週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2006年 02月 15日号
英語がわかれば楽しさ倍増、ミュージカル 「ヘアスプレイ」
 2月 6日、ピラミッド型ホテルとして知られるラクソーで、話題の人気ミュージカル 「ヘアスプレイ」 が始まった。(右写真は同ホテルと、その広告でペイントされた二階建てバス。クリックで拡大表示)
 ヘアスプレイは 2002年にニューヨーク・ブロードウェイでデビューの後、翌 2003年、最優秀作品賞など 8部門でトニー賞を受賞した人気作。もともとは 1986年に制作された映画だったが、今はミュージカル版の方が広く知られている。

 ストーリーの設定は 1962年のボルチモア (首都ワシントンに近い米国東海岸の都市) で、主人公は、人気テレビ番組に出ることを夢見る女子高生。
 そのテレビ番組のスポンサーの商品がヘアスプレイだったことからこの題名に。当時の女性の髪型は丸くて大きくふんわりしたものが多く、ヘアスプレイが欠かせなかったようだ。
 極めて明るく愉快な内容で、基本的にはコミカルなタッチのミュージカルに仕上がっているが、公民権運動が盛んだった当時の人種差別問題などもストーリーの重要な部分を成しており、歴史や社会に対する微妙なメッセージも込められている。
 ちなみに人種差別に反対する 20万人規模のいわゆる 「ワシントン大行進」 や、マーティン・ルーサー・キング牧師の 「私には夢がある」 で知られる歴史的な演説が行なわれたのは 1963年。今日のアメリカからは想像しにくいが、黒人に平等な権利を与えるべきかどうかが議論されていたのはわずか 40数年ほど前の出来事だ。このミュージカルの本質を楽しむには、そのへんの時間軸や当時の社会状況などを意識しておく必要があるだろう。

 さて実際に観ての感想だが、正直言って英語がむずかしい。ヒアリング能力のなさを反省することしきりで、設定が高校生の会話ということもあるのだろうが、くだけた表現や難解なスラングが多く、役者のジョークを理解できない場面が少なくなかった。周囲の観客が大笑いしている場面で笑えないのは悲しい限りだが、とにかくマンマミアやアベニューQ よりも英語力を必要とすることは間違いないだろう。そういう意味では多くの日本人観光客には難解で楽しみにくいミュージカルといえるかもしれないが、劇場内が爆笑に包まれる回数はアベニューQ 以上で、英語に自信がある者にとってはかなり内容の濃いミュージカルといってよさそうだ。また、最後の熱狂的なスタンディングオベーションの光景からも、このショーがいかにアメリカ人から支持されているかがうかがえる。ところで最後の場面といえば、場内に舞う紙吹雪のカタチがおもしろいので (どのようにおもしろいかは観てからのお楽しみ)、ぜひ手にとって拾ってみるとよいだろう (ただしステージ近くのセクションで舞うので、後方の座席の者は前まで出ていかないと拾えない)。

 会場は、昨年までブルーマンが行なわれていた劇場で (ブルーマンは 2005年秋からベネシアンホテルに移籍)、キャパシティーは 1526席。
 フロアの傾斜が十分にあるので、前の人の頭がじゃまになることなどないように思えたが、実際にはステージをかなり下の方向に見下ろすような位置関係になっているため、けっこうじゃまになる。
 あと気になったこととしては、座席の間隔や、ひじ掛けの幅が狭いのか、となりの人と腕がぶつかるなど、やや窮屈な印象を受けた。
 チケットは "Main 席" と呼ばれる席が $93.50、"Mezzanine 席" が $71.50。通常 Mezzanine は 2階席を意味するが、この劇場には 2階席がなく、Main 席と Mezzanine 席は同一平面上にある。つまり Mezzanine 席はただ単に後方の席と考えればよいだろう。
 チケットの手配は www.luxor.com/entertainment/hairspray.aspx で事前に可能だが、ラスベガス到着後に同ホテル内のボックスオフィスで買っても十分に間に合うと思われる。
 公演時間は火、木、土、日が 7:00pm と 10:00pm の二回、月と金が 7:00pm だけの一回。水曜日は休演。なお、4月 30日まではラスベガス開演記念として主役の女子高生の母親役をハーベイ・フィアスタインが演じてくれるので、彼 (劇の中では女性役) のファンは今のうちに観ておくとよいだろう。
 あらすじは以下の通りだが、ラスベガス版はブロードウェイ版よりも 20分ほど短く、また途中の休憩もない。その分、劇場から早く出てカジノで遊んでください、ということか。ちなみにラスベガスでは、「ナイトショーは 90分以内にする」 という暗黙の了解があり、マンマミアなどの例外を除けばほとんどのショーがそうなっている。

[あらすじ] 
 時は人種差別で世論が揺れる1962年、アメリカ東部のメリーランド州のボルチモアが舞台。
 高校生のトレイシーは太めの体形で、ヘアスプレイで固めた大きな髪型が自慢の元気いっぱいな女の子。彼女は、ダンスなどを主体とした若者向け人気テレビ番組 「Corny Collins TV Show」 と、それにレギュラー出演しているハンサムなリンク君に夢中だ。
 毎日学校から帰ると、内気な箱入り娘の親友ペニーと2人でテレビを見ながら (二人とも白人)、自分もいつかはその番組に出演することを夢見ている。
 その時期、この番組のレギュラー出演者として女王の座に君臨していた女の子の名前はアンバー。彼女の母親で番組をプロデュースしているベルマは、ゴールデンアワーに全国放送されるライブショーで、娘を優勝させることに必死だ。この親子および番組スタッフは人種差別がひどく、自分達のことばかり考えている。
 ショーのオーディションが行われることを知ったトレイシーとペニーは、テレビ局に駆けつけたものの、デブだの何だのと文句をつけられ、結局オーディションに参加することすらできなかった。
 ある日学校で知り合った黒人のシーウィードたちから斬新なダンスを教えてもらったトレイシーは、ダンスパーティーでそのダンスを披露し、番組の司会コーニーコリンズの目にとまる。それがきっかけでトレイシーはレギュラー出演者として抜擢されることに。
 その後アンバーとトレイシーは、ショーの女王になることと、リンクを恋人にすることをめぐってライバルになるが、トレイシーはアンバーの意地悪にもめげず、リンクの心を射止めてカップルになり、親友のペニーも黒人のシーウィードとカップルになる。
 そんな中、番組側が黒人差別をしていることに対して抵抗を感じたトレイシーは、黒人の仲間達をもっと出演させるために抗議行動に出るが、当時の社会常識には反していたようで警察に連行されてしまう。
 リンクによって警察から助け出された彼女は、両親やシーウィードの母親のメイベルらの力を借りて、ライブショーに実力行使で黒人の仲間達と一緒に踊って出演してしまう。そしてついにトレイシーは投票で支持を得て、みごとに優勝することに。


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