週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2005年 06月 15日号
ベラージオのアートギャラリー & ウィンコレクション
 「ラスベガスまで行って、なにゆえわざわざ美術鑑賞?」 と言われてしまえばそれまでだが、ギャンブルに疲れた際の気分転換には悪くないだろう。
 エンターテーメントの街ラスベガスにこのたび 2つの美術館が新装オープンしたので取材した。

 今回取材したのはベラージオホテル内にある The Bellagio Gallery of Fine Art と、4月末に開業したばかりの豪華ホテル・ウィンラスベガス内にお目見えした The Gallery の "Wynn Collection"。(以下、それぞれ BG、WC とする)
 実はどちらのギャラリーも今回初めてオープンしたわけではない。前者は 6月 10日から展示物を一新し、新たなテーマでのリニューアルオープンで、後者は場所を移して新天地での再デビューだ。ちなみにどちらも同一人物が関わっている。言うまでもなく、ベラージオホテルとウィンラスベガスの創業者 Steve Wynn 氏だ。

 両美術館の経緯について簡単にふれておこう。絵画が趣味だった Wynn 氏が 98年 10月にベラージオホテルをオープンさせた際、自身および会社が所有していたゴッホ、ルノアール、セザンヌ、ピカソなどの名画 (総額約 3億ドル) を展示するために造ったのが BG。
 その後 2000年春にベラージオが MGM Grand 社 (現 MGM Mirage 社) に買収され、Wynn 氏は失脚。自己所有分の絵画を持ってベラージオを去ることに。すぐに Wynn 氏は高級ホテル・デザートインを買収し、その絵画を展示するためにデザートイン内に造ったのが WC。その後、デザートインは爆破解体されることになり WC は閉館。そしてその跡地に新たに建設されたウィンラスベガス内に誕生したのが今回でデビューした新生 WC。

 BG は Wynn 氏が去った後も MGM Mirage 社の管理の元で運営されてきたわけだが、このたび約一年ぶりに内容が刷新され、ボストン美術館から借りてきた作品による 「印象派および後期印象派による風景画展」 が始まった。
 作品は、モネ 5点、コロー 4点、ルノアール 3点、ミレー 3点、ゴッホ 2点、ゴーギャン、セザンヌ、ルソーが各 1点で、その他も含めて合計 34点。もちろんすべてが風景画だ。
 一方の WC は、ゴッホ、モネ、セザンヌ、ゴーギャン、それにピカソ、アンディウォーホールなどの 15点。基本的にはデザートイン時代の展示とほぼ同じ内容だ。

 どちらを見るべきかは意見が別れるところだが、たぶんラスベガスにまで来てわざわざ美術館を訪れるような絵画ファンは両方とも見るものと思われるので、ここではあえて甲乙付けることは避けたい。そもそも芸術品を評価するだけの知識も能力もない。
 ということで、ただ単に両者の違いだけを手短に表現するならば、数で勝る BG、個々の作品の個性とバラエティーさで勝る WC といったところか。
 BG の作品はすべて風景画ということもあり、当たり前のことではあるが、原色を使った派手な作品はほとんどなく、色調という意味では会場全体が上品かつおとなしい雰囲気にまとまっている。
 一方の WC は、テーマに固執していないばかりか、印象派からピカソ、そしてアンディーウォーホールまで、世代の幅が広いため、作品数こそ少ないもののバラエティーに富んだ個性的な作品を楽しむことができる。

 注目作品は現場スタッフによると、BG がモネの The Water Lily Pond (いわゆる 「睡蓮」 シリーズ。写真右)、WC がピカソの Le Reve (写真左下)。
 ただ、BG の睡蓮は、睡蓮シリーズの中ではどちらかというと地味なタッチの作品であるばかりか (それはそれで悪くないが)、たまたま展示ポジションと照明の位置関係で、鑑賞者のかなり背後にある照明が作品の表面に反射して写り込んでしまっているのが少々気になった。(作品の表面はガラスでプロテクトされているので反射するが、通常の照明の位置ではガラスの存在がまったく気にならない)

  Le Reve は作品のサイズが大きい (130cm x 97cm) ばかりか、ウィン氏が一時期それをホテルの名称にしようと考えていたほどのお気に入りの作品だけあって、見る側の先入観もあるだろうが、その存在感は圧倒的だ。 (ホテルの名称はウィンラスベガスになったが、ナイトショーの名称にはこの Le Reve が採用された。ちなみに Le Reve の意味はフランス語で夢)
 参考までにこの絵は 99年 7月にニューヨークのクリスティーズのオークションにて 4800万ドル (当時のレートで約60億円) で Wynn 氏の関係者が落札したとされている。
 芸術作品に対するイメージや印象は、その作品が持つ芸術性もさることながら、価格を聞いて大きく左右されてしまいがちだが、たしかに 60億円という数字を聞くと、無条件ですごいと思ってしまう。価格から来る先入観で芸術性までもが底上げされて見えてしまうのは好ましいことではないが、この絵の前に立ってじっくり鑑賞しているとオーラが放たれているように見えてきてしまうから不思議だ。

 どちらの会場においても、入場の際にコードレス電話の受話器を大きくしたようなナレーション装置を渡される。作品の前に表示された番号をそれに入力すると解説が流れてくるようになっている。日本語バージョンも用意されているので、それを希望する場合は現場スタッフに 「ジャパニーズプリーズ」 と遠慮なく申し出よう。操作方法も聞けばていねいに教えてもらえる。
 入館料はどちらも $15、展示期間は BG が 2006年 1月 8日まで、WC は無期限。開館時間は年中無休で BG が 9am〜10pm、WC が 10am〜9pm。
 なお観賞後は、ギフトショップが併設されているので立ち寄ってみるとよいだろう。どちらかというと BG のショップがオーソドックスな美術関連品、WC のショップがユニークな記念グッズを多く販売しているように見受けられた。(右写真は WC のノートパッドとマグカップ。それぞれ $11、$10)

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