週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2006年 02月 01日号
広葉樹、針葉樹が生い茂る異色のコース 「ウィンゴルフクラブ」
 今週は、一般の観光客にとっては退屈しそうな話題だが、ラスベガスでゴルフを計画している者にとっては興味津々の話題、「ウィンゴルフクラブ」 について紹介してみたい。(右写真は 18番ホール)

 このゴルフコース、昨年春のウィンラスベガスの開業と同時にオープンしているので、すでに 9ヶ月ほどが経過しているが、そのわりには情報が少ない。「曜日や季節に関係なく 500ドル」 というグリーンフィーの高さゆえ、プレー経験者が絶対的に少ないという事情もさることながら、「ゴルフ雑誌などに書かれたくない」 (ウィン氏のポリシーを代弁してくれたプロショップスタッフの弁) というポリシーの存在も、情報が少ない理由のひとつだ。ちなみにコースレートも スロープ レート も謎に包まれたままで (というか存在しない)、USGA (全米ゴルフ協会) に査定の申請すらしていないという。

 あれこれ謎は多いものの、ロケーションだけは周知の事実で、それはもちろんウィンラスベガスの敷地内。つまり客室棟の目の前にあり、宿泊客は徒歩でアクセス可能だ。というか、宿泊者しかプレーできない。(左写真は高層階の客室から見た様子)
 このコースの前身は、かの有名なデザートインカントリークラブで、それを改良して造られたのがこのコースというわけだが、その設計者はコースデザイナー界の大御所 トム・ファジオ氏だ。
 名門デザートインをファジオ氏が改造したとなると、デザートインを知る者にとっては、どこをどのように改造したのか大いに気になるところだが、結論から先に言ってしまえば、デザートイン時代のおもかげはどこにもない。ホールの順番、池の位置、バンカー、高低差、すべてにおいて変っており、まったく別のゴルフコースと考えるべきだろう。

 デザートイン時代と最も大きく異なっている部分は、なんといっても高低差。これは、ただ単に打ち上げや打ち下ろしが増えたという意味ではなく、フェアウェーのいたるところにうねりやコブがあり、アンジュレーションに富んでいるということ。
 結果的に、総じてフラットだったデザートインに比べ、斜面からのショットが増え、それなりのテクニックが要求されるようになった。(写真ではそのことがわかりにくいが、実際にはかなりアンジュレーションがある)
 また、木が非常に多いのも特徴で、広葉樹や針葉樹がごく普通に存在していることには驚かされる。砂漠地帯ラスベガスのゴルフコースで 「木」 といえばヤシの木かサボテンのたぐいが一般的なので、この木に関しては、「かなりラスベガスらしくないコース」 といってよいだろう。
 美しさの点ではどうかというと、前半の 9ホールはやや平凡なホールも散見されるが、後半は池と木とバンカーそれにアンジュレーションが絶妙に配置された極めて非凡な美しいホールが多い。

 ではプレーする価値があるのかどうか。グリーンフィーが決して安くないので、それはだれもが気にするところだが、その答は非常にむずかしい。ゴルフに対する価値観や懐具合などによって意見が大きく分かれるからだ。
 あえて目安的なものを示唆するならば、ラスベガスのゴルフコースで何度かプレーしたことがある者はプレーしてみる価値がありそうだが、そうでない者は別のコースにしておいたがよい、といったところか。
 理由は、アップダウンや木が多いという条件は、日本では決して珍しいことではないからだ。せっかくラスベガスでプレーするならば、砂漠と一体となった広大なバンカーや、南国情緒あふれるヤシの木に囲まれたコースの方が非日常的なスリルや興奮を味わえるだろう。
 一方、ラスベガスの他のコースを知り尽くした者にとっては、日本のコースとこのコースの似て非なるところや、さらにはラスベガスにおけるこのコースの非凡なところがよくわかり、新たな発見や感動があるはずだ。
 いずれにせよ、ウィンラスベガスに宿泊していないことには予約すらできないので、他のホテルに泊ることが確定している者は、あれこれ悩むだけ時間の無駄だ。

 その他の気づいた部分をいくつか紹介しておこう。冒頭でコースレートやスロープがないことにふれたが、その理由を現場スタッフに質問してみたところ、「ここは競技用のコースではなく、ゴージャスな雰囲気を味わってもらうためのリゾートコース。コースレートなど必要ない」 とのこと。
 たしかにここのクラブハウスには、スコアを入力してハンデを算出するための端末機すら置いていない。どうやらそのへんのことはすべてウィン氏のポリシーらしく、ここでのプレーにはスポーツ感覚を持ち込んで欲しくないようだ。そういえばシャドークリーク (かつてウィン氏とファジオ氏がミラージホテル時代に手がけたコース) もそのようなポリシーだった。
 あとこれはどうでもいいようなことだが、何もかもがゴージャスなこのコースにおいて、練習場だけは非常に貧弱だ。日本ならともかく、アメリカで 10ヤード先にネットが張ってある練習場 など見たことがない。ウィン氏にいわせれば、「ここは楽しくプレーしに来るところ。練習に来るところではない」 といったところか。
 その他の部分においても、このコースの哲学というか、ヘンなこだわりが散見される。まずコース内の案内が非常に不親切ということ。どこのゴルフ場にでもある各ホールの案内板がティーグラウンドにない。「5番ホール、386ヤード、Par 4」といったあの看板だ。また、フェアウェーにグリーンまでの距離を示すものがほとんどなく、さらにスコアカードも非常に不親切で、コースレイアウトやホールごとの図解などがまったく書かれていない。
 英国の伝統的なメンバーコースなどではそういった不親切も珍しくないが、アメリカでは極めてまれだ。ようするに、「キャディーがいるからそのような案内は不要。わからないことがあったらキャディーに聞け」 ということらしい。ちなみにこのコースでは、キャディーを付けることが義務となっている。たしかにキャディーはよく働いてくれ、携帯レーザー測定器を使って旗までの距離をそのつど測ってくれる。

 ということで、案内標識やスコアカードの貧弱さにはガッカリするかもしれないが、コースの管理はすばらしく、コンデションは抜群だ。フェアウェー内もカートで走ることが許されているわりには、利用者が少ないためか、芝生はまったく痛んでいない。
 どこのホールも美しいが、圧巻はやはり 18番ホールだろう (写真右)。ゴージャスな滝付きの池に囲まれたグリーンと、フェアウェーに沿って左手に見える巨大なホテル棟とのコントラストはこのコースならではの絶景だ。ちなみにホールアウト後、 その滝の裏側 (水のすぐうしろ) を通ってクラブハウスに戻るようになっている。

 ショートホールが 5つ、ロングホールが 3つで、パーの合計は 70。ティーは 3つで、うしろからチャンピオンティー 7042yd、バックティー 6938yd、フォワードティー 6464yd となっているが、チャンピオンとバックに差がほとんど無いのはどういうことか。詳しくはその "貧弱" なスコアカードを参照のこと。
 予約はフリーダイヤル 877-321-9966 まで。グリーンフィーは前述の通り 500ドル、それにキャディーへのチップがプレーヤー1人につき 50〜100ドル必要。
 「利用者が少ないゴルフ場よりも、客室棟を増築した方が儲かる」 そんな土地の有効利用論が株主や経営陣の中から出てきているようで、このゴルフコースの運命もあと数年という噂もある。興味がある者はなるべく早い時期にラウンドした方がよいだろう。


バックナンバーリストへもどる