週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2007年 01月 10日号
エルビスプレスリーがサハラホテルで復活!
 12月 29日からエルビスプレスリーがサハラホテルで常駐コンサート "The Musical History of the King" を始めた。
 といっても今回主役を演じているのは本物のエルビスプレスリーではない。「当たり前だろっ!」 との声が聞こえてきそうだが、一部の熱狂的なファンの間では、エルビスはまだ生きていることになっている。
 「コンサート、映画、テレビ出演、あまりの多忙で仕事に疲れ、そこから逃避するために自らを死んだことにし、実際はどこかでのんびり暮らしている。そして一昨日の 1月 8日は 72回目の誕生日で、どこかでだれかと祝っているはず」
 というのがファンたちの願いのようだが、その真偽はさておき、今年 2007年は没後 30年という節目の年。普通なら忘れ去られてもおかしくない歳月だが、エルビスの場合、今でもその存在感は圧倒的で、実際の稼ぎも現役スターに勝るとも劣らないらしい。事実、経済誌フォーブスが発表する "故人長者番付" (著作物などからの収入) では毎年1位か2位にランクされており、昨年度の収入は日本円で約50億円というから恐れ入る。

 収入とは別の人気のバロメーターともいえるのが 「自称エルビス」 の数で、ここラスベガスでのその数は 30人とも 50人ともいわれている。
 どんなスターにも、そのそっくりさんはたくさんいるものだが、エルビスのすごいところは、それらそっくりさんの多くが、それを理由になんらかの仕事をしているということ。
 つまり、歌手、大道芸人、教会の牧師、カジノのディーラー、司会業などなど、どれもアルバイト的な仕事が大部分のようだが、さまざまな分野にエルビスがたくさんいる。また、仕事とは無縁の趣味レベルの 「なんちゃってエルビス」 を含めると、ラスベガスには何人エルビスがいるのかわからないほど多い。

 そんな数あるエルビスの中でもかなり本格派として知られるのが、今回のコンサートの主役 Trent Carlini 氏 (このページにある写真はすべて彼のもの) で、彼は 1996年まで、現在もインペリアルパレスで行なわれている人気のナイトショー 「レジェンドインコンサート」 のエルビス役として 6年間も活躍していた実績の持ち主だ。またその後もボードウォークホテル、ラスベガスヒルトンでもステージに立っていた。
 そんな彼がこのたび 38才になり、満を持して始めたのが今回のショーで、この年齢的なタイミングには意味があるという。本物のエルビスが 30年前に他界した際の年齢が 42才。つまり現在の中心的なファン層である団塊の世代にとって最も親しみがあるのが 30代から晩年のエルビスで、それを演じるのにふさわしい年齢になったというわけだ。

 さてショーの内容についてだが、前座なしで、トークもほとんどないまま、ひたすら 20曲ほどを歌い上げる。
 容姿も声も技量も、モノマネとしてはかなりレベルが高く、難点は見つけにくいが、あくまでも純粋なコンサートといった感じで、何を期待するかによって評価や満足度が大きく分れそうだ。
 つまりジョーク、ユーモア、おふざけ、のような要素をほとんど含まないため、他の一般的なモノマネショーに見られるようなコミカルな演出を期待していくとガッカリすることになるが、その逆に、今では見ることができないエルビスを、できる限り当時のままの姿で観たいという往年のファンにとってはそれなりに満足感を得られるだろう。
 多くのエルビスそっくりさんは、コメディアン的要素で客を喜ばせようとしているが、Trent Carlini 氏はギター演奏から歌まで忠実に再現することを心がけており、本当に心底からエルビスが好きなミュージシャンという印象を受ける。
 音楽の要素だけでなく、身振り手振りなど細かい仕草もよく研究しており、開脚で歌うシーンなど実に良く似ているが、顔に関してだけは、あごの出っ張り具合が本物よりやや少ないためか、見る角度によっては、あまり似ていないように思えてしまうこともある。それを知っていてか、下を向きながら上目づかいで苦しそうに歌うシーンが多く、その角度から見ると本物と見分けがつかないほどよく似ており、それこそが最も盛り上がる場面で、彼の真骨頂といってよいだろう。

 客層としては中高年のアメリカ人女性が多く、日本でいうならばヨン様のファンか、もしくはそれよりやや上の年齢層といった感じで、反応やノリは悪くない。
 一方、当たり前といってしまえばそれまでだが、映像であれライブであれエルビスのコンサートの光景を知らない世代にとってはかなり単調に感じるのか、酷評に近い厳しい意見を多く聞かされた。やはりエルビスの歌と姿だけをばくぜんと知っている程度の観客には、もう少しコミカルな演出が必要なのかもしれない。
 バンドの編成は、ホーンセクションが3人、キーボードが2人、ギター、ベース、ドラムスが各1人の合計8人。それにバックシンガーの女性が2人。
 衣装は 6回変え、さまざまな時代のエルビスを再現してくれるのはありがたい。衣装替えの間はスクリーンに懐かしの映像などが映し出されるが、残念なことにそれは本物のエルビスのものではなく、Trent Carlini 氏が演じている映像だ。近年、エルビスの権利などを管理所有する会社が変り、著作物の利用に対するルールが厳しくなってきたため、本物の映像をここで流すことはできないようだが、今後はそっくりさん自体の活動もその会社の管理下に置かれるようになるとの噂もあり、このショー自体が著作権論争に巻き込まれる可能性もあるらしい。

 公演は月曜日から土曜日までの毎晩 9:00pm 。正味約 70分。日曜日は休演。チケットはサハラホテルの公式サイト www.saharahotelandcasino.com で買え、メインフロア $71.90、バルコニー席 (二階席) $60.90 となっているが、売り切れになることはほとんどないと思われるので、現場 (ストリップ大通り側からサハラホテルのカジノ内に入ってすぐのところにあるボックスオフィス) で買えばよいだろう。
 観客の入りは平日だったこともあり、メインフロア全体の7割ぐらいが埋まっている程度で、やや寂しい感じもしたが、中高年のノリのよいアメリカ人女性客のおかげでそれなりに楽しい雰囲気が漂っていた。とにかく 「アメリカはビートルズよりもエルビス」 といった感じが伝わってくるショーで、往年のライブを知るファンならばそれなりに楽しむことができるだろう。ちなみに、小泉元総理も熱狂的なファンのようだが、日本人と思われる観客はなぜかゼロだった。


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