週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2005年 09月 28日号
ハリケーン災害、ラスベガス経済にはプラス要因?
 相次ぐ 2つのハリケーン。ニューオリンズ一帯は壊滅的な被害を受けたが、ラスベガスとの距離は約3000 km。さすがにこれだけ離れているとラスベガスでは微風すら吹かず、災害としての直接的な影響は何もない。
 しかし、その後の影響という意味では、人的にも経済的にもラスベガスは全米の "非被災地" の中で最もハリケーンの影響を受ける都市となるらしい。多くのエコノミストや専門家はそう分析している。理由は2つ、人口の流入とカジノ業界の被災だ。

 ニューオリンズ周辺は毎年ハリケーンがいくつも通過している。竜巻災害も少なくない。今回のハリケーンで自然災害の恐ろしさを改めて知らされた被災者の一部は、他の都市への移住を考え始めているという。そこで注目されるのが彼らの移住先。
 なにやら人気はラスベガスおよびそのすぐとなりのアリゾナ州フェニックスに集まっているようだ。ハリケーンや竜巻の心配がなく、ロサンゼルスやサンフランシスコに比べ地震のリスクが低いうえ、住宅事情や雇用事情が非常によいから、というのがその理由らしい。

 カジノ業界も今回のハリケーン災害とは無縁ではない。無縁どころか大変な影響を受けている。じつは、日本ではあまり知られていないが、ニューオリンズ一帯のメキシコ湾周辺地域は、ラスベガス、東海岸のアトランティックシティーに次ぐ全米第3のカジノ地帯で、特にニューオリンズのとなり町ビロクシは、MGM Mirage 社や Harrah's 社などそうそうたる企業が大型カジノを持つ一大カジノ都市だ。それが完全に壊滅してしまったのである。

 ニューオリンズの中心街などに比べ被災状況が日本に詳しく伝えられていないようだが、ビロクシの被害は半端ではない。ニューオリンズの市内は浸水こそしたものの、大きな建物が倒壊するような被害はあまりなかったようだが、ビロクシでは事情が大きく異なった。なぜか。
 理由は簡単だ。現地の規則により、カジノは市民が住む内陸部ではなくミシシッピ川やメキシコ湾岸に沿った水辺に建てなければならないことになっていたためだ。
 ようするにリバーボートのような水上カジノがほとんどというわけだが、堤防よりも川や海側に存在していたのだから大型ハリケーンが来たらひとたまりもない。
 しっかりとした基礎の上に建てられていた MGM Mirage 社の Beau Rivage ホテルだけは姿をとどめているが、それでも低層階は浸水しており、結局どこのカジノホテルもまだ営業再開のメドは立っていない。
 全カジノが営業不能という意味では結果としての被害状況はどこも同じだが、気の毒さが際立っているのはなんといっても今月にオープンを予定していた 300部屋を誇る水上カジノホテル Hard Rock Biloxi だろう。開業セレモニーの準備が進められていたところをハリケーンに襲われ完全に消えてしまった。消えたという表現は少々大げさかもしれないが、修理で直るというレベルではなく、ゼロからの建て直しが検討されるほどの壊滅的な状況だ。

 ビロクシの消滅を伝える日本語CNNニュース ← クリック

 そんな状況にあるビロクシでは多くの市民が職を失ってしまったわけだが、現地のカジノ運営企業の多くはラスベガスにもカジノを持っているため、ある程度の人数であれば社内的な人事異動で彼らの職を確保できるという。幸いラスベガスは活況を呈しており、かなり受け入れ余力があるようだ。
 すんなり異動が実現していないカジノ従業員も、彼らがこれまでの職歴や経験を生かそうと考えるのは当然のことで、彼らの多くがラスベガスに職を求めて移動するであろうことは想像に難くない。

 このようにニューオリンズ一帯からラスベガスに大移動が始まろうとしているわけだが、早くもその影響と思われるようなデータも出始めている。それはアパートの賃貸料やコンドミニアムなどの不動産市況で、ここ数年上昇を続けてきたそれら価格は最近やっと沈静化してきていたが、それがハリケーン災害以降、再び上昇トレンドに入っているという。別の要因によるものかもしれないが非常に興味深い。
 人口の流入による家賃の上昇は、借りる側にとっては歓迎できないことではあるが、ラスベガス全体の経済からするとプラス要因の方が大きいだろう。
 また人口の流入そのものも、学校や病院などの増設、さらには犯罪の増加に備えた警察官の増強など公的な負担が増加し、また、失業率の上昇などのマイナス要因もいくつかあるが、広い分野での需要の拡大が期待されるなど、全体としてはプラス要因の方がはるかに大きそうだ。
 ちなみに、ハリケーン災害以前から決まっていたことではあるが、警察官の増強などの費用を捻出するために、まもなく消費税が 7.5% から 7.75% に上がることになっている。それらの痛みも、人口流出による過疎化に悩む都市に比べると大した問題ではないだろう。

 災害に伴うガソリン価格の高騰で観光客の足が遠のくといったマイナス要因、コンベンション都市ニューオリンズからのコンベンション開催のラスベガス移転というプラス要因など、さまざまな影響が議論されているが、人口増加という経済の基本部分でのプラス要因はやはり絶大だ。
 被災者や災害復興に努力をしている人たちには大変不謹慎かつ失礼な表現かもしれないが、今回のハリケーン災害はどう考えてもラスベガスにはプラス要因に働くだろう。

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