週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2006年 04月 26日号
ストリップ地区にある 「ディムサム」 & 「ライブ・ディムサム」
 レストラン群が激変しているミラージホテル。高級フランス料理の Renoir、和食の Mikado、中華の Moongate、どれも日本人観光客の間で人気が高いレストランだったが今はない。どの店も新たに生まれ変わったか、生まれ変わろうとしている。
 そしてこのたび Moongate のリニューアルバージョンとしてオープンした高級中華料理店 FIN に、飲茶 (やむちゃ) があるというのでさっそく取材に行ってみた。が、その取材は思わぬ方向に…

 FIN を紹介する前に 「飲茶」 の表記について簡単にふれておきたい。日本で一般にいうところの飲茶の本来の意味は、お茶を飲みながら 「点心」 を食べること、つまりお茶と共に、小皿や蒸籠 (せいろう) に小さく盛られた料理を楽しむことであり、料理そのものはあくまでも点心で、アメリカの中華料理の世界では、その点心の中国語読み 「Dim Sum」 が日本の飲茶の意味として広く使われている。したがってラスベガスの中華料理店などで飲茶を探したりオーダーしたりする際は Dim Sum という言葉を使う必要がある。そのようなわけで、以下この記事では飲茶ではなく 「ディムサム」 と表記することにした。

 さて話は FIN に戻って、大きな期待と共に現場へ乗り込んでみたわけだが、想定外の結果になってしまった。
 大きな期待をしたのにはいくつか理由がある。チャイナタウンなどへ行けばディムサムはいくらでもあるが、ストリップ地区には現在ほとんど存在しないこと、ホテルの広報部門も地元メディアもかなり大々的にこの店のディムサムを取り上げていたこと、そして MGM の Pearl、マンダレイベイの Shanghai Lilly といった高級中華料理店を渡り歩いてきた有名シェフ Chi Choi 氏 (香港で長年シェフをやり、1993年からラスベガスに移住) 監修の店であることなどが期待を大きくふくらませたわけだが、我々が期待するディムサムではなかったのである。
 つまり、小皿をたくさん乗せたカートがテーブルの間を走るというあの活気あるスタイルではなく、一般の料理と同様にごく普通にオーダーして、キッチンで調理された状態で運ばれて来る非カート式で、極めて静かな高級感あふれるダイニングルーム (写真左上、クリックで拡大表示) でのディムサムだった。

 できるだけたくさんのアイテムを食べていろいろな料理を紹介してみようと、かなりの人数で乗り込んだわけだが、カートで運ばれて来ないディムサムでは日本人観光客の期待に添う記事にはならないだろうと抗議ということに。しかし、よく考えてみると店側にまったく責任はないので、情報を流したホテルの広報部門に 「話が違う」 と現場から文句を言うと、カートで運ばれるスタイルとそうでないスタイルが存在していること自体、まったく知らなかった様子で、「勉強になった」 との意外な返事。
 たしかに一般のアメリカ人にとっては料理が同じであれば、どうやって運ばれて来ようと関係ないのかもしれない。そもそも我々も 「カートで運ばれてこないディムサム」 を想定していなかったことは反省すべきで、広報部門に文句を言うのも筋違いだろう。今後は 「ライブ・ディムサム」 という言葉を使うなど、なんらかの方法で 2つのディムサムを区別して表現しないと誤解を招きやすいことがわかったが、そのことに気づいただけでもこちらも勉強になった。

 そのようなわけで、とりあえず FIN 流のディムサムをオーダーして食べたわけだが、右上の写真の通り 5種類の点心が一つの大きな蒸籠に盛り付けられて出てくるという独特なスタイルで、一度運ばれて来たらその 5種類すべてがなくなるまで少々時間を要するため、しばらく静かに厳粛に食べ続けることになる。厳粛に食べなくてもよいが、テーブルを取り囲むガラス製の奇抜なインテリアが非常に仰々しく (写真左)、否が応でもかなりかしこまった気分にさせられてしまう。
 したがって、カートが頻繁にやって来て皿が出たり入ったりする賑やかなライブディムサムとはかなり趣を異にしており、多くの者にとっては 「期待ハズレ」 ということになるのではないか。なお FIN の名誉のために言っておくが、味は悪くないどころか、さすが Chi Choi 氏と思わせる非常にすばらしいもので、料理自体は申し分ない。

 「日本人が期待するディムサムはカート式のはず。これでは記事にならない」 と困っていると、店長がすかさずベラージオのカジュアル中華料理店 Noodles を紹介してくれた。(写真右。所属ホテルも店の名前も違うが、FIN も Noodles も同じ MGM Mirage 社が経営する店で、競合関係にあるわけではない)
 FIN と違って開業したばかりの店ではないので時事的な話題性には乏しいが、たしかに Noodles はライブディムサムをやっている店だ。
 さっそく翌日取材に行くことに決めたが、よく考えてみると FIN も Noodles も 「ディムサムは週末のランチタイムのみ」 となっているため、取材のための時間がまるでない。じつは FIN の取材が 23日の日曜日のランチタイムだったので、翌日は月曜日でダメ。また、ランチタイムをすぎると終わってしまうため、残された時間は約1時間しかなかった。
 結局、たった今 FIN でディムサムを食べたばかりではあったが、全員が強引に Noodles へ直行することに。やはりそこには探し求めていたものがあった。店の狭さがやや気になるものの、正真正銘のライブディムサムだ。もちろんたくさん食べることはできなかったが、味はかなりまともで、種類もそこそこ充実していた。超満腹という極めて異常な体調であったことを考慮すると、かなりレベルの高い味といえそうだ。

 これでディムサム取材を終わりとするにはいささか情報量が少なすぎるので、平日でもやっているディムサムの店 (ただしライブではない) として知られるベネシアンホテルの Royal Star を翌 24日の月曜日に訪れることにした。
 余談になるが、よく考えてみると、この Royal Star の非ライブ型ディムサムの存在は前からわかっていたので、FIN がライブであると勝手に思いこんでいたことは明らかにこちらの早合点ということになる。

 さてこの Royal Star、ライブではないが FIN とはやや趣を異にしている。FIN は一つの大きな蒸籠に数種類のアイテムが盛り付けられてくるが、こちらはライブディムサムと同じサイズの小さめの器で一つのアイテムごとに運ばれてくる。カートこそ走っていないが、オーダーしたものが次から次へと運ばれてくるので、雰囲気としてはかなりライブに近い。
 気になる味の方だが、FIN、Noodles よりも上をいっているような気がした。連日の中華料理で味覚的に飽きてきているという逆ハンデを差し引くと、さらにこの店の評価は上がることになる。
 蛇足ながら補足しておくと、この店はホテル経営ではなく、家賃を払って入居しているいわゆるテナント店だ。店長いわく、「味が Noodles や FIN よりいい? 我々はホテル経営の店とは気合いが違うよ」 と自信のほどを見せる。ただ、気合いのわりには、日本語メニューの料金が違っていたのはいただけない (値上げ前のもので、まだ新料金に印刷し直していないとのこと)。それでも怪しげな日本語をあやつる店員がいたり、なかなかフレンドリーな店であることは間違いないので、興味がある者は行ってみるとよいだろう。

 長くなってしまったが、今回取材した 3店を簡潔にまとめると以下のようになる (営業時間やメニューはあくまでもディムサムだけの話)。なお、チャイナタウンまで足を伸ばせば、にぎやかなライブディムサムの店が何軒かあるので、移動に時間と費用を惜しまない者はタクシーなどを利用してチャイナタウンまで行くことをおすすめする。料金的にもストリップ地区よりも安めであることはいうまでもない。

FIN
* ホテル: Mirage
* ディムサムのスタイル: 非ライブ。大きな器にまとめて数種類が一度にサーブされる。
* メニューおよび値段: ここをクリック  
* 営業時間: 金、土、日の 11:00am〜2:00pm
* 経営 : ホテルが経営
* その他: 開業したばかりのピカピカの店。テーブル、イス、装飾品などすべてにおいてかなり高級感が漂っている。中華以外に、ベトナム料理、タイ料理、日本料理などもある。

Noodles
* ホテル: Bellagio
* ディムサムのスタイル: 伝統的なライブディムサム
* メニューおよび値段: ここをクリック 
* 営業時間: 金、土、日の 11:00am〜3:00pm
* 経営 : ホテルが経営
* その他: インテリアなどはしっかりしたコンセプトに基づき上品にまとまっているが、ラスベガスのホテル経営のレストランとしては非常に狭く、カウンター席があるなど、かなり大衆食堂的な雰囲気が漂っている。

Royal Star
* ホテル: Venetian
* ディムサムのスタイル: 非ライブ。小さな器に1種類ずつサーブされる。
* メニューおよび値段: ここをクリック ( ← $3 となっているものが $4 であったりするので注意)
* 営業時間: 毎日 11:00am〜3:00pm
* 経営 : テナント
* その他: FIN ほどではないものの、そこそこ高級感があり、きれいにまとまっている。一般のダイニングセクション以外に、団体用の部屋や、「VIPルーム」 と称されるゴージャスな個室もある。

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