週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2005年 06月 29日号
ラスベガスと運命共同体のフーバーダムへ行ってみよう!
 毎年この時期になるとフーバーダムが一気ににぎわいを見せ始める。週末はもちろんのこと、平日でもその混雑ぶりは半端ではない。
 かつて国力を誇示する象徴的な建造物だったため独立記念日(7月4日) が近づくとアメリカ市民はこのダムの存在を思い出すのか、はたまた小中学校が夏休みに入ったため家族連れが急増するのか、それともミード湖でのウォータースポーツの季節がやって来たためついでに立ち寄る者が多いのか、とにかくこの時期、フーバーダムは全米からの見学者で活気づく。(写真右上: ダムの上流側がミード湖、下流側がコロラド川。 写真左下: ダムの上辺を走る道路と観光客。クリックで拡大表示)

 日本人観光客にとってフーバーダムはグランドキャニオンやデスバレーほどはなじみが無く、実際に訪問者の数も少ないが、アメリカ人にとっては、「ラスベガス近郊の観光地 = フーバーダム」 という図式が出来上がっているのか、「冬期でもラスベガスのいかなる人気ナイトショーよりも集客数が多い」 (現場スタッフ) というほどの人気ぶりだ。ちなみに今の時期は冬期の倍以上の人出があるという。
 デスバレーなどの観光スポットに比べ圧倒的に近いという理由もあるが (渋滞がなければホテル街から車で片道 50分)、何十年も前から存在するこの建造物にそれだけの数の人が集まるということは、やはりアメリカ人にとってこのダムには何か特別な思い入れがあるのだろう。とにかく現場の混雑ぶりを見ていると、このダムの偉大さを改めて思い知らされる。
 それほどの人気観光スポットでありながら、過去9年間、この週刊ラスベガスニュースでは一度も取り上げてこなかったので、今回改めて取材してみた。

 フーバーダムは技術的にも政治的にも歴史的にもアメリカにとって大変重要な意味を持つ建造物で、今でもその存在感はまったく衰えていない。もちろん現役の水力発電所としても稼働している。
 高さ 726フィート(約221m) という規模もさることながら、注目はなんといってもその建設時期だろう。
 着工 1931年 (昭和6年)、完成 1935年 (同10年) にはだれもが驚かされる。まだ世界中が貧しかったその時期に、これだけのものを完成させた当時のアメリカという国の力がいかに突出していたかがうかがえるが、アメリカにとってはフーバーダムそのものよりも、圧倒的な技術力の誇示とその延長線上に存在する政治的、軍事的な意味の方が大きかったのかもしれない。

 フーバーダムが与えた影響力は世界に対してだけではない。ローカル的にもその存在意義は計り知れず、このダムの出現は地元ラスベガスの歴史も大きく変えた。
 膨大な数の建設労働者たちが毎晩ラスベガスで遊ぶようになり町は栄え、完成後も豊富な電力の元でカジノホテルを始めとする新しいビジネスが次々と誕生した (ダムの完成後、電力の本格的な供給が始まるまでには数年を要したが)。もしこのダムが存在していなければ、「光の洪水」 も今日のラスベガスの繁栄もなかったにちがいない。
 ところで洪水といえば、実はこのダム、もともとの建設目的は発電ではなく、南カリフォルニア地区の洪水対策や農地への水の供給など治水にあった。しかしこのことはあまり知られていない。
 また、「現在のラスベガスの電力はすべてフーバーダムでまかなわれている」 と誤解している人も多いようだが、それも間違いだ。細かい数字をあげていると長くなるのでそれは省略するが、今日のラスベガスのフーバーダム依存度は多い時でもせいぜい 10%程度で、通常はそれ以下。つまり消費量の大部分は州内外の複数の火力発電所にたよっている。それだけラスベガスは大都市になってしまったということだろう。
 また、フーバーダムにとっても供給先としてのラスベガスは比率的にはそれほど高くなく (多くても発電量の4分の1)、発電量のかなりの部分をロサンゼルス地区やアリゾナ州に送電している。

 ということでラスベガスとフーバーダムの関係は電力の部分においてはかなり薄れてきているものの、このダムを見たくてラスベガスにやってくる観光客が非常に多いわけで、経済的には今も昔もラスベガスにとって無くてはならない存在であることに違いはない。また、今ラスベガスは水不足に悩まされており、水供給源としてのフーバーダム (によって作られたミード湖) の重要性は年々高まるばかりで、まさに運命共同体といってよいだろう。
 ちなみにこのダムはネバダ州とアリゾナ州にまたがっているが、国が管轄する The Bureau of Reclamation という組織が管理運営しており、その運営経費は電力の販売でまかなわれている。
 電力といえば、「フーバーダムがあるおかげでラスベガスの電気代は安い」 と思っている人も多いようだが、それはまったくの誤りだ。現在一般家庭の電力料金 (Nevada Power 社) は、契約形態などによって多少異なるが、1キロワットアワー当たり 8.7セント (税金や調整金などは除く) で、これは全米の平均的な水準かやや高い程度で安いわけではない。さらに海がないネバダ州では原子力発電に依存できないため (大量の冷却水を必要とするため内陸部での原子力発電はむずかしいとされる)、昨今の化石燃料の高騰を受け、この 10月から値上げされることがほぼ決まっており、全米平均よりもかなり高くなる可能性が出てきている。夜を彩るネオンの洪水もタダ同然というわけではないことを覚えておこう。

 たかがフーバーダム、されどフーバーダム。山岳地形が多く、ダム自体が珍しくない日本からの観光客にとってはあまり興味深い場所ではないかもしれないが、あらゆる点で非常に重要な意味を持つ建造物だけに、アメリカのことをなんでも知りたいという者はぜひ足を運んでみるとよいだろう。
 さて、行き方や現場での見学手順だが、まずダムに到着する直前に車両検問がある。テロリストによる破壊行為から守るためのものだが、こんなところからもこのダムが米国を象徴する偉大なる建造物であることがうかがえる。
 911テロをきっかけに始まったこの検問、テロ後しばらくはすべての車両がチェックされていたが、今では大型車両や何か特別大きな物を搭載していない限り内部までチェックされることはまずない。

 ダムに到着すると一番手前に駐車場があるので左折する形でそこに車を入れる (レンタカーで行くことを前提に説明)。駐車場代は1台 $5。この季節、正午すぎには満車になることが多いとのことなので、できれば午前中に行くようにしたい。
 車を置いたら、エレベーターで一番下の階に降り、あとは道なりに進む。資料館を兼ねた建物 (Tour Center) の中に入り、そこで料金を支払う。一般 $10、62才以上のシニア $8、7〜16才の子供 $5、6才以下無料。この料金には小劇場での 15分間のスライド説明およびダム内部に降りていくためのエレベーター代、ガイド代などが含まれている。
 なお、ここでも手荷物検査がある。リュックサックなどの大きな荷物は検査を受ける受けないにかかわらず持ち込めないばかりか、ロッカーもなく、駐車場に戻って車内に置いてくるしかないので注意が必要だ。
 そのセキュリティーチェックを終えると、15分間のスライドショー、そしてそのあとにダム内に作られたエレベーターで発電施設 (写真左上) まで下りていくことになる。
 発電施設を見学したあとは地上に出て、ダムの上部から下流側を見下ろしたり (写真右下)、ギフトショップなど散策すればよいだろう。

 レンタカーでの行き方は、ストリップ地区から Flamingo 通りや Tropicana 通りを西へ数百メートル進み、高速 15号線の南行きへ乗る。数分走ると現れる高速 215号線とのジャンクションで、その 215号線の東行きに乗り約 15分走ると、その 215号線が一般道になったところで高速 93/95 号線とのジャンクション (現在工事中で渋滞している可能性あり) にぶつかる。その 93/95号線の南行きに乗り、そこから約 12マイル (約 10分) 走ると途中から一般道になり Buchanan Blvd. という道との交差点 (信号あり) に出くわすのでそこを左折。あとは道なりに約 10分進むと検問所、そしてそのすぐあとにダムが見えてくる。混んでいなければホテル街から 50分で行けるが、午後になるとダムの近くでかなり渋滞する可能性が高い。
 なお、レンタカーを運転できないという者は、宿泊ホテルのコンシアージなどにツアーを紹介してもらうとよいだろう。$40〜$50 前後のツアーをいくつか紹介してくれるはずだ (予約までしてもらった際はチップを忘れずに)。ちなみにそれらツアーの多くは行きと帰りのバス代だけで、現地でのエレベーター代は含まれていないので、発電施設まで見たい者は現場で各自追加でチケットを買う必要がある。

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