週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2005年 11月 02日号
二階建バス登場、観光には○ だが、移動手段としては×
 10月 27日、ストリップ大通りに二階建バス "DEUCE" が登場した。(写真右、クリックで拡大表示)

 運営は RTC (Regional Transportation Commission) で、これまでラスベガス一帯で "CAT" (Citizens Area Transit) ブランドのバスを運行してきた公営組織だ。
 RTC は近年、ラスベガスの北地区で新型車両を使った高速バス "MAX" (Metropolitan Area Express) の運行を始めるなど、公営組織としてはいろいろ積極的に活動しているようで、今回の DEUCE は CAT、MAX に次ぐ第3のブランドということになる。 ( CATの写真  MAX の写真

 名前の DEUCE は、テニス用語のデュースと同じだが、一般的にはトランプの2のカード、サイコロの2の目、ポーカーのワンペアなどのことを指し、ラスベガスでは非常に身近な言葉だ。
 二階建ての [2] を暗示する単語にカジノ用語を採用するあたりは、いかにもラスベガスらしいうまいネーミングといってよいだろう。また、このデュースには 2ドル紙幣 (現在は一般的には流通していない) という意味もあるが、偶然なのか運賃も 2ドルとなっている。

 いくらうまいネーミングといっても、長年この路線を走っていたバスの名称は CAT。いきなり DEUCE になってしまったのでは混乱が起きそうだ。それでも RTC 側は、「ストリップ路線の名称は今後すべて DEUCE とし、CAT は一般市民用の郊外路線専用のブランドとする。二階建て車両を郊外路線にも使うことはあっても、ストリップ路線を CAT と呼ぶことはない。DEUCE ブランドでこの二階建てバスを世界に売り込みたい」 としている。

 ちなみに、従来の CAT はその名称のみならず、路線番号も広く定着しており、[ストリップの各バス停に停車するの路線は CAT301]、[いくつかのバス停を飛ばす急行が CAT302] として、観光ガイドブックなどにも広く紹介されている。
 それが今回の DEUCE のデビューによって消滅し、もはやストリップで CAT を見かけることはなくなってしまったわけだが (ただし、ストリップを横切って走る路線 CAT105 が、マンダレイベイ付近などストリップ南部の一部の区間を走ることは今後もある)、その新たな DEUCE にはなぜか急行がない。
 つまり DEUCE は CAT301 だけを引き継ぎ、CAT302 は無視してしまったことになる。これがかなり利便性を低下させており、ちなみにストリップの南地区 (マンダレイベイホテル付近) からダウンタウンまで、道が比較的すいている午前中でも 1時間はかかる。夜間の混雑時なら 1時間半以上が当たり前だ。ベラージオなどがある中央地区からでも夜間は 1時間以上かかるので、ダウンタウンの電飾アーケード (フリーモントエクスペリエンス) を見に行く際などは十分注意する必要がある。

 ではなぜそれほど時間がかかってしまうのか。それは道路の渋滞もさることながら、利用者の乗降に時間が取られているからだ。乗り込む客が多い場合、5分以上停車することも珍しくない。
 これは運賃の支払いなどに時間がかかってしまうためだが、その最大の原因は釣り銭がないことにつきる。(左写真は運転席脇にある運賃箱。"Exact Change Only" と書かれていることがわかる)
 1回 2ドル、1日乗り放題券が5ドル。その料金設定はよいとして、釣り銭がないためピッタリの小銭を持っていない者はそこで必ず運転手に質問したり不満をぶつけることになる。ちなみに 10ドル紙幣しか持っていない場合は、釣り銭を放棄するか、5ドルの 1日券を 2枚買うしかない。20ドル紙幣なら 4枚買だ。だまってそんなに買う者がいるわけもなく、そこで口論となり時間がかかってしまう。結局、小銭を持たない多くの者はステップを降りて去っていく。時間だけが無駄になる。
 この釣り銭の問題は CAT 時代にも言えたことだが、二階建てということもあり、物珍しさからか利用者が増え、状況をさらに悪化させているようだ。なお、釣り銭が用意されていない理由は、現金の取り扱いが複雑になると治安や不正防止の問題が浮上してくるからだとか。そこにはいかにもアメリカらしい性悪説的な考え方があり、こればかりは簡単には変えられないようだ。

 釣り銭の問題とは別に、バス停が多すぎることも利便性を低下させている。どこを歩いていてもすぐ近くにバス停が見つかることは便利で、また、降りる場所を間違えてもすぐに次のバス停が来るというメリットもあるが、あまり多すぎるのも問題だろう。
 ちなみにバス停の数は南行きと北行き、つまり道路の両側で合わせて 70以上あり、たとえばマンダレイベイから電飾アーケードへ行く場合は 28個目のバス停で降りることになる。一区間 2分平均でも約1時間だ。渋滞時に2時間かかってしまうことも納得できるだろう。

 利便性の悪さばかりを指摘してしまったが、観光という意味では利用価値がありそうだ。やはりなんといっても 2階席からの景色はすばらしい。特に 最前列 は視界が抜群で、世界に冠たる目抜き通りザ・ストリップを一通り見たいという者には最適だ (左写真は 2階席最前列から撮影)。
 なお、最前列の確保は、時間さえ余裕があればむずかしいことではない。ストリップの南端と北端の終点では乗客がほとんどいないため、終点まで行って始発に改めて乗り直せばいいだけのことだ。もちろん何回乗り降りしても、一日券を買っておけば新たに料金を支払う必要はない。
 ちなみに終点・始発とは、南側が SSTT ( South Strip Transfer Terminal ) とよばれるバス基地 で、マンダレイベイから 2km ほど南に行った地点、北側は DTS (Downtown Transportation Center) と呼ばれるバス基地 で、ダウンタウンの電飾アーケード街から 300m ほど北に行った場所にある。

 バスの車体の色は、おとなしい感じのメタリックゴールド。ロンドンの赤い2階建てバスと比較するまでもなく、何ごとにおいても派手なラスベガスとしてはいささか地味だ。だれがどう考えても真っ赤、もしくは真っ黄色にすべきだろう。
 なお、今後は広告主を募って派手なボディーにすることを考えているようで、数台ではあるが現在すでに広告車両が登場している (写真右)。ただ、派手になることは大いにかまわないが、窓ガラスにもペイントされるため、車内から景色を撮影する際には多少影響が出そうだ。

 運航は 24時間。運転間隔はピーク時 (おおむね正午から午後 10時半まで) が 6分間隔、深夜から早朝が 15分間隔、午前中が 7分間隔などとなっている。
 下車の際は、今までの CATの車両ではひもを引くようになっていたが、この DEUCE では黄色いボタン を押して運転手に知らせるようになっており、そのボタンを押すと、正面上部のディスプレイに "STOP REQUESTED" と表示される。
 移動手段としては時間がかかりすぎるが、初めてラスベガスを訪れる者にはぜひおすすめだ。一度は乗ってみても損はないだろう。

 なお余談になるが、今年の6月、ほんのわずかな期間だけ、屋根がないオープンデッキ型の二階建てバスがストリップ地区を走っていたことがある (写真左上)。RTC ではなく純粋な民間企業が新ビジネスとして参入し、テスト的に運航していたものだが、許認可などさまざまな問題に直面し、結局テスト運航だけで終わってしまった。夏のきびしい猛暑や冬の夜間の寒さを考えるとラスベガスで屋根無しバスは問題が少なくないが、今の DEUCE 以上に目立っていたので (乗客が屋根から奇声を上げたりするので)、観光資産的な価値を考えると実現しなかったのは非常に惜しまれる。

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