週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2006年 10月 11日号
"PLAYBOY" ブランドが有料カジノクラブとして復活オープン
 10月 6日、ストリップ大通りの中心街から西へ約 2km 離れた場所にあるパームスホテルの新館 Fantasy Tower (右写真内の左側の建物、クリックで拡大表示) の最上部に、入場料を徴収するカジノ "PLAYBOY CLUB" がオープンした。
 この "PLAYBOY" とは、もちろん 60年代、70年代に一世を風靡したあの正真正銘のプレイボーイで、このたびの開業は、1988年に全米最後のプレイボーイクラブが消えてから 18年ぶりの歴史的な復活劇となる。
 なお、このカジノクラブのフロアを上下に挟むかたちで、ナイトクラブ "MOON" と高級イタリア料理店 "NOVE" も同時にオープンした。これら 3店の外観の様子と位置関係は こちらをクリック

 "PLAYBOY" は、シカゴ生まれの実業家 Hugh Hefner 氏 (現在 80才) が半世紀も前にクリエイトしたブランドで、主な事業内容は、だれもが知る通り、男性向けマガジンの出版とメンバー制のナイトクラブの運営だ。
 60年代、セクシーな女性に囲まれながら酒が飲めるというプレイボーイクラブは社会現象になるほど話題を集め、そのメンバーになることは、当時の男性にとってはちょっとしたステータスだった。そんな世間の波に乗り、同社のクラブ部門はマガジン部門と共に拡大路線を突き進むことになるが、女性の権利や自由を主張するフェミニズム運動の台頭と共に、70年代後半から事業の流れは一転した。
 同社とフェミニズム運動の関係を語る上で忘れてはならない "大事件" がある。それは、フェミニズムの分野におけるカリスマ的存在の女性活動家 Gloria Steinem 氏が、プレイボーイ社のトレードマークでもあるバニーガール・ホステスに自ら応募し、その潜入記を 80年代半ばに出版した騒動で、この書物の中で彼女は 「プレイボーイ社は、男性のために女性を商品化している」 と訴え、それが世界中の女性解放家たちを勢いづけ、同社は世論を敵に回してしまった。

 結局、世界各地に存在していたプレイボーイクラブは次々と閉鎖に追い込まれ、全米最後のミシガン店が 88年に、そして海外店としてはマニラ店が 91年に閉じたのを最後に、この地球上からプレイボーイクラブは姿を消してしまった。
 当然のことながら雑誌部門も苦戦を強いられ、コンビニのセブンイレブンが、女性を敵に回すわけにはいかないとのことで、同誌を店頭から排除したニュースは記憶に新しい。
 その後 21世紀に入り、時代の流れと共に価値観も変わってきたのか、セブンイレブンも 2003年から販売を再開し、また、女性差別の象徴だったバニーガールやそのロゴは、かわいらしいマスコットキャラクターとして親しまれるようになり、PLAYBOY ブランドは復活の兆しを見せ始めている。事実、雑誌の発行部数でこそ全盛期 (70年代前半、全世界で約 700万部) の半分以下に低迷しているが、現在キャラクターグッズなどは売上げが急増しているという。

 そんな経緯をたどりながらの満を持しての 18年ぶりの復活オープンということで、オールドファンにとっては感慨ひとしおかもしれないが、今回の戦略は、かつてのプレイボーイクラブを知るゼネレーションが相手ではなく、その子供や孫の世代がターゲットだという。
 無料で入れるのが当たり前のラスベガスのカジノ業界において、有料 (とりあえず現在は平日 $20、週末 $40) というのはいささか無謀で、失敗を心配する声も聞かれるが、この世代はオリジナル世代以上に古き良き時代のレトロなものにあこがれる傾向があり、勝算は十分にあるようだ。
 たしかに現場へ行ってみた印象では、カジノというよりも、昨今の流行語としての 「ウルトララウンジ」 に近い雰囲気の場所で (ウルトララウンジに関しては週刊ラスベガスニュース 495号を参照)、ロゴのウサギやカジノディーラーの衣装 (プレイボーイの規定に準じたバニーガール) といったレトロなものを大切にしながら、インテリアや運営システムは時代の最先端のものを導入しているあたりは、いかにも若者ウケしそうだ。実際に客層は若く、少なくとも開業日は、左上の写真 (開業記念パーティー時の同ホテルの正面玄関前) に見られるような高級スポーツカーで訪れている若い世代 (50代以下) の招待客が目立った。

 ホテル側の広報部からの写真がまだ間に合わず、カジノ内の様子を紹介できないのが残念だが、フロアは想像していたものよりもかなり狭い。ブラックジャックテーブルが 9台、ルーレットテーブルが 1台あるだけで、クラップス、バカラ、その他のゲームはない。
 マシンゲームもごくわずかで、実質的には 「ブラックジャック専用カジノ」 と考えてよいほどのシンプルな構成だ。
 そのブラックジャックのルールは、8デックのハンドシャッフル、Soft-17 Hit 以外はサレンダーも含めてなんでもありで、昨今のカジノとしては良心的なルールといってよいだろう (ただし Ace の再スプリットだけはできない)。取材時のミニマムベットは $25 と $50。
 なお、9台しかないそのブラックジャックテーブルは 5人用なので (通常のカジノは 6人が主流で 7人の場合もある)、全フロアで同時に 45人しかプレーできないことになり、フロア面積のみならずキャパシティー的にもかなり小さい。ちなみに夜遅くなればなるほど混んでくるようで、ピークは 3:00am ごろといった感じか。

 何やらみすぼらしいカジノのようにも思えてくるが、そんなことはない。そもそもここはカジノというよりもウルトララウンジと考えるべきで (キャパシティー的に、大部分の者はカジノではなく酒場としての雰囲気を楽しむことになるので)、そう考えれば施設も雰囲気もかなり立派と言えるのではないか。特に夜景や、カクテルウェイトレス (もちろんバニースタイル) がすばらしい。$20 払って入場しても後悔することはないだろう。
 なお、昨今のナイトクラブやウルトララウンジのしきたりに従い、席に座るためには 500〜600ドルのボトルを入れる必要があるので、座ってゆっくり飲みたい者は注意が必要だ (このシステムに関しても 495号を参照のこと)。「500ドルもの大金を払って座るぐらいなら、ブラックジャックテーブルに座って 500ドル負けた方がまだマシ」 という意見も聞かれそうだが、そこはギャンブラーと酒飲みの価値観の違いか。
 注意といえば、もうひとつ。それは 24時間営業ではないこと。とりあえず現在設定している営業時間は夜7時から翌朝5時までなので、昼間に行っても入場できない。
 また、他のカジノと異なり、ドレスコードもあるので注意が必要だ。明確な基準は示されていないが、Tシャツ、スニーカーなどは、かなりの確率で入場拒否されると考えておいた方がよいだろう。このドレスコードのルールに関しても 495号を参照のこと。

 最後に蛇足ながら、カジノフロアの下にある NOVE (写真右) について。数種類の料理を食べた限りでは、料金の高さがやや気になるものの (普通にオーダーすれば、一人 $100 を超えてしまう)、味的には悪くない。特にマグロ、ハマチ、タコなどシーフードメニューが豊富で、日本人に注目される店になれるかもしれない。デザートも総じて甘さ控えめだった。
 その他の特徴として気づいた点は、壁に掛かっている絵画とワイングラス、それにシャンデリア。絵画は、液晶パネルを使ったコンピューターグラフィックスで、ゴッホやピカソなど著名画家の作品が約 1分ごとに切り替わって表示される。
 ワイングラスには脚、つまりステムがない。それはそれでボールのような曲線美が楽しめ悪い印象はないが、客がうっかり倒してしまうことがないのでウェイターの悩みが減るのと、洗う現場が楽になるというレストラン側の事情が見え隠れしているようで、伝統的スタイルを好む者にとっては楽しくないかもしれない。
 シャンデリアは、細かい LED が無数にちりばめられており、時間と共に照明の色が変わる。オレンジ色の時はいいが、ピンクやむらさきは高級レストランの雰囲気に合っていないような気がした。
 気になる夜景に関してだが、一般用のメインダイニングルーム (右上の写真) からは、このホテルの本館の最上部にあるネオンサインばかりが目立ってしまい、方角的にも窓とイスの位置関係的にも大した夜景は期待できない。
 すばらしい夜景が見える席は、東側 (ストリップ側) にひっそりと存在している小さなダイニングルームで (写真左)、ここからの景色は抜群だが、残念ながら VIP優先のようなので、一般客がここに座れることは考えない方がよいだろう。
 なお、ナイトクラブ MOON は、まだ一般客を相手にした営業が始まっていないので (週末のみの営業。先週末は開業記念パーティーに使われただけ)、日を改めて紹介してみたい。


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