週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2005年 01月 19日号
WE WILL ROCK YOU、 集客が上向きでピンチ脱出か
 今週は、パリスホテルで行なわれているミュージカルショー "WE WILL ROCK YOU" を紹介してみたい。
 「なにを今さら」 と思う読者も多いことだろう。たしかにこのショー、すでに初公演から 4ヶ月以上が経過しており、今になって始まったショーではない。ちなみに本家のロンドンでは先週 1000回記念公演が行なわれている。
 これまでこのショーを紹介してこなかったのには理由がある。ラスベガスでは初公演直後から、「すぐに終わるだろう」 との噂が地元メディアを含め各方面でささやかれていたからだ。また、英語のジョークなどが難解で、一般の日本人観光客には不向きという部分も紹介をためらってきた理由の一つでもある。

 たしかにデビュー直後の客の入りはサッパリで、本誌もその噂を半分以上信じてきた。
 ちなみにこのパリスホテル、数年前に同じくミュージカルで 「ノートルダムの背むし男」 をわずか半年で打ち切ってしまったという "前科" がある。
 今回の WE WILL も奇しくもそのノートルダムとまったく同じ会場で、初公演直後からノートルダムより客の入りが悪いとあっては、悪い噂が立つのも無理はない。

 が、ここへ来て、会場の半分程度は埋まる日も出てきているとの良い噂も流れ始め、それと同時に、読者からもこのショーに対する紹介記事を望む声がときどき寄せられることもあり、このたび改めて取材してみることにした。
 取材日は 1月 17日の月曜日。心配だった客の入りは大ざっぱに約 3割。この数字、劇場全体を見渡した感じでの目視によるものなので、念のため会場内の現場スタッフ (座席誘導係) にも聞いてみたところ、「キャパシティー 1400席に対して 今日は 400人ちょっと。月曜日なのでやや少なめかな。週末などは半分以上埋まることもあるよ」 とのこと。
 情報の確度を高めるため、もうひとり別のスタッフ (劇場内の警備担当) にも聞いてみたが、やはり同じような回答が返ってきたので、最近の集客はおおむね 「キャパシティーの 30〜50%」 と考えてよさそうだ。これは、数ヶ月前と比べるとかなり改善されてきているように思える。
 各ホテルのポリシーなどにもよるが、一般的には座席の半分が埋まっていれば 「まずは及第」 とされているので、とりあえずその合格ラインに手が届き始めたとも言え、このまま上昇トレンドに乗ればロングラン公演も夢ではない。もちろん競争が激しいラスベガスのこと、いつ突然打ち切りになってしまうかわからないが、とりあえず消滅しないことを祈りながら、以下にこのショーの内容を紹介してみたい。

 このショーの発祥の地は言うまでもなく英国ロンドンで、そのデビューは 2003年。歴史は決して長くないが、すでにシドニー、ベルリン、モスクワなどでも行なわれており、その人気は世界的な広がりを見せている。
 ロック界の大御所クイーンの曲で構成されたこのミュージカルは、ストーリーはどうでもよいというか、重視する必要はないだろう。また、クイーンのことを描いた作品でもなく、一にも二にも、とにかくクイーンの音楽をみんなで楽しめればよいという内容だ。
 念のためストーリーを簡単に説明しておくと、設定は数百年先の未来社会 ( "Ga Ga World" )。そこはあらゆることがコンピューターによって制御されてしまう社会で、音楽はすべてコンピューターが作曲し、演奏もコンピューターが行なう。楽器を使うことは厳しく禁じられ、服装も、思想も、コンピューターの指示通りに従って暮らしていればみんなが安心で安全、という社会だ。
 そんな社会に疑問を感じた一人の青年 (ガリレオ フィガロ) とその仲間たちが、ロックの魂を持って立ち上がる。逮捕されたり恋をしたりのドタバタ劇がくり返されるが、結局人間の音楽を取り戻すためにたどり着いた先は、はるか昔に水没してしまったラスベガス。そして、とうとう最後にエルビスプレスリーの生地メンフィスで探し求めていた伝説のエレキギターを見つけ出す。
 ロンドン公演を見ていないので確実なことは言えないが、おそらく最後の部分だけは米国バージョンということで、アメリカのロックの神様プレスリーに敬意を表してストーリーを多少変えてあるのだろう。

 エンディングの部分では生バンドも姿をあらわし (それまでは楽器が禁じられている世界ということもあり生バンドは隠れている)、客席も一緒になって、「WE WILL ROCK YOU」、「WE ARE THE CHAMPIONS」、「BOHEMIAN RHAPSODY」 のなじみの 3曲で大合唱。
 クイーン世代、またはクイーンの歌が好きな者にはぜひおすすめのショーだが、彼らの曲を知らない者は楽しめないかもしれない。ちなみに、昨年日本で話題となったキムタク主演のアイスホッケーのドラマ 「プライド」 で使われていた 「I WAS BORN TO LOVE YOU 」 はこのショーでは登場しない。参考までに以下の 22曲が今回の取材時に歌われた。


 RADIO GA GA  OGRE BATTLE
 I WANT TO BREAK FREE  YOU'RE MY BEST FRIEND
 SOMEBODY TO LOVE  FLASH'S THEME
 KILLER QUEEN  SEVEN SEAS OF RHYE
 A KIND OF MAGIC  FAT BOTTMED GIRLS
 UNDER PRESSURE  ANOTHER ONE BITES THE DUST
 ONE VISION  HAMMER TO FALL
 I WANT IT ALL  THESE ARE THE DAYS OF OUR LIVES
 HEADLONG  WE WILL ROCK YOU
 NO-ONE BUT YOU  WE ARE THE CHAMPIONS
 CRAZY LITTLE THING CALLED LOVE  BOHEMIAN RHAPSODY


 出演者たちの歌唱力はかなりのもので、あのフレディー・マーキュリーの難しい曲もパワフルに歌いこなしている。その反面、踊りはあまり印象に残らないというか、目を引くような大した動きがなく、衣装にも豪華さは感じられない。舞台セットは大型ディスプレイや光線を使って未来世界をうまく描き出しており、まずまずといったところか。

 このショーは、著名ミュージシャンの楽曲を集めて構成したという意味で、なにかと MAMMA MIA (アバの曲で構成) と対比されがちだが、アバとクイーンでは歌のジャンルがかなり異なるため、比較すること自体、あまり意味がないだろう。ただ、どちらがよいかと問われれば、やはり MAMMA MIA の方に軍配を上げたい。
 それはアバが好きかクイーンが好きかといった主観で言っているのではなく "市場の判断" だ。つまり、どちらの方が集客しているかという話になるわけだが、少なくともここラスベガスでは MAMMA MIA の方がリードしている。ただ、WE WILL もまだ歴史が浅いため、今後知名度が上がれば MAMMA MIA に迫ることがあるかもしれない。いずれにせよ、せっかく始まったショーなので、とりあえずしばらくは長続きしてもらいたいものだ。
 なお、現在このショーでは (ラスベガスに限らずロンドンなどでも)、津波基金として、ショーが終わったあと募金を集めている。劇場前で役者が赤いバケツを持って立っているので (写真左上)、ぜひサポートしよう。

 会場はパリスホテルのフロントロビー脇にある "Le Theatre des Arts"。公演時刻は月、火、水、金が 8:30pm、土が 7:00pm と 10:30pm の2回、日が 2:00pm と 8:30pm の2回。木曜日は休演。
 チケット料金は $53.00、$80.50、$97.00、$113.50 (税込み) の4種類だが、日曜日の 2:00pm の部だけは全席 $57.50。
 なお、この劇場には二階席がないばかりか、左右の幅に比べ前後の奥行きがそれほど深くないので、後方の安い席でもステージからそれほど遠くない。予算的に苦しい者は無理して前の席にする必要はないだろう。チケット購入は劇場前のボックスオフィスで。予約の必要はまったくなし。

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