週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2004年 7月 21日号
モノレール、開業したものの利便性は今ひとつ
 7月 15日、待望のモノレールが営業運転を開始した。路線区間は MGMグランドホテルとサハラホテルの間で全長約 7km。
(右写真は MGMグランド駅。背景に Mandalay Bay や Luxor がすぐ近くに見えるが、それは望遠撮影のためで、実際は非常に離れている。クリックで拡大表示)

 駅の数は MGMグランド駅とサハラ駅を含め全部で 7つ。その位置関係は こちらをクリック
 クリックして表示される地図において、ストリップ大通りの右側 (東側) に描かれている水色の線が今回開業したモノレールの軌道で、7つの赤丸が駅。ちなみにストリップの左側にある水色の線は従来から存在するまったく別のモノレール。

 今回試乗したり各駅を実際に利用してみての感想は、前からわかっていたことではあるが、「利便性は今ひとつ」 といったところか。
 「ストリップ地区の大動脈」、「ストリップの交通渋滞解消」、「利便性の大幅アップ」、「排気ガスを出さないクリーンな交通機関」 など、開業前から話題にはこと欠かなかったが、実際に開業した今、少なくとも利便性という意味では、期待は幻想に終わったような感じがしないでもない。
 その最大の理由は、やはり駅の位置がストリップから遠いということで、このモノレールの問題点はすべてそこに尽きるといってよいだろう。先の 地図 ではストリップが誇張され幅広く描かれているためわかりにくいかもしれないが、実際のモノレールの軌道はストリップからかなり離れており、近いところでもその距離は約 250m もある。

 ストリップにはユニークなホテル、ショッピングスポット、レストラン、アトラクションなどが軒を並べており、そこを散策することは、大多数の観光客にとってそれ自体が "主たる観光" のはずだ。そんな魅力あるストリップ散策において、わざわざ 250m 以上も奥まった駅まで歩き、そこからモノレールに乗り、また 250m も歩いてストリップへ戻ることが、移動手段として、時間的にも観光的にもどれほど意味があるのか大いに疑問だ。よほどの長距離移動でない限り、徒歩やバスの方が便利かつ楽しいだろう。
 この現状は、日本の銀座、パリのシャンゼリゼ、香港のネイザンロードなどの目抜き通りで考えてみるとわかりやすい。その目抜き通りをぶらぶら散策する者にとって、250m も離れた場所を平行に走る乗り物に利便や魅力を感じないはずだ。

 今回のモノレールの場合、少なくともストリップの西側に位置するホテル (ベラージオ、モンテカルロなど) の宿泊者にとって、このモノレールに利用価値を見い出すことは困難だろう。また、駅に比較的近いホテル (フラミンゴ、パリスなど) の宿泊者においても、フロントロビー、カジノ、レストランなどの活動の場がストリップ側にある限り、裏側にある駅までわざわざ歩いて行く気になりにくい。
 フロントロビーがストリップから見て裏側にある MGMやハラスの宿泊者は駅へのアクセスが比較的容易だが、それでも 「モノレールに乗ってどこへ行くの?」 という根本的な問題に直面する。
 7つある駅のうち、少なくとも北側に位置する3つの駅、つまりサハラ、ヒルトン、コンベンションセンターの各駅は、それぞれのホテルの宿泊者およびコンベンション族以外、大多数の "ストリップ主要ホテル宿泊者" にとってはよほどの理由がない限り行く用事はないだろう。

 ということで残りの4つの駅だけを利用対象と考えると、どこで乗ってどこで降りても徒歩と大差ないように思える。特に MGM駅以外の3つの駅、つまりバリーズ駅、フラミンゴ駅、ハラス駅はそれぞれが非常に接近しているため、徒歩の方が明らかに早い。
 そう考えると消去法的に 「MGM駅を含めない乗り方はあまり利用価値がない」 ということも言え、鳴り物入りで開業した 「大量公共輸送機関」 も、現実的にはごく限られた人のための乗り物ということになってしまう。もしくは、日ごろ立地条件の悪さにハンデを感じているサハラ、ヒルトン、コンベンションセンターを援助するための交通機関と言えなくもない。まさに "援交" といったところか。
 このように分析してみると、ライバルのコンベンション施設 (サンズコンベンションセンター) を持ち、駅の対象からも外されたベネシアンホテルが一時期モノレールの建設に反対していた理由が今さらながらよくわかる。
 いずれにせよ、このモノレールの利便性には大いに疑問が残るが、将来的にはダウンタウンまで路線が延長され、また空港にも乗り入れる計画があるという。ダウンタウンや空港まで行けるようになれば、たとえ現在の駅がストリップから少々奥まった位置にあっても利用価値が出て来るので、今後のさらなる路線延長に期待したい。

 酷評ばかりになってしまったが、「ストリップのホテルからホテルへの移動手段」 としては利用価値があまりなくても、観光ライドとしてはおもしろいので、一度は乗ってみるとよいだろう。地上からでは見えにくいものが見え、新たな発見があるかもしれない。
 たとえば、まだ未公開でベールに包まれている Wynn Golf Club の様子が車窓から見える (といっても工事はほとんど進んでいないが)。また、宿泊者以外は中を見ることがむずかしい MGMのプール施設も一部ではあるが見ることができる。

 運営主体である Las Vegas Monorail 社の発表によると、開業直後の1日の利用者数は約3万人だったという。目標が5万人で、採算分岐点が4万人前後とのことなので、利便性はともかく、日本人観光客にも大いに利用してもらわないことには経営的な問題に直面しかねない。
 10万室を超える客室数を誇るラスベガスにおいて (二人一部屋利用で満室なら 20万人が滞在)、この3万人という実績は今後の厳しい現実を物語っているような気がしてならない。
 改札口の通過数でカウントされているため往復利用した者は 「二人」 と集計されており、また、開業直後の現在は地元民やラスベガスリピーターらの興味本位の "試し乗り" も多いと予想される。そんな中での 3万人はやはり厳しい数字と言えよう。
 「モノレールの存在が今はまだあまり知られていない」 という考え方もあるが、地元民やリピーターの試し乗りが一巡してしまう今後こそがまさに正念場で、現路線の健全なる運営のためにも、ダウンタウン路線や空港路線の早期の完成が待たれる。
 ストリップの真下を走る地下鉄方式であればどれほど利便性が高かったか。今さらながら悔やまれるが、コストが高い地下鉄方式はおろか、今後地上に建設するダウンタウン路線や空港路線ですら資金調達の問題が残っており、事態は簡単ではないようだ。

 Las Vegas Monorail 社は完全な私営企業ではなく第三セクター的な組織なので、採算が合わないからといってすぐにモノレールの運行が打ち切られることはまずあり得ないが、何が起るかわからないのがラスベガス。とにかくチャンスがある内に一度は乗ってみることをおすすめする。
 さてその場合の乗車区間だが、移動手段ではなく観光ライドとして乗る限り、「おすすめの区間」 はもちろん 「全線」 だ。
 MGM およびサハラの終点で自動的に折り返すので、どこの駅から乗ってもそのまま乗車し続けていれば元の駅に戻ることができるので 「全線観光ライド」 はむずかしいことではない。
 所要時間は MGMからサハラまでの片道が約 15分。つまり折り返し地点での停車時間を含めても一往復約 30分少々ということになる。30分楽しんで 3ドルならば、観光としては高くないだろう。

 運行時間は今の季節は午前8時から深夜12時まで。運行間隔は時間帯や混雑度などによって多少異なるが、おおむね 8〜10分間隔。四両編成、無人走行。
 各編成はインテリアもエクステリアもスポンサー企業のテーマに統一されているが、まだスポンサーが付いていない編成もある。
 料金は以下の通りで、乗車券は各駅にある自動券売機で購入。(クレジットカードも使用可)

 ■ 1回券 $3.00、2回券 $5.75、10回券 $25.00、1日券 $15.00、3日券 $40.00。

 なお、開業直後の3ヶ月は開業記念キャンペーンとして上記料金が以下のように割引されている。

 ■ 1回券 $3.00、2回券 $5.50、10回券 $20.00、1日券 $10.00、3日券 $25.00。

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