週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2005年 04月 13日号
3000本のバラの前で愛の告白、高級フレンチ "Fleur de Lys"
 ラスベガスを舞台にした韓国の人気ドラマ 「ホテリア」 の中で "300本のバラ" という名前のレストランが登場するらしいが、今回紹介する "実話" はその 10倍、3000本のバラだ。

 実話の舞台は昨年秋にマンダレイベイホテル内にオープンした高級フレンチレストラン "Fleur de Lys"。
 Fleur de Lys はサンフランシスコでは知る人ぞ知るセレブご用達の老舗で、そこのオーナーシェフ Hubert Keller 氏と同ホテルのコラボレーションで実現したのが今回紹介するラスベガス屈指のファインダイニングだ。もちろんハイローラーをもてなすために造られた店だが、一般の者が利用することもできる。

 店内装飾、食器、さらには厨房のデザインなど、何から何までその分野のカリスマデザイナーに任せたというこの店はすべてにおいて贅沢を極めている。そんな中でも特に注目されているのが 3000本のバラだ。まずは百聞は一見にしかず、左の写真をクリックしていただきたい。
 店に入るとほのかに漂うバラの香り。その正体はもちろん壁に飾られたその生のバラだ。
 正真正銘の生のバラでドライフラワーなどではない。ちぎった花びらをガラスケースに投げ込んだような安易な演出でもない。壁に一本一本丹念に差し込んだ手の込んだ芸術作品だ。右下の写真は、特別に撮影させてもらったそのバラのユニットだが (台紙はメニュー)、水が入っているシリンダーに一本一本ていねいにセットされていることがわかる。

 ラスベガスには何億円もする高級絵画を飾るレストランもあるが、維持費という意味ではこちらの方が贅沢かもしれない (絵画も保険など、かなり経費がかかりそうではあるが)。ちなみにこのバラ、枯れて見栄えがしなくなったものは日々取り替え、週一回は 3000本のすべてを入れ替えるという。
 一本のバラの値段は…、作業費は…、一週間の経費は…。そんな野暮なことを考えながらこの店に行ってはいけない。ついついそんなことを考えたくもなってしまうが、この店へ一歩踏み込んだからには庶民感覚は捨て、値段のことなど気にせずに高級ワインをガンガンあけるぐらいの意気込みでディナーを楽しみたい。
 参考までに、分厚いワインリストの中にはロマネコンティ Montrachet 1996年、シャトー Margaux 1982年 が、それぞれ $2200 (これはかなり良心価格)、$6000 (これはちょっと高いように思える) でリストされている。
 ゴールデンウイークにカップルでラスベガスにやって来る男性諸氏は、「君にバラをたくさんあげたい。でも持ちきれないほどたくさんある。せめて見せるだけでもしたいので、今夜付き合ってくれないか」 などといってこの店に誘い出し、ワイングラスを傾けながら愛をささやいてみてはいかがだろう。

 バラばかりに話が行ってしまったが、インテリアデザイナーの大御所 Stanlee Gatti 氏が手がけたというダイニングルームそのものもゴージャスだ。
 天然石で覆われた壁は高さ9メートルと高く、また吹き抜け構造になったその二階部分にはガラス張りのワイン貯蔵庫がある (写真左)。そこには先のロマネコンティを含め約 600種、8,400本 (キャパシティーは 12,000本) のワインが眠っているというから壮観だ。
 店内のカラートーンは、チョコレートブラウンとピーチピンクに統一され、クールな高級感とやわらかな温かさが絶妙にマッチしており心地がよい。

 幸いあまり広くないので、ほとんどどの席からバラを見ることができるが、ごく一部、Cabana 席と呼ばれる個室ブースがあり、そこからはバラは遠いものの、カップルから数人までのグループが、ひっそり奥まった環境でディナーを楽しめるようになっている。
 また、これは極めて特種な席だが、なぜかワイン貯蔵庫の中にもテーブルがひとつだけある (写真右)。もちろんかなり寒い環境だが、ワインに囲まれながら一階を見下ろすカタチでディナーを楽しむのもよいかもしれない。基本的にはハイローラー専用の席だが、カップルで 500ドル以上を使うことを条件に (チップ別)、一般の者でも予約可能な場合もあるという。

 厨房も、その世界では非常に有名な Mark Stech-Novak 氏がデザインしたとのことで (写真左、これは営業終了後に撮影)、たしかにカウンタートップに大理石を使っているあたりや、調理具の配置などが独創的だ。
 その他食器やイスなどもすべてこの店のオリジナル品として彼がデザインしたもので、総じて上品にまとまっている。一枚一枚皿のデザインが微妙に異なっているのも彼の特徴とのこと。

 さて気になるメニューや値段だが、超高級ではあるものの、日本の超高級よりはかなり良心価格になっている。アメリカでは食事に一人 3万円も 4万円も払う習慣がほとんどないので、例外を除き、どんなに高級店でも料理自体は $100 前後までというのが常識のようだ。そのぶん、ワインなどで贅沢をする。
 ちなみにこの店ではコースメニューになっていて 「3品コース $68」、「4品コース $76」、「5品コース $88」 の 3種類が用意されている。
 「3品コース」 の場合、アペタイザーメニュー の中から 1種類、魚介メニュー もしくは 肉料理メニュー の中から 1種類、デザートメニュー の中から 1種類選べる。 「4品コース」 の場合、アペタイザー、魚介、肉料理、デザートのそれぞれから 1種類。「5品コース」 の場合、「4品コース」 の内容に加え、フレンチチーズの盛り合わせが付いてくる (デザートの直前にサーブされる)。
 量的には、女性は 「3品コース」、男性は 「4品コース」 か 「5品コース」 を選べばよいと思われるが、チーズの盛り合わせはかなり量があるので、男性が複数いるグループの場合でも、「5品コース」 だけはだれかひとりがオーダーしてシェアすればよいだろう。
 料理の量としてはそれほど多くないが、次から次へと運ばれてくるフランスパンがかなりおいしく、それを食べ過ぎると料理の前に満腹になってしまうので注意が必要だ。
 予算的には上記の各コースの料金に、ボトルドウォーター (日本でいうところのミネラルウォーター)、ワイン、デザート時のコーヒーや紅茶、それに税金とチップがプラスされ、ひとり $200 ぐらいは覚悟しておいた方がよい。(安いワインであれば $150 ぐらいでおさまる場合も)。

 味は同種のレストランの中ではかなりまともと思われる。アメリカで食べる食事としては日本人の味覚に合っているばかりか、盛りつけも上品で量的にもちょうどよい。ただ、デザート類は甘すぎる。が、こればかりは食文化の違いというか味覚の違いでもあり、あきらめるしかないだろう。
 今回の取材で試食した各料理は以下に写真で示したが、周囲の客への配慮でストロボを使わないという条件での撮影だったのと、運悪く機材トラブルなどが重なり、非常に不鮮明な写真になってしまったことをお詫びしておきたい。

 場所はマンダレイベイホテルのカジノフロアからイベントセンター (アリーナ) へ通じる通路沿いで、営業時間は毎日 5:30pm 〜 10:30pm。予約は 702-632-9400。
 ドレスコードは男性は襟付きシャツが必須で、ジャケットがあればなおよい。
 余談になるが、店の名前 "Fleur de Lys"は、英語に訳せば Flower of Lily、つまりユリの花だ。多くの客がウェイターやウェイトレスに、「ユリの店がなぜバラ?」 と質問するようだが、店側によるとその答えは、「店のコンセプトは花で、ユリやバラにこだわっているわけではない」 とのこと。つまり、たまたま名前がユリで、たまたまバラを飾っただけらしい。たしかにイスの背面の刺しゅうや、皿のデザインなど、ユリやバラに限らずさまざまな花が描かれている。

 最後に、カリスマシェフと呼ばれる者が監修する著名店は往々にして日本のメディアに対して横柄な態度を取りがちだが (メディアが取り上げると短期間に客が殺到したり、チップを払わない者がいたりという理由もあるようだが、ただ漠然とあまり好かれていないようにも思える)、この店はシェフも含めてスタッフ一同、日本のメディアへの掲載をこころよく受け入れてくれた。そんな協力的な店なだけに、チップの払い忘れなどは絶対にないようにお願いしたい。ちなみにこのレベルの高級店では、よほどサービスが悪くない限り 20% 程度置くのが常識とされている。
 また、この店の場合、コースメニューとは言えセレクションが多いので、アイテムによっては焼き方を聞かれるなどそれなりの会話が必要となる。ウェイターを困らせないためにも、英語が苦手な者は事前にそれなりの研究をしておくとよいだろう。「パンを持っていってもナイフとフォークを交換しに行ってもコーヒーをついでも、何をやっても日本人はサンキューすら言ってくれない」 というのがウェイターの間での共通認識というのはあまりにも寂しい。
 なお、この種の店では、チップもクレジットカードで払うのが一般的だが、その方法についてよくわからない場合は、このラスベガス大全の [基本情報]セクション内の [クレジットカード] もしくは [チップ] の項を参考にしていただきたい。

フランスパンと "シェフからのサービス"
これは一番最初に出されるアイテムで、メニューには載っていない。「シェフからのサービス」 とのことでウェイターが運んで来るこれはサーモンのタルタル。フランスパンは 4種類ほどあり、どれも絶妙な焼き具合で、特にレーズンパンがよかった。写真の中央上部はバター。
Artisan Foie Gras "Au Torchon" with Grilled Foie Gras
写真中央と右がフォアグラ。通常のフォアグラよりもかなりコクがある。左のフルーツのコンポートはネズミの形をしていて可愛らしい。奥はアスパラのサラダ。熱いブリオッシュ (写真後方) も添えられて来る。
Oven Roasted Boneless Quail Breast
左から順に、うずらの卵、フォアグラ、うずらの肉、マッシュルームのコンポート。
Roasted Maine Lobster
ロブスターは小さめだが、アーティチョークのピューレやシトラスの酸味など、複雑な味のソースがからまって美味。
Pan Seared Diver Scallops
一度焼いてから使っているスキャロップ (ホタテ貝) が香ばしい。サイズ的にも肉厚で高級感があり、味もよい。
Filet Mignon with Braized Oxtail Tortellini
濃厚なレッドワインのソースが絶妙にマッチしたフィレミニオン。サイズが小さいのが残念。左はポテト、右はオックステイルのトルテリーニ。
Colorado Lamb Loin and Lamb
右奥のキャベツに包まれたようになっているのが Sweetbreads。ふわふわしていてさつま揚げとハンペンの中間ぐらいの味。ラムは臭みが少なくて上品だが、もっと臭いぐらいの方がラムらしくてよい気がしないでもない。
Banana and Carmel Duo
バナナとキャラメルのケーキ、バナナブリュレ、キャラメルアイスクリーム、バナナチップ、バナナとチョコレートのダンプリングと、バナナ尽くしのデザートだが、いかんせん甘すぎる。
Chocolate Souffle
これは通常のデザートメニューにあるアイテムだが、5ドルの追加料金が必要。ふんわり焼かれたスフレの中央にチョコレートシロップがたっぷり。キルシュのアイスクリームと一緒に食べる。サイズが大きいので、かなりの甘党でないと食べきれないかも。
Assortment of Artisanal French Cheeses
オリーブオイルに漬かったゴートチーズ (右後方の器)、濃厚な Epoisses、フリルの様にスライスされたスイスチーズなど 4種類に、グリーンアップル、ミックスナッツ、ドライフルーツが添えられていた。
Tea
箱に入れられ運ばれてくる Green Tea, Black Tea, White Tea, Oolong Tea などの中から葉を選ぶ。葉の形状が非常にユニークなので、コーヒー ($4.50) でもティー ($.6.00) でもどっちでもよいという者はぜひティーをたのむとよいだろう。


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