週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2006年 11月 29日号
謎の超高級ゴルフコース CASCATA、だれでもプレー可能に
 バブル崩壊から早くも 16年。日本ではすっかり鳴りをひそめてしまったリッチな話題も、ここラスベガスではまだまだ健在だ。
 今週は、「グリーンフィー $500、キャディーへのチップも含めると $600」 というラスベガス屈指のバブリーかつ謎に包まれたゴルフコース・カスケータ (Cascata Golf Club) を紹介してみたい。
(右下に並ぶ写真は上から順番に 1番ホールから 18番ホールまで。クリックで拡大表示)

 一般的にゴルフコースのカテゴリーには、会員のみがプレーできるメンバーコースと、だれもがプレーできるパブリックコースがあり、それは日本もアメリカも同じだ。が、ここラスベガスにはさらにもうひとつ、「ハイローラーしかプレーできないコース」 というものがある。いや正確には 「ある」 ではなく 「あった」 というのが正しいかもしれない (今では、料金さえ支払えばだれでもプレー可能になったので)。
 ハイローラーとは、 高額な賭け金で遊ぶギャンブラーのことで、カジノにとってはもちろん超重要顧客だ。したがってカジノ側は、とびきりゴージャスなコースを建設し、ハイローラーをそのコースに無料で招待したりする。

1番ホール 2番ホール 3番ホール 4番ホール 5番ホール 6番ホール 7番ホール 8番ホール 9番ホール 10番ホール 11番ホール 12番ホール 13番ホール 14番ホール 15番ホール 16番ホール 17番ホール 18番ホール  メンバーコースやパブリックコースと区別するために、そのハイローラー用のコースのことをあえてここでは 「ハイローラーコース」 と呼ぶことにするならば、それはラスベガスに 3つ存在する。シャドークリーク・ゴルフクラブとウィン・ゴルフクラブ、そして今回紹介するカスケータ・ゴルフクラブだ。
 もう一ヶ所、リオセコ・ゴルフクラブも、その生い立ちから考えるとハイローラーコースと呼ぶことができるが、他の3コースに比べると料金的にはそれほどバブリーではない。

 ちなみに各コースのこれまでの経緯を簡単に説明しておくと、ホテル王ことスティーブ・ウィン氏が所有していたミラージ、ベラージオ、トレジャーアイランドなどのハイローラーのために造られたコースがシャドークリーク、それに対抗して MGMが造ったのが今回紹介するカスケータ、そしてリオのハイローラー用に造られたのがリオセコだ。
 その後、MGMはウィン氏のホテルをすべて買収し (当然シャドークリークも買収)、カスケータが不要になったため (バブリーなコースを 2つも所有する必要はないので)、せっかく造ったそのカスケータをパリス、バリーズ、フラミンゴのグループに売却してしまった。
 一方、ホテルをすべて失ってしまったウィン氏はゼロからの出発として豪華ホテル・ウィンラスベガスを建設し、同時にその敷地内にウィンゴルフクラブも造った。
 その後、パリス、バリーズ、フラミンゴのグループはシーザーズパレスを買収し、さらにリオとも大連合を組むことになったため、現在リオセコとカスケータは同じ会社の管理下で運営されている。

 そんな経緯を持つ 4つのコースだが、早い時期から一般への開放を決めたリオセコに対して、シャドークリークとカスケータは離合集散している間も閉鎖的な運営方針を守り続け、ハイローラー以外にとっては何かと未知の部分が多いコースとしてあがめられてきた。
 それでもシャドークリークは住宅街から遠くない場所にあることと、ノースラスベガス空港から飛び立つグランドキャニオンツアーの飛行機から丸見えということもあり、存在自体は開業当時から広く知られ、謎めいたコースという位置付けではなく、また、昨年デビューしたウィンゴルフクラブも、そのホテルの客室棟からすべてが見渡せるという環境にあるため、一般庶民にとってはあこがれの存在ではあっても神秘的な要素はほとんどないコースで、今でもその状況に変りはない。
 一方、カスケータは山の中に完全に閉ざされ、またそこへアクセスするための道路も意図的に隠すなど (道路名すらなく地図にも載っていない)、実際にプレーするハイローラー以外にはその存在自体を知り得ないようなマーケティングがなされてきた。
 そんなコースが昨年から、ハイローラーではなくてもシーザーズパレスなどの宿泊者であれば料金を支払ってプレーすることが可能になり、そしてこのたび、宿泊者以外にも完全に解放され、だれもがプレーできるようになった (ウィンもシャドークリークも宿泊者であればハイローラーでなくてもプレー可能になっている)。以下はそんなカスケータでの取材レポートだ。

 場所は、ラスベガスのホテル街から南東方向に 35分ほど走ったボールダーシティーにある荒涼とした砂漠地形の山の中で、現場近くまで行っても外界からはまったく見えない。
 高速 93号線と 95号線が別れる地点で一度高速を降り、そこの交差点を左へ行くとこのコースがあるわけだが、その左へ行く道には名前もなく、ゴルフ場を示す案内板なども一切ない。
 通常アメリカではどんなに小さな道でも名前だけはきちんと付けられているものだが、名前がないどころか、驚くことにそこには 「Private Property」 (私有地)、「No Thru Traffic」 (通り抜け不能) と書かれた看板がぶっきらぼうに掲げられ、さらにそこを進もうとすると道路の真ん中に、なんと 「STOP」、「DEAD END」 (止まれ、行き止まり) といった標識が立っている。(現場の様子の写真 ← クリック)
 ゴルフ場に限らず、客を受け入れる施設の入口にこんな無愛想な看板を掲げている場所は世界広しといえどもそう多くあるまい。たしかに私有地であり、通り抜けができないことも事実で、このような標識も理解できないわけではないが、そこがゴルフ場の入口であることをまったく示さないのはどう考えても異常だ。これでは、この先にゴルフ場が存在していることを知っている者以外、だれもがここで引き返してしまうことだろう。

 「止まれ、行き止まり」 を無視して強引にその道を進むと、荒野を走る道路の両脇にとつぜん広葉樹が現れ、無人のゲート (←クリックで写真表示、以下同じ) が立ちはだかる。
 黙っていたのでは開くわけもないので、そこにある インターホン (隠しカメラもある) を押してみるとすぐに、人影がまったくない静まりかえった空間に人の声が返ってきた。「お名前は?」
 名前と、予約時に知らされたスタート時間を告げると、重厚なゲートが静かに開く。そこを通り抜けてしばらく走ると、やっと芝生らしき緑色の土地と建物が見えてくる。
 その建物はなんの変哲もないクラブハウスだが、そこにはビシッとスーツで決めた女性スタッフと、車輌担当らしき男が立っていて、我々の名前を呼びながら挨拶してくるから驚きだ。なぜ名前を知っているのか、と一瞬不思議に思うが、よく考えてみるとインターホンで名乗ったばかりであることに気付く。
 男がゴルフバッグを車から降ろすと同時に、スーツの女性が、「車は片づけておきますので、クラブハウスの中へどうぞ」 と丁寧な口調で案内してくる。いわゆるバレーパーキングになっているわけだが、番号札などは何も渡されない。客の顔を覚えているのでそのようなモノは必要ないらしいが、車を間違えることがないほど客が少ないという可能性もあるので、客の数を聞いてみると、「本日は 10組です」 とのこと。日曜日としては平均的な数字らしい。

 外見からは平凡なクラブハウスの中へ入ると、そこには驚きの空間が待っていた。なんと滝だ。よくある室内装飾用の小さな滝ではない。ゴルフコース内を流れる立派な川がそのままクラブハウス内の床の下を横切り、急斜面の部分で滝を形成している のである。クラブハウスの中に川があるというよりも、川の上にクラブハウスを建ててしまったと言った方がわかりやすいかもしれない。ちなみにこのゴルフコースの名称 CASCATA はイタリア語で滝、英語の CASCADE を意味している。
 そんな滝に驚いていると、その女性は 「どうぞこちらをご利用ください」 とロッカールームに案内してくれた。数十個並ぶロッカーのどれを使えばいいのか悩んでいると、そこに自分の名前があることに気付く。客ひとりひとりの名前を刻んだ金属製のプレートが各ロッカーに張り付けられているわけだが、まるでメンバーコースのロッカールームのような心憎いばかりのサービスだ。

 グリーンフィーを支払いチェックインを済ませると、階段を降りて川が流れている下のフロアへ行くように案内される。川が流れているとは言え、そこはまだ室内。つまり、ちゃんと天井も屋根もあるわけだが、なんとそこには我々のゴルフクラブを積んだカートがすでに用意されていた。「どうぞご出発ください」 と言われるものの、まだ薄暗い室内であるばかりか、進行方向にあるのは壁でカート道ではない。
 「どこへ走って行けというのか」 と思っていると、荘厳な扉が開き、目の前に緑一面のコースが広がる。やっと仕掛けを理解し、アクセルを踏み込み外へ出ると、握っているハンドルが革張り であることに気付く。

 待機していたキャディーが練習グリーンやドライビングレンジを案内してくれる。練習グリーンが驚くほど速い。一緒にラウンドする4人とも決して短くないゴルフ歴を持つが、全員が 「これだけ速いグリーンは初めて」 というほどボールが止まらない。ちなみに現場に掲示してあるコースコンディション情報 (写真左) によると、グリーンスピードは 「11フィート 6インチ」。
 一般のゴルフ場は、5フィートから 8フィートが普通で、世界最速クラスのオーガスタで 12フィートといわれているので、全員が 「こんなの初めて」 と感じるのも無理はない。

 山を流れる滝に向かって打つドライビングレンジ (写真右) で軽く汗を流すといよいよスタートだ。
 1番ホールに立つと、いくつかのホールを見渡せる。コース全体の環境や景観はリフレクションベイやリオセコに似ているが、それらコースのまわりで見られるような豪邸などはまったく存在しない。砂漠系の山岳地帯をそのまま生かした非常にワイルドなコースに仕上がっており、ちなみに設計者は知る人ぞ知るリー・ジョーンズ。偶然にもリオセコと同じだ。

 個々のホールの説明は割愛するが、練習グリーンが 「超高速」 であったわりには、本番のグリーンは飛び抜けて速いという印象は受けない (それでも並みのコースに比べるとかなり速い)。練習グリーンと本番グリーンのコンデションが大きく異なるのは好ましいことではないだろう。
 プレー客が非常に少ないためか、フェアウェーのコンデションは抜群で、まるでカーペットのような感じだが、グリーンはところどころにボールマークが目立つなど、驚くほど美しいというほどではなかった。

 CASCATA という名前のわりには水がからむホールはそう多くないが、やはりこのゴルフ場の最もバブリーな部分はその水だろう。砂漠の山岳地帯において本来存在しないはずの水を大量にくみ上げ、殺風景な砂漠の景観に潤いを与えているところは恐れ入る。グリーンフィーの多くの部分がポンプの電力代に消えていっているのかもしれない。ちなみに広報資料によると 200馬力のポンプを使っているとのことなので、約 150,000W (150kw) の電力を使っていることになる。
 余談になるが、16番ホールをプレーしていると、クラブハウス方向から電動カートに乗った女性スタッフが我々に近づいてきた。プレーを中断し彼女の到着を待つと、にこやかな顔で 「帰りのリムジンは何時ごろにご用意すればよろしいでしょうか」 と聞いてくる。「自分の車を運転してきたのでリムジンは不要です」 と答えると、客が何でやって来たかをウッカリ間違えた不覚をひどく反省している様子で、かなり真剣な顔でわびていた。
 まだハイローラー専用時代のサービスのクセが残っているのか、もしくは、いまだにリムジンで来るプレーヤーが圧倒的に多いのか定かではないが、そんなハプニングに遭遇するのも、このコースならではのものといってよいだろう。

 18番ホールを終えてクラブハウスへ戻ると、あの重厚な扉がまた自動的に開き、カートごと室内へ入れるようになっている。キャディーへのチップは 「1組 $200 程度」 と聞いていたので、その相場に準じた金額を渡し、キャディーと別れロッカールームへ。
 プロショップ (写真左) で買い物をし、軽く一杯飲んでロビーへ向かうと、こちらの行動をどこかで見ていたのか、我々の車が玄関前に寄せられ、ドアを開いた状態で待機していた。もちろんゴルフバッグがすでに積み込まれていたことは言うまでもない。
 周囲には数台のリムジンが停車しているところを見ると、まだまだハイローラー依存度が高い様子。それでもだれでもプレーできるようになったことは事実で、実際に以下のサイト経由で簡単に予約することができる。興味がある者は、バブリーな雰囲気が残っている今こそプレーしてみるとよいだろう。そのうちに、道路にも名前が付き、入口にも案内板が掲げられるなど、普通のゴルフ場になるかもしれない。
 グリーンフィーは前述の通り曜日や季節に関係なく $500。火曜日は休み。各ホールの距離やコースレーティングなどは こちらをクリック

■ 公式サイト: www.caesars.com/cascata


バックナンバーリストへもどる