週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2004年 12月 01日号
CIRQUE DU SOLEIL の第4弾 "KA" はメカトロニクスの結晶
 11月 26日から、カナダの人気劇団 CIRQUE DU SOLEIL の新作ショー "KA" が MGMグランドの専用劇場で始まった。ラスベガスでの同劇団による定期公演ショーとしてはミスティア、オウ、ズーマニティに次ぐ第4作目となる。
 なお、2月 2日までは仮公演とのことで、不具合などが見つかり次第、内容を変えていく可能性があるという。

 オウが水をテーマとしていることや、KA という語感、さらには宣伝広告のデザインなどから、「水の次は火か」 と、火をテーマにしたショーかと思いこんでいる者も少なくないようだが、エンディングでの花火を除くと、実際には火がそれほど多く使われているわけではなく、また、KA の意味も、古代エジプトで信じられてきた 「人間の心に宿るさまざまな魂の総称」 とのことで、火とは特に関係ないようだ。
 ではテーマがエジプトなのかというと、見ている限りではそうでもなさそうで、むしろ衣装などは 「アジアを意識した」 (コスチュームデザイナー) というだけのことはあって、エジプトよりも中国をイメージしたような場面が随所で見られる。

 「双子の少年と少女の冒険旅行」 というストーリーが広報資料などで強調されているが、実際にはミュージカルのような明確なストーリーの存在を意識しながら観るショーではない。
 劇団側もストーリーの存在を強調する一方で、このショーを、「アクロバット、マーシャルアーツ、マルチメディア、花火などで "Nature of Duality" を表現した」 と説明しており、ストーリー性のある物語よりも、基本的にはサーカスやアクロバット的なショーと位置付けているようだ。
 事実その Nature of Duality という難解な言葉が象徴するように、実際にショーを観た限りでは、そのストーリーも主張も極めて抽象的で、見る者ひとり一人が自由に解釈すればよいといった感じの内容に仕上がっている。もちろん役者がしゃべるシーンなどはまったくなく、これは、世界中の者が言語の違いを超えて楽しめることを信条とする同劇団のポリシーといってよいだろう。

 そのようなわけで基本的にはサーカスやアクロバットとして楽しめばよいわけだが、とにかくすごいのひとことに尽きる。何がすごいのか? それは舞台設備とその発想だ。
 ステージの一部が上下する劇場は昔からどこにでもあるが、ステージ全体が上下するどころか、それが斜めになったり宙に浮き上がったり、さらには回転したり垂直に立ってしまったりする。世界中どこを探してもこんなステージはあるまい。制作費がオウのそれを遙かに上回る 200億円近いというのもうなずける。
 「垂直になるステージ」 と表現しても、それがどのようになされるのか、また、役者はどうやってその垂直面に張り付いていられるのか説明がむずかしいが、それは観てからのお楽しみとしていただきたい。

 とにかくこのショーは、舞台設備に秘められたメカトロニクスの結晶で、最近流行のコンピューター技術を駆使した音、光、映像などに頼りがちなハイテク演出とはひと味も二味も違っている。もちろんこのショーでもコンピューター制御などのハイテクは使われているが、主導権をコンピュータープログラマーから機械工学のエンジニアが奪い取ったようなそのコンセプトは、ショー本来の原点に帰ったようで気持がいい。
 奇抜な映像も音も光もほとんど使わずに、ステージの動きだけで観客を魅惑し、スタンディングオベーションに導く。それがこのショーの真骨頂といってよいだろう。
 ショーが終わったあと、その謎のメカトロニクスを簡単に見せてもらったが、その複雑さと奈落の深さには驚かされた。「奈落の底」 という言葉があるが、まさに落ちたら間違いなく生きて帰れないと思われるそんな危険な環境でステージは複雑に動き、役者もその上を動き回る。事故がないことを祈るばかりだ。

 メカ重視というわけではないだろうが、音楽はミスティアやオウのそれに比べ、あまり印象に残らない単純なメロディーのようにも思えたが気のせいだろうか。
 また、役者ひとり一人のパフォーマンスやその難易度もミスティアやオウと比べてどうなのかよくわからない。人によっては、「舞台装置のすばらしさは認めるが、演技そのものはオウの方が好き」 といった意見が出て来るかも知れないし、出てこない方がおかしいだろう。
 そのへんは好みの問題ということになるが、極めて大ざっぱに表現するならば、前衛的なサーカスショーのミスティア、華麗な水上ショーのオウ、無法的エロスを追求するズーマニティー、人間や自然の畏敬の追求とメカトロニクスの KA といったところで、やはり華麗さではオウ、サーカスの技ではミスティアの方に軍配が上がるような気がしないでもない。

 ところでこのショーには日本のバトントワリングの第一人者・高橋典子さんも出演している。世界バトントワリング選手権ゴールドメダリストという輝かしい実績を持つ彼女は、いわゆる "その他大勢" ではなく、準主役的な立場で登場する。同じ日本人としてうれしい限りだ。ぜひ今後も応援していきたい。

 会場は MGMグランドホテル内の KAシアター (かつて EFXが公演されていた会場)。公演は水曜日と木曜日を除く毎日 7:00pm と 10:30pm (ただし 12月 7日までは 8:00pm のみ)。チケット料金は $99、$125、$150 の三種類 (すべて税込み)。ちなみにオウのシアターと違い二階席などはなく、すべての座席フロアが同じ平面内に位置している。
 チケット購入は劇場脇のボックスオフィスまたは公式ウェブサイト www.cirquedusoleil.com で。


バックナンバーリストへもどる