週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2007年 04月 04日号
ワラパイ族の Gキャニオンウエストに "SKYWALK" がオープン
 3月 28日、アメリカ原住インディアン 「ワラパイ族」の居住区内にある通称 「グランドキャニオンウェスト」 と呼ばれる場所に 「スカイウォーク」 が完成し、一般向けの営業が始まった。
 スカイウォーク (Skywalk) とは、絶壁のふちから谷底側にせり出すような形で設置された U字型のガラス製の空中歩道のことで (写真右、クリックで拡大表示)、グランドキャニオンウェストはラスベガスから陸路で 3時間弱、空路で 30分ほどの場所に位置する 「グランドキャニオンっぽい景色」 を楽しめる渓谷。
 スカイウォークそのものについては、写真から想像できる範囲の想定内のものと考えてよく、細かい説明は特に必要ないと思われるが、それ以外の運営の部分などで想定外のことが起っており、このレポートでは、現在現場で直面しているさまざまな問題点などを中心に報告してみたい。(現場への行き方に関しては、このページの最後にあるリンクをクリック)

 今回の一連の取材で現地を訪れたのは3回。1回目は一般公開前の旅行業界やメディア関係者向けのオープニングセレモニーで 3月 20日、2回目は一般公開後に陸路で現地入りした 3月 31日、そして 3回目が空路で入った 4月 2日。
 開業セレモニーでは、1969年アポロ11号でアームストロング船長と共に人類初の月面着陸を果たしたオルドリン宇宙飛行士 (写真左上) による第一歩 "First Walk" などの儀式が行なわれ、曇天と風というあいにくの天候だったにもかかわらず、式典は滞りなく順調に終了した。

 その模様を AP通信などが世界中のメディアに配信し、それを各メディアが一斉に報じたため、幸か不幸か予想以上の反響があり、現場のワラパイ族にとってはうれしい悲鳴ではあるが想定外の事態となってしまった。
 また、訪問者にとっても不便をしいられることになるなど (右の写真は昼食を受け取るためにできた長蛇の列)、現場のオペレーションはかなり混乱をきたしている。
 結果的には、受け入れる側にとってはもう少し準備期間が必要で、また訪問する側にとっても現場の特殊な事情をもっと正しく理解しておくべきだったということになるが、その問題点の原因などをさぐってみた。以下が今回の一連のトラブルの原因と思われる項目だ。

  • 現地は、通常のアメリカ合衆国の州や市などの法律がおよばないインディアン居住区という特種な場所にある。
  • アメリカ合衆国政府が管理するグランドキャニオン国立公園サウスリムとはまったく別の場所。
  • インディアン居住区内では、旅行会社などの経営判断や企業努力だけではどうすることもできないさまざまな障壁や制約がある。
  • 人口 2500人前後といわれるワラパイ族の居住区内では、人材はもちろんのこと、道路、輸送機関、電力、水道などのインフラや、食料などの物資の供給に限界がある。
  • スカイウォークの物理的な状態と運営方法に対する不満。
 まずはインディアン居住区について。(居住区の代りに居留地、保護区、という言葉が使われることもある)
 ここでいうインディアンとは、白人がヨーロッパからアメリカ大陸へ渡って来るよりも以前からこの地域に住んでいた原住民族のことで、彼らはアメリカ建国の歴史の中で白人から土地、住居、物資、権利、時には生命までを奪い取られてきたという悲しい過去を持っている。(右の写真は、観光客に伝統舞踊を披露するワラパイ族の子供たち)
 そのようなインディアンに対して現在の米国政府は、一般のアメリカ市民に対する法律を超越した特別扱いとして、古来から続く彼ら独自の生活習慣やルールを認めており、その治外法権的なことが許される区域を明確に指定したのがこのインディアン居住区だ。
 そして今回のグランドキャニオンウエストと呼ばれる景勝地も、スカイウォークも、その区域内にある。その面積は約 4,100平方キロメートルで、東京都のほぼ2倍と広大だ。

 ちなみに、米国政府が認定している原住インディアンの部族数は 500 以上あり、彼らの大多数は、米国内に 300ヶ所以上点在するインディアン居住区内で生活している。
 「州と同格の自治権が与えられている」、というのがインディアン居住区に対する現在の米国内での一般的な法解釈だが、「州ではなく国だ」 といわんばかりの部族も少なくない。西部劇の撮影場所として名高い景勝地モニュメントバレー周辺に広大な居住区を構える最大勢力のナバホ族を始め、人口的にも面積的にも広大な勢力を持つ部族は国家を形成しており、自らの領土を NATION (国家)と呼んでいる。右上の写真はグランドキャニオンウエスト地区を統治するワラパイ族の 「国境線」 的な場所にある標識で (この標識は実際には境界線からかなり領土内に入った場所にある)、ここにもやはり NATION と書かれている。

 もちろん NATION には通常の国家という意味以外にも、ただ単に文化を共有する集団の領土的な意味もあるため、どの部族も NATION を用いる傾向にあるが、とにかくアメリカ合衆国とは一線を画した特別な区域であることだけはたしかで、それはしっかり認識しておく必要があるだろう。
 したがって、たとえばそのような区域内でスピード違反などを犯すと、アメリカ合衆国の各州や市の警察ではなく、その国家の警察 (左上の写真をクリックすると、車体に描かれている文字を見ることが可能) によって反則切符が切られる。もちろん小さい部族の場合、アメリカ側の警察に治安管理を全面委託しているので、その限りではないが、通常は規模の差こそあれ、独自の治安部隊を持っているのが普通だ。
(実際に当社スタッフがナバホ族の国家内で数年前に受け取ってしまった 交通違反切符の現物の写真 ← クリックで表示)
 ではワラパイ族 ( Hualapai と書くが、現地での発音はハラパイではなくワラパイ) は国家としてのそれなりの統治機構を有しているのか。そのへんの事情を現場のオペレーションマネージャー Robert Bravo Jr.氏およびセキュリティー担当の匿名希望のスタッフに聞いたところ、人口的な規模が小さいため、小さな事故やトラブルは自前の治安部隊で対応しているが、それ以外はアリゾナ州のモハビ郡の警察と提携し治安を維持しているとのこと。また、殺人事件のような大きな事件に対しては、アメリカ合衆国の連邦警察 FBI が関与することになっているという。
 話が長くなってしまったが、このようにスカイウォークは、通常のアメリカ合衆国とはまったく異なる区域内にあるということを訪問者は知っておくべきだが (特に、ツアーではなくレンタカーなどで区域内に進入し事故などを起こした場合、通常の都市とは処理手順などが異なってくる)、今回の開業にともなうテレビや新聞の一連のニュースでは、ここがインディアン居住区であることがほとんど報じられていなかったのは非常に残念だ。

 さて、アメリカ合衆国政府が管理する国立公園のグランドキャニオン (サウスリム) との違いについてだが、このこともきちんと報じられていなかった。そのため現場ではさまざまなトラブルが発生している。
 まず一番多いのが、グランドキャニオン国立公園サウスリムを訪れる観光客の多くが、そこにスカイウォークが存在しているものと思い込んでしまっているということ。
 ツアーガイドなどに、「スカイウォークを見ることはできないんですか?」 と質問するぐらいはまだいい方で、「スカイウォークのためににここに来たのにどうしてくれる」、「無いなら来なかった。この景色だけならすでに何度も見ている」 といった落胆を超えた激怒に近い不満を漏らす観光客もいるという。
 一方、逆に、スカイウォークの場所を事前に調べて知っている者も、実際に訪れてみて、道路が未舗装であることに驚きあきれかえる者があとを絶たないらしい。インディアン居住区内では多くの道が舗装されておらず、砂ぼこりが舞う荒れたガタガタ道が大部分だ (写真右上)。
 実際にラスベガスからスカイウォークを陸路で訪れるためには約 15マイル (24km) の悪路を走らなければならず、到着するころにはどの車も砂漠の砂や土でその姿を変えてしまう (写真左)。

 とにかくスカイウォークが出現したグランドキャニオンウエスト (これまでは 「グランドキャニオン・ウエストリム」 とも呼ばれたりしていたが、最近は 「グランドキャニオンウエスト」 という名称に定着しつつある) は、一般に広く知られる世界遺産のグランドキャニオン国立公園サウスリムからは空路での直線距離で 100km 以上、陸路では大きく迂回しなければならず約 400km ほど離れており、両者はまったく別の存在だ。
 ちなみにラスベガスからは陸路でも約 200km と、距離的にはそれほど遠くないが、前述の悪路があるため 3時間は要してしまう。(フーバーダム付近での渋滞が無く、なおかつ未舗装道路で飛ばす勇気があれば 2時間半も可能だが、悪路でパンクした場合はやっかいなことになるので飛ばさない方がよい)
 レンタカーを利用し陸路で行くにせよ、アメリカ側の旅行業者 (日系の企業も含めて) が催行する陸路および空路のツアーで行くにせよ、現地に到着してからはワラパイ族に従わなければならず、そのへんの部分も国立公園とは大きく異なる部分だ。(ワラパイ族および彼らが認定した業者しか現場の運営に関与できない)
 彼らの対応にはフラストレーションがたまる場面も少なくないが、習慣や文化や価値観が少なからず一般のアメリカ人とは異なり、ましてや時間にきびしく丁寧なサービスが当たり前の日本人とは大きく異なるので、そのへんの事情をあからじめ理解しておかないと、現場スタッフや旅行会社との間でトラブルになりかねない。

 では実際にここ数日でどのようなトラブルが発生しているのか。
 今回のスカイウォークの開業にともなう報道やその反響は、ワラパイ族にとっても想定外だったようで、人出や物資がたりない、というのがすべてのトラブルの根元にあるようだ。仮に想定内であったとしても、彼らの生活のリズムではすぐに対処できないということだろう。
 具体的なトラブルとしては、昼食を受け取るのに1時間並んだ、昼食を食べたあとのゴミ (使い捨ての食器) を捨てる場所がない (ゴミ箱がたりない)、メインの施設内に座る場所がない (左上の写真は空港ロビーの床に座り込んで食事をする人たち)、トイレが不足、トイレットペーパーが補充されていない、売店のレジが行列で 30分並んでも飲み物すら買えない、といった問題だ。
 ちなみに 「メインの施設」 とは、空港の出発到着ロビー、ギフトショップ、ツアーチケット発券所、総合案内所、バスの発着所などすべてをかねた小さな建物で、残念ながらその建物はスカイウォークの開業にともなう観光客の急増に、スペース的にも人的にも対応できていない。
 そのメイン施設で働くスタッフ (写真右) は、「ここで働くワラパイ族の多くは、55マイル (約 88km) も離れた村から通勤している。労働人口の絶対数がそれほど多くないばかりか、通勤車輌なども不十分で、人材をすぐに増やすことはむずかしい。あのボロボロのバスで村とここを往復しているんだ。水が不十分なここでは家畜を育てることも農業も無理なので遠くから通勤するしかない」 と、30年以上も前のアメリカ製スクールバスの改造車と思われる車輌 (ただ単にドアなどが消えただけで何も改造されていないのかも) を指さしながら、さほど困った様子もなくにこやかに話してくれた。
 驚いたことに、その片道 55マイルの道のりのほとんどは未舗装のガタガタ道だという (観光客は 15マイルの未舗装道路に悲鳴を上げているというのに)。悪路のためか古いためか、しばしば車輌故障をおこし、数時間夜道を歩くことも珍しくないらしいが、そのわりには彼らのほとんどが非常に太っているのは興味深い。アメリカ政府からの生活保護などでたくさん食べてほとんど仕事をしていないからだ、といった噂も耳にするが、そのへんの事情は詳しく聞き出せていないのでコメントを避けたい。

 そのようなわけで現場での段取りの悪さなどがまだ目立っているが、そういった現状に対して、空路でのツアーを催行している航空会社からは、「積極的な宣伝や販売活動は一ヶ月ほど様子を見てから始めたい」 といった声が聞こえ始めている。
 それでもあまりマイナス思考で考える必要はないかもしれない。ちなみにスカイウォークはワラパイ族が独自に建設したものではなく、ラスベガス在住のひとりの中国系ビジネスマンの発想による一般企業のプロジェクトとして、ワラパイ族との共同事業 (利益を分け合う) というカタチで運営されており、すでに一般のアメリカ人スタッフがどんどん現場に投入されている。エリア内のシャトルバスの運転手などもほとんどが一般のアメリカ人で、人材不足や段取りの悪さもやがて解消されることだろう。
 なお、スカイウォークの始業時間が遅かったりして、開業日には数時間待ちという大きなトラブルが発生したようだが、この問題はすでに解消されており、今は待ち時間はほとんど無いと考えてよい。(左上の写真は 4月 2日午後、上空から撮影。特に混雑していないことがうかがえる)

 さて、スカイウォークそのものに対する不満の声も少なくない。それは料金の高さ、形状などが事前に広く報道されていたイラストと大きくちがうこと、カメラの持ち込みが禁止されていることなどだ。
 まず料金について。これは $25 ということになっているが、それだけで済むわけではない。ツアーではなく、レンタカーなどで現場に行ったとしても、前述の 「メインの施設」 の前で車を降ろされ、そこから先のイーグルポイントと呼ばれる絶壁 (ここにスカイウォークがある)、およびさらにその先にあるグアノポイント (ここで屋外ランチを食べるのが一般的なパターン) へは、彼らが運航するシャトルバスに乗り換えて行かなければならない。(それぞれのポイントまでの移動時間はシャトルバスで約5分程度なので、距離的には徒歩も不可能ではないが、残念ながら徒歩での進入も禁止されている)
 したがって、航空会社が仕立てるパッケージツアーで訪れても、航空会社にできることは客を空港まで運ぶことまでで、そこから先はすべてワラパイ側の運営方針に従うしかなく、結局全員がこのシャトルバスを利用することになる。そしてそのシャトルバスが有料で、屋外ランチとセットになったチケットが $49.95 (これがヤバパイ居住区への "進入税" と考えればよいだろう)、さらにスカイウォークがセットになったチケットは $25 増しの $74.95 ということで、$25 だけ払えばいいというわけではない。実際には 7% の税金が課せられ $80.20 請求される。(ただし航空会社のパッケージ料金には、この代金があらかじめ含まれているので、別途これを支払う必要はない。つまり、航空会社はワラパイ側でのバスの運行権限などはないが、チケットの代行販売は可能ということ)
 なお余談だが、このチケットには 「ワラパイランチ」 というチケットも付いてくる。この 「ランチ」 は昼食の lunch ではなく、牧場や農園を意味する ranch で、そこの見学もできるということ。時間があればシャトルで 5分ほどで行くこともできるが、わざわざ行くほどの場所ではないので、時間が余ったら行く程度に考えておけばよいだろう。

 料金の高さで不評のスカイウォークに対して、その形状や構造に対しても 「話がちがう!」 との声が多くの観光客から出ている。
 数年前から出回っていた完成予想図では、絶壁の途中に U字歩道が取り付けられたような状態になっているが、実際はあらかじめ地上で造った歩道を絶壁から外側に押し出しただけの単純な構造だ。そのちがいがどれほど重要かどうかは個人の感性の問題だろうが、たしかにイラストの方がスリルがあるように思える。なお現場スタッフの話によると、今後この U字型の施設の根本付近の上にギフトショップやレストランを建設するので、最終的にはそのイラストのような形になるとのこと。「インディアンはウソをつかない」 と昔からよくいわれるが、はたして本当に実現するのか。

 カメラの持ち込み禁止もかなりまずい。どうやらこの問題は、インディアン側のスローな生活習慣などとは別の部分に帰因するまったく異質の問題で、観光客はこれに対して最も不満を抱いているようだ。
 ためしに現場スタッフになぜ持ち込み禁止なのかたずねてみたところ、「強風などでカメラを落とす者があとを絶たず、床のガラスにキズが付く恐れがあるから」 とのこと。たしかにキズが付いてしまってはガラスを通して下界を見ることができず、この施設の本質に関わるので重大な問題だ。
 実際に、施設に入る者は全員が布製のシューズカバーを装着しなければならず (右上の写真の足元に注目)、クツの底のゴミに対しても神経質になっていることがうかがえる。さらに現場では、モップを持ったスタッフが、常にホコリを取り除くなど (写真左) 管理は非常に念入りだ。それでもすでに細かいキズが目立ち始めており、早くも高価な (そうらしい) ガラスの寿命が心配されるほどで、キズの問題に敏感になるのはよく理解できる。
 だが、「カメラを床に落とすから」 という理由をそのまま信じる者はまずいない。仮にいたとしても、現場へ行ってみれば本当の理由がすぐにわかってしまう。そこには専用カメラマンが待機していて、そこで撮影した写真をデジカメのデータとして 1枚 $14.90 で販売しているのだ。
 それで利益になるというのであれば、ビジネスとしては非難される行為ではないので、そのこと自体はいいとしても、長期的に見てこの戦略は彼らにとってはたして利益になるのかどうか。大いに疑問だ。
 持ち込み禁止が理由で、どの観光客もみんなかなり不機嫌そうな顔をしており笑顔が少ない。同じ絶景を見ても精神状態によっては、感動や絶賛が落胆や酷評になってしまったりするものだ。各訪問者が地元に帰って周囲の友人などにこの施設のことを酷評するのと、自由に撮影できてその写真を友人たちに得意げに見せて回るのとではどちらが宣伝になるか、真剣に分析した方がよいだろう。今のままでは悪い評判が広まるだけのように思えてならない。(このページに掲載されている写真は、ワラパイ族の責任者から特別許可を得て撮影)

 さて、スカイウォーク自体の物理的な構造やアトラクションとしての評価についてだが、その意見は分れそうだ。高所恐怖症もしくはそれに近い者にとってはそれなりのスリルを味わえそうだが (怖くて味わえないかもしれないが)、そうでない者にとっては料金の高さのわりに少々物足りなさを感じるかもしれない。基本的には写真を見ての通りなので、それ以上の細かいコメントはひかえたいが、あまり大きな期待はしない方がよいというのが率直な感想だ。
 それよりも、多くの者にとっては、世界遺産のグランドキャニオン国立公園と、このグランドキャニオンウエストの比較、つまりどちらを訪れるべきかの方が気になるところだろう。
 ラスベガスを複数回訪問できる者は両方見ておくのが一番よいが、一度しかチャンスがない者にはやはり国立公園の方を勧めたい。理由は単純に渓谷の規模のちがい、つまり国立公園 (サウスリム) に比べグランドキャニオンウエストは3分の2程度の規模 (非常に大ざっぱなフィーリングとして) しかないからだ。
 ただ、米国政府がきちんと管理し観光地化しきっている有名な国立公園よりも、野性味あふれる未知の魅力のインディアン居住区というものに興味を感じるという者にはウエストもよいかもしれない。
 事実ここの絶壁には手すりなど一切ない (右写真)。転落しても自己責任というわけだ。もちろん国立公園でも自己責任であることに変りはないが、無法地帯的な荒々しさが随所に感じられるのがウエストの特徴で、そういった部分はここでしか味わえない。
 無法地帯といえば、今回のスカイウォークのような自然の景観を壊しかねない人工施設の建設は、過去はともかく今日の国立公園の運営規定では絶対に許可されないだろう。そういう意味では、この建設自体がインディアン居住区ならでは、といえなくもない。

 最後に余談だが、最近の研究によると、インディアンは日本人と共通の DNA を持っていることが明らかになりつつあり、彼らは、かつて陸続きだったアリューシャン列島をアジアから渡りアラスカ経由で現在のアメリカ大陸に住み着いたのではないかといわれている。
 たしかに背が低く、それほど長くない手足とずんぐりむっくりした体系、さらに鼻が低く丸みを帯びた顔つきなどは、どことなく日本人に似ていなくもない。肌の色がやや濃いのと、太りすぎという部分を除けば、日本人に限りなく近いようにも思える。
 さらに、一部の種族においては乳児の尻に蒙古斑が見られるというから、本当に我々と縁がありそうだ。
 その真相はともかく、彼らを同胞と思って接していれば、少々の不手際やスローペースの作業にも寛容になれるというもの。もう少しゆとりを持った気持ちで接したい。(左上の写真はグアノポイントで観光客にインディアンジュエリーを売るワラパイ族の人)
 同胞意識を感じたついでに前述のセキュリティー担当者に、「スカイウォークでワラパイ族に巨額の富がもたらされ、全員がレクサスに乗れるようになるのではないか」 と話を向けてみたところ、「村ではみんなアメリカのテレビを見ているので英語も話せるし、レクサスが日本製でどういう車であるかも知っているけど、舗装道路がないので今は欲しいとは思わない。それでもあのマネージャーなど一部の人はアメリカ人との混血だったりして、居住区の外の都市部に住んでいる者もいる。彼らは自宅周辺の高速道路でレクサスに乗りたいと思っているかもしれない」 という言葉が返ってきた。これには、彼らの社会の複雑な問題や奥の深さを感じずにはいられなかった。
 スカイウォークの上にレストランやギフトショップを建設することよりも、道路の舗装を優先した方がビジネス的にもワラパイの人たちにとってもプラスになるような気がする。実際に舗装計画もあるようだが、実現はいつになることやら。

■ 陸路 (レンタカー) での行き方   ■ 空路での行き方



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