週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2005年 06月 22日号
今が旬のアンテロープキャニオンと、巨大蛇行ホースシューベンド
 さまざまな色に変化する岩肌と、幻想的な光で知られるアンテロープキャニオン (写真右、クリックで拡大表示)。
 ラスベガスからかなり遠いものの (車で片道 5〜7時間)、グランドキャニオンやモニュメントバレーを見てしまったリピーターの間では人気が高い。
 実はこの観光地、野菜のように "旬" がある。天候や気温の最適時期のことではない。太陽光線の角度のことで、太陽の南中時、つまり高度が最も高くなる夏至の時期が旬というわけだ。
 そんな旬のアンテロープキャニオンと、巨大蛇行によって形成された断崖絶壁ホースシューベンドを取材した。

 キャニオンという名称から谷や渓谷をイメージしてしまうが、ここアンテロープは 「洞窟」 と表現した方がよいかもしれない。
 といっても、鍾乳洞のように完全に地底に隠れた深い洞窟ではなく、地表近くにある狭い空間で、その上部にあるわずかなすき間から、微妙な角度で太陽光線が内部まで差し込んで来る。
 その光こそが、このアンテロープキャニオンの主役で、太陽の高度が高い時期ほど洞窟の底まで光が届きやすく美しいというわけだ。
 したがって、"時期の旬" だけでなく "時間帯の旬" というものもある。それはもちろん太陽が南中する正午前後ということになるが、厳密にいえば、このアンテロープキャニオンは現地の時間帯の中心地 (西経 105度の地点。日本でいうところの兵庫県明石市) よりも西側へ経度で約 6.5度ずれているため、南中は 12:26pm で、また今の時期は夏時間が採用されていることから 1:26pm が旬の時間帯ということになる。
 もっとも、そこまで厳密に時間帯を気にする必要はない。洞窟内に存在するすべてのすき間が真上を向いているわけではなく、少し太陽が傾いて来てからの方が光線が差し込みやすい穴や割れ目もあるからだ。したがって訪問時の目安としては、「夏至に近い時期の昼」 程度を目標にすればよいだろう。うまく条件がそろえば、右下の写真のように足元まで光が届く光景に遭遇できる。

 さて、このアンテロープキャニオンには "Upper" と "Lower" と称する 2つの洞窟がある。それぞれ似て非なるものがあり、進入料も別々に徴収される。ちなみにここまでの3枚の写真は上から順に Lower、Upper、Upper、そして左下の写真が Lower で撮影されたものだ。
 Upper はその名が示す通り、Lower よりもやや上流に位置しており、Lower は下流ということになる。
 上流、下流と表現したが、この川に水は流れていない。周辺は砂漠地帯で、見た目は やや低くなった単なる荒野 だ。ごくまれに夕立などが降った際に鉄砲水が流れ込み川になる。その激しい水流によって浸食されて出来たのがこのアンテロープキャニオンというわけだが、さて、Upper と Lower、どちらを訪問すべきか。

 両者の洞窟はわずか数キロメートルしか離れていないので (それぞれの駐車場や料金所がある位置はさらに近く、わずか 1キロ程度)、日程的に余裕がない者以外は両方を訪れるべきだろう。
 もしどちらか一方しか観ることができない場合は以下の客観情報を目安に各自で判断してもらうしかないが、一般的に男性は Lower の方を好む傾向にあり、女性は意見が半々に別れるといった感じだが、ラスベガス大全としては男女を問わず、特に足が悪いなど身体的なハンディがない限り Lower をおすすめしたい。理由は、探検気分を味わえ単純に楽しいからだ。

Upper Antelope Canyon
 全長はわずか 150メートルほどで、やや物足りなさも残るが、歩行する場所の幅は広く、だれもが気軽に訪れることができる。結果的に Lower に比べ訪問者が多く、ほとんどの観光客はこちらを訪れているようだ。
 Upper と Lower の最大の違いは、進入口の様子で、こちら Upper は割れた岩の間を水平に入って行くようになっているのに対して (つまり地面と同じ高さの位置を水平に進む)、Lower では、地下に降りていくようなカタチで進入する。 Upper の進入口Lower の進入口 ←クリックで写真
 料金は駐車場がある場所へ進入するのに一人 $6、改造四輪駆動車 による洞窟までの送迎とガイド料が一人 $15で合計 $21 ということになるが、これはあくまでもレンタカーで現場へ行った場合の話であって、近隣の町 Page からのツアーになるとさらに高くなる。

Lower Antelope Canyon
 全長は Upper の約 3倍あり、総じて歩行する場所の幅が狭く、また上り下りも激しい。結果的に、見学というよりも探検といった感じになりやすく、アクティブな人には好まれるが、そうでない女性などには敬遠されることも。
 急斜面には 階段が設置されている ので、登山のような特別な技術は必要としないが、両手はあいていた方がよいので、女性はハンドバッグなどを持ち込まない方がよい (駐車場の車内に置いておけばよい)。服装もスカートは不適で、シューズもかなり汚れたり傷が付いたりするので、はき慣れた古いスニーカーなどが好ましい。
 料金はひとりにつき入場料 $12.50 と、Navajo Nation Permit という名目で $6 が徴収されるので合計 $18.50。ガイドは洞窟の進入口 (駐車場からわずか 100mの地点) まで案内してくれるだけなので、洞窟の中では自由行動になる。
 Upper も Lower も内部は暗いので、写真撮影には三脚が必要だが、この Lower は両手があいている必要があるので、三脚を持ち込むことにはためらいもある。が、手ブレのないきれいな写真を撮りたければ持ち込むしかない。慎重に行動すれば片手でもなんとか行動できる。

 なお、どちらも周辺地域で雨が降った場合、鉄砲水が発生し非常に危険なので、現場が晴れていても上流で雷雨などが発生しそうな場合は全面閉鎖となる。実際に鉄砲水で一度に 11人が命を落とすという大惨事も発生しており、その人たちの名前を刻した碑が Lower の入口近くに立てられている。
 参考までに、この地は先住インディアン・ナバホ族が統治するいわゆる インディアン居住区 で、通常のアメリカ合衆国の地域とは行政などが異なる。アンテロープキャニオンのガイドもすべてナバホ族の人たちだ。

 さて、アンテロープキャニオンまで行ったら忘れてはならないのがグランドキャニオン上流地区の最大の名所、ホースシューベンド (Horseshoe Bend) だ。車で 10分と離れていない場所にあるので必ず訪れるようにしたい。
 その名の通り馬蹄形に曲がった地形だが、これがとにかくすごい。コロラド川が大きく蛇行し、そのカーブの外側が鋭く浸食されほぼ垂直に切り立つ断崖絶壁が形成されている。
 右の写真はその断崖絶壁から撮影されたものなので、その絶壁自体は見て取れないが、とにかく壮絶で、ちなみにその右写真をクリックし拡大表示させた画面の右上の川の中にわずかに白く見える2つの点が川下りをしているボートだ。いかに巨大な場所であるかがうかがえる。

 一歩まちがえば数百メートル垂直に転落しかねない危険な場所だが、現場に手すりなどまったくないところがなんともアメリカらしい。日本ならば管轄当局が最低でも3メートルほど手前に手すりを設けてしまうことだろう。工業製品の不具合ではすぐに訴訟問題に発展するアメリカだが、大自然はそのまま保存しておきたいという考えがあるのか、転落してもすべては自己責任のようだ。
 よほどの度胸がない限り、絶壁のエッジまでは立って近づくことができないので、馬蹄形の川の様子を完全に見たい場合は左の写真のように腹這いになって身を乗り出すしかない。
 なお、ここへ行くには駐車場から砂漠の中を約 15分ほど歩かなければならないが、こちらはインディアン居住区でも国立公園でもないので入場料などは取られない。
 ちなみにここにも "旬の時間帯" がある。できれば午前中に訪れるようにしたい。理由は、西方向を向いて見る景色のため、午後からは逆光となり、ほとんどすべての景観が暗く見えてしまうからだ。

 さて気になる交通手段だが、残念ながら選択肢はあまりない。大手旅行代理店などがこの地への訪問を含んだパッケージツアーを販売しているが、その種のツアーに参加する以外は、原則としてレンタカーということになる。もしくは運転手と車両をチャーターする形でツアーを組んでもらうしかないが、日本語ガイドが付く日帰りの合法的なツアーは存在しない。(「合法」 とは、営業用として登録された車両で、営業用の保険に加入し、法令に従った運行をするツアーのこと。存在しない理由は、このページの最後を参照のこと)
 したがって、レンタカー利用を前提に説明すると、アンテロープキャニオンもホースシューベンドもアリゾナ州の最北端の町 Page にあり、ラスベガスからの所要時間はグランドキャニオン経由の南回りで約 7時間。ザイオン経由の北回りではやや距離が短くなるものの、道路事情などの条件から (制限速度が低く設定されている場所が多い)、やはり 5〜6時間はかかってしまう。北回りで制限速度を無視してノンストップで走れば 5時間以下も不可能ではないが、あまり現実的ではないだろう。
 道順はラスベガスのコンビニなどで市販されている地図を見れば簡単にわかる。Page まで行ったら 98号線と 89号線の交差点を地図で探す。アンテロープキャニオンはそこから 98号線を東方向に 5マイル進むと右手に Upper の駐車場と料金所のブースが見える。Lower はその 5マイル地点を横切る細い道を左折して 0.7マイル先の左側。
 ホースシューベンドは、98号線と 89号線の交差点から 89号線を南方向へ 1.5マイル行った地点の右手。駐車場に車を置き、そこから徒歩 15分。

 
【合法ツアーが存在しない理由】

 どこをどう探しても、「合法的な日帰りの日本語ガイド付きアンテロープツアー(ラスベガス発)」 は存在しなかった。その理由は:

法令で定められた運行基準では、ひとりの運転手があの距離を日帰りで運転することは不可能。
(一日に運転可能な正味の運転時間、早朝職場を離れて任務についてから、運行が終わり深夜解放されるまでのトータル拘束時間、運行途中の休憩時間など、厳しく規定されている)

需要が少ないため、参加者が一組 (つまり一般的には二名様) というケースが多く、その人数では合法車両を使って常識的な価格(たとえば、1人 300ドル前後) での催行は不可能。
(営業用の許可を取得した車両、一般的には十数人乗りのフォードのバンなど、では、燃費の悪さと燃料費の高騰で、ガソリン代だけでも往復 200ドル以上してしまい、そこに規定の数の運転手を乗せていたのでは、絶対に採算が取れない。特に強引に日帰りを目指すとなると、制限速度を大きく超えた速度で走らざるを得ず、空気抵抗が大きなバンではさらに燃費効率が激減し、ガソリン代がかかってしまう)

常識的な範囲の運賃では、法令で定められている事故保険に加入できない。営業許可を取った営業車両には、それなりの保険 (個人の車両とは異なる営業用の保険)を掛けなければならないことになっており、その保険の掛け金はべらぼうに高く、アンテロープキャニオンの需要ではそれをまかなえない。月に 10回以下の催行では (実際にはそんなに需要がない)、単純に計算すると一回の催行で保険の掛け金だけでも数百ドルの負担になってしまう。

 以上の理由から、日本語サイトなどで広く販売されている日本語ガイド付きアンテロープキャニオン日帰りツアーはすべて違法ツアー、つまり日本で言うところの白タク (営業用の緑ナンバーではなく、自家用車用の白いナンバーでこっそり運行してしまっているタクシー) と同じ形態で行なわれているものばかりで、残念ながらラスベガス大全では読者に紹介できる合法ツアーを探し出すことができていない。また当社の調査だけではなく、実際にその種のツアーに参加した読者の方々からも、「自家用車だった」、「運転手が1人でほとんど休みなく全部運転したので日帰りができた」 などの報告を受けており、やはり違法を裏付けるツアーしか存在しないようで、読者からも合法ツアーの存在の報告を受けたことは一度もない。
 なお、合法ツアーかどうかは、催行会社名、営業車両登録番号などを、その取次会社 (「取り次ぎ会社」 と 「催行会社」 はまったく別。「取り次ぎ会社」 とは、インターネットなどでそのツアーを宣伝し予約を取り次いでいる会社のこと) にたずねれば教えてもらえるはずだが、もちろん合法の場合しか教えてもらえないので、多くの場合、教えてもらえないか、架空の会社名などを言ってくる。
 なお、日本の大手旅行代理店の 「大自然○○」 などといったたぐいのパッケージツアー、つまり日米間の往復航空券、ラスベガスのホテル、そしてさらにアンテロープを含めた大自然観光地を周遊するツアーが込みになったツアーでは、スポット的に現地で募集するオプショナルツアーとは異なり、ある程度の参加人数が見込めるため、合法でのツアーが行なわれている。したがって、もし、「違法ツアーはイヤだけど、どうしてもアンテロープに行きたい」 という場合は、それら大手旅行代理店の大自然パッケージツアーに申し込むとよいだろう。(ただしその場合、ラスベガスからの日帰りツアーではなく、ザイオンやブライスキャニオンも訪れる一泊ないし二泊のツアーが多い)

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