週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2005年 12月 14日号
閑散期の今、生き残りを賭ける新鋭マジシャン Curtis Adams
 日本ではマジックがブームらしい。観るだけでなく、やる方も人気のようで、あすのスターを夢見て頑張っているアマチュアマジシャンも多いと聞く。
 アメリカでもブームなのか、それともいつものことなのか、次から次へと出ては消えてゆくマジシャンが多いことに驚かされる。
 さて今週は、「ほとんどのショーを観てしまった」、「たまには無名のショーも観てみたい」 というリピーターや、「休演ばかりで観るべきショーがない」 というこの時期にラスベガスにやってくる訪問者のために、23才という若さでラスベガスデビュー (場所はダウンタウンのプラザホテル) を果たした異色の新鋭マジシャン Curtis Adams を紹介してみたい。

 12月中旬からクリスマスが終わるまでの時期はラスベガスにとって超閑散期。一年のうちで最も観光客が少ない時期だ。
 全米の一般的な市民は今の時期、クリスマスカードを何枚も書き、自宅の内外をライトで飾り、クリスマスプレゼントの買い出しに東奔西走するなど、なにかと忙しい。そしてクリスマスの当日は家族と神聖なる日を過ごし教会へ行く。25日まではとても旅行に出かける雰囲気ではない。
 そんな事情もあってか、この時期のラスベガスは観光客が少なく、結果的に多くのナイトショーが 2〜3週間の休みを取る。ショーのスタッフもこれを機会に故郷へ帰る。
 実際にオウ、ランスバートン、マンマミア、ズーマニティ、ラレブ、スプラッシュなど、日本人観光客になじみのあるショーの多くが休みで、The Sirens of TI などの無料ショー、そしてセリーヌディオン、エルトンジョンなどのコンサートも休演中だ。

 ではこの時期にラスベガスにやって来るとショーを楽しめないかというと、そんなことはない。無名のエンターテーナーにとっては、スター不在の今こそが集客のチャンスのようで、それなりにさまざまなナイトショーが行なわれている。
 今回紹介する Curtis Adams もそんなひとりで、クリスマス休暇など見向きもせずに孤軍奮闘している若き青年マジシャンだ。
 じつはこの Curtis Adams、すでに 10月からラスベガスのステージに立っているが、これまでの二ヶ月間は客の入りがあまり芳しくなく、早期打ち切りのうわさが立つほど苦戦を強いられているらしい。ちなみにプラザホテルとの契約は来年3月末までだが、いつ打ち切られても不思議ではないほどきびしい状況に置かれているようだ。
 そんな彼にとって、休演ショーが多い今の時期はまさにチャンスであると同時に、生き残りを賭けた正念場で、半額割引券を劇場前で配布するなど、逆境を乗り越えるべく日夜頑張っているので、マジックファンはぜひ応援に行ってあげるとよいだろう。

 気になるショーの内容についてだが、ハッキリ言ってすべてにおいてあまりパッとしない。「応援しよう」 と言っておきながら、いきなりこう書くのもヘンではあるが、やはりまだ修行が足りないのか、 観客を魅惑するテクニックに欠けているように思える。その部分は、応援することとは別に、ハッキリ伝えておく必要があるだろう。
 23才の若さにカリスマ性を求めるのは酷ではあるが、観客を惹きつける何かがないと、ショー全体が引き締まらない。努力や研究をするなりして、なんとか頑張ってもらいたい。
 ということで、いきなり厳しい評価になってしまったが、それでもユニークな独創的な部分もあるので、だまされたと思って応援しに行ってみるのも悪くないだろう。ちなみにそのユニークなところとは、従来のマジシャンとはまったく異なるタイプという部分で、宣伝文句に "The Rock Concert of Magic Shows" などとあるように、とてもマジシャンとは思えない風貌や雰囲気が特徴だ。それは服装から来る印象なのかもしれないが、いずれにせよ普通ではない。
 ランスバートンやリックトーマスのように蝶ネクタイばかりがマジシャンの衣装ではないが、これほどラフな格好のマジシャンは珍しい。カジュアルな服装で知られるカッパーフィールドでもこんな衣装で出てくることはなく、とにかく薄汚れたボロボロのジーンズとジャージ姿は良くも悪しくも印象的だ。(左の写真は、自分の舌を引き抜くマジックを演じているところだが、この衣装はまだまともな方)
 もちろんこの衣装には賛否両論あるだろうが(圧倒的に否が多そうだが)、競争が激しいマジシャンの世界で生き残っていくためには、そういった部分を自分の特徴として売り込んでいくことも重要かもしれない。

 マジックそのものについてだが、ロックをバックに踊りながら自分自身の実像と影を絶妙に組み合わせたマジックは、彼のキャラクターを生かしたユニークなマジックとしておもしろい。金属板を通り抜けるマジック (写真右) も興味を惹く。
 あとはどこかで見かけたことがあるような出し物が多いが、それはどのマジシャンにも言えることなので仕方がないといったところか。

 あまり細かく内容を書いてしまうと楽しみが減ってしまうので、これ以上は控えるが、すでに述べた通り、個々の演出がどことなくぎこちなく、そのマイナス部分だけを取り上げられると短命に終わってしまう可能性が高い。
 一方、ボロボロのジーンズとジャージ姿といったマジシャンらしからぬ彼独特のキャラクターをユニークなセールスポイントとしてプラスに解釈してくれる者が多ければ、ブレークする可能性もある。が、現時点での実力を素直に直視する限り、専用会場を持てるようなスターマジシャンになる可能性はほとんどないと考えてよいのではないか。
 ちなみに 12月 11日の取材時の観客は 65人だった。会場自体が狭いとはいえ (キャパシティーは約 300席) この数字はいささか寂しい。取材に応じてくれたアシスタントプロデューサーのジェニファーさんの表情もどことなく元気がなかったが、やはり終演が近いのか…。
 いずれにせよ、場末風の会場で孤軍奮闘している無名マジシャンを観ていると、著名ショーにはない新たな発見や楽しみを感じたりするものだ。興味がある者はぜひ行ってみるとよいだろう。
 場所はダウンタウンのプラザホテル内の劇場 ザ・プラザショールーム。月曜日を除く毎日 7:00pm から正味 60分のショーで、料金は $25 (税別)。劇場の入口前やボックスオフィスで半額になる割引券を配っていたりするので、それを使うとよい。


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