週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2006年 03月 08日号
和製ミュージカル 「MATSURI・祭」 がリビエラで開演
 「筋肉で音を奏でる」 をコンセプトに、日本で話題を集めている和製ミュージカル "筋肉(マッスル) ミュージカル" のラスベガス公演が、3月 1日、リビエラホテルで始まった。ラスベガスでのタイトルは "MATSURI"。

 奇抜な発想とコミカルな演出、さらには元気が出る楽しい雰囲気、その上、著名アスリートも出演するとあって、日本では 2001年の初公演以来、常にミュージカル界のトップ集団を走り続けてきたと聞く。また、2004年には横浜に専用シアターを建設するなど、その勢いはとどまるところを知らないようだ。
 そんな日本の話題作が、エンターテーメントの本場ラスベガスに乗り込んできたというので、さっそくリビエラホテルに足を運んでみた。

 まだ始まったばかりで知名度が低いためか、観客の入りは今ひとつ。それでも内容としては非常におもしろく、一般アメリカ人にもウケそうな印象を受けた。
 ミュージカルといっても明確なストーリーがあるわけではなく、基本的にはアクロバットショーに近い。供給側はこのショーをミュージカルと位置付けているようだが (特に日本国内では)、ミュージカルの定義がどうであれ、見る側、特にアメリカ人の観客はこのショーをミュージカルとは受け取っていないだろう。むしろそれは良いことで、その方が営業的にも良い結果を生むと思われる。

 ちなみに今ラスベガスでは数こそミュージカルがいくつも存在しているが、その多くは興行的に苦戦している。
 数年前の 「ノートルダムの背むし男」 の大失敗はまだ記憶に新しく、また 「ウィーウィルロックユー」 は昨秋わずか 1年で幕を閉じ、始まったばかりの 「アベニューQ」 もすでに打ち切りが決定、さらに 「マンマミア」、「ヘアスプレイ」 も定価の半額でチケットがたたき売られている有り様だ。
 そんな状況を知ってか知らずか、この MATSURI の現場における印刷物や看板などの宣伝文句の中に、ミュージカルという言葉は使われていない。ホテル側が当社あてに送ってきた広報資料の中でも、一部その言葉が使われているが、ショーの内容を説明する部分では "production show" (これまた定義があいまいだが) が使われている。

 「和製」 と聞いただけでもアメリカ人にとっては縁遠い存在で、そこに、ストーリーの存在を連想させる 「ミュージカル」 という言葉が重なったのでは、敬遠される可能性が大きい。ここは単純明快な 「コミカルな集団アクロバットショー」 という位置づけで宣伝した方がより良い結果を生むだろう。
 実際に、このショーにおける良い意味での単純明快さは抜群で、役者がしゃべる場面はほとんどなく、言葉がなくてもわかるコミカルな演出が非常に多い。したがってヒットするポテンシャルは十分にあると思われるが、いかんせん 「4月 29日までの限定公演」 という限られた条件では、その良さや知名度の浸透を図るには、いささか期間が短すぎる気がしないでもない。最低でも半年ぐらいは頑張ってもらいたいところだが、なかなかそうもいかない事情があるのだろう。

 さて細かい内容に関してだが、オープニングとエンディングは名物の "Body Slap"。これは 「筋肉で音を奏でる」 というキャッチコピーのまさに元となるパフォーマンスで、30数名の役者が一斉に、自分のももを和太鼓に見立ててピシャピシャと打ち鳴らす。
 痛々しく真っ赤に腫れ上がったももをさらに自虐的に叩き続ける役者もいるなど、やっている方にとっては真剣そのものだが、見る側にとっては奇抜さの中にもコミカルな部分も感じられ、アメリカ人のみならず日本人にとっても笑いを誘われる場面だ。

 笑いといえば、ひとりひとりの役者がピアノの鍵盤に仮装し、腕立て伏せをしながら音楽を奏でる "けんばん君" の場面では、場内が爆笑の渦に包まれる。
 また、柔道着を着て組み合う男性役者が突然タンゴを踊り出す "柔タンゴ" も愉快な演出だ。なお、その際に役者がさかんに口にする 「ヘイジュード」 という台詞は、日本人以外の観客にはまったく理解できていないように見受けられたので、もしビートルズの曲名と掛け合わせたダジャレのつもりであるならば、メロディーを付けてしゃべった方がいいかもしれない。

 その他は、体操やトランポリンの一流アスリートなどが演じるアクロバット的なパフォーマンスが中心で、跳び箱、自転車、縄跳びなどを使った出し物が印象に残る。
 女性の役者が集団で演じる部分は総じてかわいらしく、特にカラフルな傘を使った上品な踊りや皿回しの場面は日本的な美が感じられ、このショーが和製であることを改めて印象づけられる場面だ。
 参考までに出演者に関してだが、体操の池谷直樹、新体操の高星寿子、タレントの白田麗子らは出演しているが、元 「NHKの体操のお兄さん」 こと佐藤弘道は今回のラスベガス公演に来ていない。

 自転車やトランポリンなど、ソロで行なわれる部分もいくつかあるが、集団によるパフォーマンスが多いためか、このショーでは始めから終わりまで若さとパワーが全体にみなぎっている。とにかく観客を元気な気分にさせてくれるショーであることは間違いないので、カジノで負けた時にも元気になれるのかどうかは別にして、公演期間中にラスベガスを訪問する予定の者はぜひ一度行ってみることをおすすめする。特に、日本で見ることができない在ラスベガスの日本人は、「ニッポン」 全体を応援する意味でも、このショーを後方支援する意味でも、ぜひリビエラに足を運んでいただきたい。ラスベガスで日本のプレゼンスが高まることをサポートしない理由はないだろう。

 会場はリビエラホテル内の SPLASH Theatre。公演は前述の通り 3月 1日から 4月 29日まで。土曜日から木曜日が 4:00pm 開演、金曜日は 7:30pm と 10:30pm の2回。火曜日は休演。(金曜日以外はこのホテルのメインショー SPLASH が会場を使っているため早い時間帯にやらざるを得ない)
 チケットは一般席が $59.95 + Tax、最前列付近の VIP席が $69.95 + Tax、となっているが、これらはあくまでも定価であって、"Tix-4-tonight" などの半額チケットショップへ行けば半額 (+ 数ドルの手数料) で買うことができる (販売していることは確認済み)。
 運がよいことに、リビエラホテルのすぐ南側の空き地 (同ホテルと、大型アパレル店 ROSS の間にある空き地) にこの Tix-4-tonight (写真左上、クリックで拡大表示) がある。
 なお蛇足ながら、半額チケットショップでは、原則として、通常価格・通常ルートでは完売しにくいショーの当日券のみを中心に取扱っており、ランスバートン、KA、ズーマニティーなどのチケットは販売していないので、その種のチケットを目当てに行っても無駄足になる。くわしくは週刊ラスベガスニュース 426号の記事などを参照のこと。


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