週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2007年 03月 28日号
トニー賞12部門受賞の 「ザ・プロデューサーズ」 がパリスで開演
 トニー賞で史上最多の12部門受賞を果たした人気ブロードウェイミュージカル 「ザ・プロデューサーズ」 の公演がパリスホテルで始まった。
 ザ・プロデューサーズは 1968年、メル・ブルックス監督・脚本で制作された映画を舞台化した作品。2001年 4月にブロードウェイで開幕した当時は半年先までチケットが完売するほどの人気を博し、同年、「オペラ座の怪人」、「シカゴ」 でさえ成し得なかった、トニー賞12部門受賞という快挙も成し遂げている、いわばブロードウェイ ミュージカルを代表する傑作である。
 2005年には映画化もされているので、なじみのある人も多いだろう。その映画版は、ブロードウェイのオリジナルキャストであるネイサン・レイン、マシュー・ブロデリックをはじめ、ユマ・サーマン、ウィル・フェレルら豪華キャストが出演し、同年のゴールデングローブ賞の4部門でノミネートされ、興行的にもまずまずの成功を収めている。

 映画版を見ていない人のために、ここであらすじを紹介しよう。
 舞台は 1959年のニューヨークで、主役はブロードウェイ・プロデューサーのマックス・ビアリストック。超大物プロデューサーとして長らくブロードウェイ界に君臨したが、近年はヒット作がなく、落ち目の一途をたどっていた。最新作の 「ファニーボーイ」 も初演と同時に打ち切られるという悲惨な結果で、今後の活動の資金も底をつく。
 うまい言葉で金持ちの老婦人をだまして出資させるという方法でなんとか資金を集めるものの、日々の仕事はほとんどなく、老婦人を事務所に呼びつけることが主な仕事となりつつあった。
 そんなある日、マックスの事務所にうだつの上がらない税理士、レオ・ブルームがやってきた。いつものように帳簿を調べていると、ある突拍子もないアイデアを思いつく。多額の資金さえ集めれば、たとえ新作がヒットしなくても、自分たちだけは経費も使えるし給料ももらえるのでガッポリもうかる。むしろヒットすると出資者に配当金を支払わなければならないので、作品は大失敗した方がよい。失敗しても損をするのは出資者だけ。
 マックスもレオのそんなバカげたアイデアに賛同し、さっそく二人は資金集めと、失敗確実な 「史上最低のミュージカル」 の制作に取りかかる。
 あれこれ脚本探しをしているうちに彼らが 「最悪の脚本」 として選んだのは、ナチス・ドイツを信奉するドイツ移民、フランツ・リープキンが書いた 「春の日のヒトラー」。
 フランツと契約を交わすと、二人は史上最悪の演出家として、女装や悪趣味なものが大好きなゲイの演出家、ロジャー・デプリーに白羽の矢を立てる。
 美人でセクシーだけれど、どう考えてもまともな演技はできそうもないスウェーデン娘、ウーラが彼らの事務所にやってきて二人を悩殺すると、彼女の出演もすぐに決定。
 主役がなかなか見つからなかったが、ひょんなことから脚本家自ら主役を務めることになり、それもすぐに決定。
 こうしてすべての準備が整い、この作品は予定通り大失敗するはずだった。
 ところが実際に公演を始めてみると、期待していたブーイングとは裏腹に、観客の反応は大爆笑と拍手喝采でスタンディングオベーション。翌日の新聞の批評欄は絶賛の嵐で、その後、劇場の前には連日長蛇の列ができるありさま。予想外の大ヒットで、投資家へ配当金を払わなければならなくなったが、そんな金はなく、二人は逮捕され刑務所へ行くことに。
 しかしそれが結果的に二人の友情とミュージカルに対する情熱を高め、刑務所内でミュージカルを学び新たな作品を制作するという地道な努力を続けていると、その努力が評価され予定より早く出所させてもらえることに。そして彼らは夢の実現のため再びブロードウェイに戻り、そこで第二のプロデューサー人生をスタートさせる。

 さて、このたびパリスで始まったラスベガス版の最大のウリは、デビッド・ハッセルホフが出演していることだ。デビッド・ハッセルホフといえば、テレビドラマシリーズ 「ナイトライダー」、「ベイウォッチ」 でおなじみの人気スター。両ドラマともに日本でも放映されていたので、日本でも知る人は少なくないだろう。ちなみに彼はギネスブックで 「世界で最も見られているテレビスター」 に認定されている。
 キャリア的にははっきり言って下り坂、ルックスとセクシーでマッチョなイメージでは売れなくなった一昔前の大スターを今回抜擢した背景に何があるのかわからないが、ホテル側がハッセルホフ人気でチケットを売ろうとしているのは、宣伝用ポスターを見れば一目瞭然だ。デビッドが演じているのはロジャー役で主演のマックスやレオではないが、ポスターには主役である二人を押しのけて、ハッセルホフがひとりで登場している。

 さて、この作品の出来に関してだが、さすがはトニー賞12部門受賞作だけあって、歌あり踊りあり笑いありと、エンターテインメント性の高い作品に仕上がっている。テンポもよく最後まで飽きさせないし、華やかな衣装でも魅せてくれる。
 主演のマックス役はブロードウェイのベテランスター、ブラッド・オスカー、レオ役は若手のラリー・ルーベンで、二人ともなかなかの好演。願わくばネイサン・レインがマックス、マシュー・ブロデリックがレオを演じるステージを見てみたい、というのが一般的なファンの心情だろうが、それを望むのは贅沢かもしれない。
 一方、ウーラ役はブロードウェイ、ロンドンのウエストエンドで活躍したレイ・ジマーマン。華もあり、踊りも歌もいいし、ユーモアのセンスも抜群で、キラリと輝いていた。
 さて、肝心のハッセルホフだが、女装が趣味のゲイの演出家というアクの強い役柄が不思議にハマっていて実におもしろい。大柄かつ肉体派の彼がスパンコールのびっしりついたドレスを着て登場するだけで客席がどっと沸き、ハッセルホフも今までとは違った役どころを楽んで演じている様子がうかがえた。
 「ベイウォッチ」 を見てファンになった、という人なら、ショックを受けてしまうかもしれないが、歌も踊りもうまいし、新境地を築いたという感じだ。

 ミュージカルとしての完成度は高く、批評家たちの評価もまずまずのザ・プロデューサーズ。ブロードウェイミュージカルファンなら、文句なしに十分楽しめるだろう。
 ただ、当然のことながら全編英語のため、理解するにはかなりの英語力が必要だ。英語に自信のない人は、「英語が聞き取れなくて、途中で筋が追えなくなってしまった」 ということのないよう、事前に映画版をDVDで見るなどして予習をしておいたほうがよいかもしれない。

 「ミュージカル不毛の地」 といわれるラスベガス。現在、「マンマミア」、「オペラ座の怪人」、「スパマロット」 などのミュージカルが上演されているが、どれも客の入りは今ひとつのようだ。ザ・プロデューサーズも例外ではなく、開演からわずか 1カ月ほどにも関わらず空席が目立つのが気になった。
 チケットが当日でも十分入手できるのはうれしいところだが、突然打ち切られる可能性もある。「オカマを演じるハッセルホフがどうしても見てみたい」 という人は、早めに劇場に足を運んだほうがいいだろう。
 公演は水曜日を除く毎日 8:00pm で、土曜日は 2:00pm にも行なわれる。水曜日は休演。チケット料金は $75.50、$108.50、$128.50、$143.50、の4種類で、劇場前のボックスオフィスで買うことができる。


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