚なソースを添えたこってりしたものを想像してしまいがちだが、21世紀のフレンチはあくまで軽い、といったところか。素材のよさを最大限に引き出すべく、味付けも控えめ。激辛料理などのパンチのきいた味に慣れている人、濃い味付けが好きな人なら、物足りなく感じてしまうかもしれない。

 ロブションで供されるような、エスニック素材を使った料理は一切登場しない。料理の手法も素材も、フランス独自のものばかりという、いわば頑固なフレンチだ。両者ともフランス料理の大家ということで、なにかにつけてロブションと比較されるギー・サヴォアだが、「どちらがうまいか?」 と聞かれたら、「まったく違うから比較できない」 と答えるしかないだろう。
 各料理にパンをペアリングさせる、というユニークなサービスも楽しい。料理ごとに、それぞれの料理に合わせたワインを 1杯ずつ提供するワインのペアリングならよくあるが、パンのペアリングは珍しい。海草を混ぜ込んだバゲットなどのユニークなパンも登場し、シェフの創造性に驚かされる。ただ、パンの味自体は平凡なものも多く、ロブションの方がはるかに上をいっているように思えた。

 サービスも 3つ星の名に恥じぬ内容だった。今回は 3人で行ったが、案内されたテーブルにはすでに 3人分の食器が並べてあった。つまり、4人分用意してあるところからあわてて 1人分を片づけるというような、どこの店でも見かけるあのあわただしい作業は客の前では見せないというわけだ。
 バッグを床に置こうとすると、すかさずバッグ置きの台が登場する。「肌寒い」 と言えば、服装に合った色をお選びくださいとばかりに、ウエイターが色とりどりのショールを詰めた箱を持ってやってくる、といった具合だ。

 また、この店では 「エクスキューズミー」 とウエイターに声をかける必要は一切ない。なにかほしければ、目線を上げるだけでいい。店のすみずみまで目を光らせたウエイターが、すっと寄ってきてくれるからだ。席を立てば、「トイレはこちらです」 と、まるで霊能力者のようにこちらの気持ちを読み、先に立って案内してくれる。しかも、トイレの前には専用スタッフが張り付いていて、ドアを開けてくれるばかりか、ひとりの客が使用するごとに、そのスタッフが洗面台まできれいに清掃してくれる。
 霊能力者がいればマジシャンもいるのか、客が気づかないうちに、バターが入った器が常に新しいものに置き替わっているのには驚く。合計 4〜5回、そのバターを取り替えてくれたようだが、とうとうだれひとりその取り替える場面に気付かなかった。会話がはずんでいるタイミングをうまく見計らって取り替えているようだ。

 アメリカの由緒ある料理賞に 「ジェームス・ベアード賞」 がある。シェフ、レストラン、料理評論家、ジャーナリストなどを表彰するもので、国内ではミシュラン 3つ星に相当する栄誉ある賞として知られているが、ギー・サヴォアは 2007年度の同賞に 「新レストラン」 部門でノミネートされた。昨年はロブションがノミネートされ、惜しくも受賞を逃している。同賞の発表は今週 5月 7日だが、ライバル店が果たしえなかった快挙を成し遂げられるかどうか、注目したいところだ。

 場所はシーザーズパレスの最も新しい建物 「Augustus Tower」 の 2階。営業時間は 5:00pm 〜 10:30pm、月曜日と火曜日は休み。要予約で電話番号は 877-346-4642。
 各料理の料金は前述の通りだが、それ以外にシャンペン代がグラス1杯 $25〜$30、それにミネラルウォーター (ボトルで銘柄を指定)、ワイン、さらには税金、チップ (この種の店では最低 20%が一般的で 30%ぐらい置く人もいるとか) などが加わるので、特別高いワインをオーダーしなくても 1人 $500 程度は考えておいた方がよいだろう。


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