週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2004年 6月 2日号
新しいコンセプトの食べ放題の店 "Cravings at The Mirage"
 昨年末から改装工事のため長らく閉鎖されていたミラージホテルの食べ放題バフェィ "The Mirage Buffet" が 5月 26日、名称を "Cravings at The Mirage" に改め新装オープンした。
 同ホテル広報部によると、「ラスベガスのバフェィの文化を変えるまったく新しいコンセプトの店。 バフェィという言葉には安っぽいイメージがあるが、この店はこれまでの概念とはまったく異なるので、バフェィと呼んで欲しくない」 とのこと。今週はそんな Cravings at The Mirage を取材してみた。

 ロケーションは従来の The Mirage Buffet とまったく同じ場所で、正面玄関側からカジノ内に入って右奥。スロットマシンの間を通り抜けるとすぐに 淡いグリーンのキャノピー が見えてくるので見つけるのは簡単だ。ちなみにそのキャノピーには Ultimate Buffet なる言葉が書かれているので、店名にこそ "Buffet" は含まれていないものの、やはりここが Buffet であることがうかがえる。

 入口前の通路の左側には、新緑が芽生える白樺林をイメージした壁を背景に 18台の液晶ディスプレイが並ぶ。そこにはさまざまな食材が次から次へと映し出され、キャッシャーに並ぶ者を退屈させない。ちなみにその背景は、季節ごとに置き換わるというから、この店のこだわりが感じられる。
 参考までに、キャッシャーに向かって左側のすいている列はカジノゲスト用のものなので、一般客は右側の混んでいる列に並ばなければならない。

 店内に一歩足を踏み込むと、左手にピザを焼く釜と、その中で燃えさかるオレンジ色の炎が視界に飛び込んでくる。こういった演出がこの店の自慢らしく、ちなみにインテリアは、飲食業界のカリスマデザイナーと言われている Adam Tihany 氏がデザインしたとのこと。ホテル側も宣伝などでそのことをかなり強調しており、インテリアこそがこの店の最大のセールスポイントであることがうかがえる。

 そのインテリアのベースとなる店内のレイアウトだが、料理を陳列するスタンドがフロア全体の外周を馬蹄形に取り囲むように配置され、その内側にダイニングテーブルが並ぶ。いくつもの細かいセクションに分かれた店に比べると、全体が見渡せ一体感や開放感があり好感が持てるが、その一方で、ややにぎやかすぎる感じがしないでもない。
 デザインの基調は、近代的、前衛的、斬新といった言葉が適切なのかどうかはわからないが、少なくとも伝統的とかクラシカルというイメージではないことだけはたしかで、ガラスや金属を素材とした直線的なコンポーネントが目立つ。皿もバフェィとしては珍しくなぜか四角い。

 料理の陳列にもデザイン的なこだわりがあり、ジャンルごとの名称、つまり "ITALIAN" とか "MEXICAN" とか "CHINESE" といった表示はどこにもない。
 さらにジャンルばかりか各料理にも説明がないため、サンドイッチの類 (写真左) などは中身がわかりづらく、また、ころもで覆われた揚げ物などもポークなのかビーフなのかチキンなのか見ただけでは判断しかねる物が少なくない。特にスープやソースのたぐいは、なんのスープなのか、なんのソースなのか説明が欲しいところだが、こういった表示の不親切さもトータル的なデザインの一環なのだという。

 そんなこだわりを見せているためか、奇抜なデザインが目を引くシーフードセクション (写真右) などは、料理の目の前まで行かなければそこに料理があるのかどうかすらもわからないような設計になっており、なんと料理の上にあるのは説明ではなく熱帯魚だ。
 ホテル側いわく、「ほとんどの料理は、その調理行程の半分以上をお客様の前で行なっているので、どんな料理なのかは説明がなくてもわかるようになっています」 とのこと。
 たしかにほとんどのセクションが オープンキッチンスタイル になっているが、必ずしもすべてのセクションがそうなっているわけではなく、この案内の不親切さは今後さまざまな論議を呼びそうだ。利用者側から不便を指摘されるだけでなく、何度も同じ質問を受けその都度説明している現場シェフからも不満が出て来ることは間違いないだろう。クラムチャウダーと白みその味噌汁を見分けられるアメリカ人でも、見ただけでは海草の和え物と野菜の漬け物の区別が付かない者は少なくないことを Tihany 氏は認識した方がよいかもしれない。やはり説明は必要と思われる。

 さて気になる料理そのものだが、和食、中華、シーフードも含め、一通りのジャンルはすべてそろっている。
 左の写真は、シーフードセクションと和食セクションにあったカニ、カキ、スモークサーモン、にぎり寿司、のり巻きなどを盛りつけてみたものだが、砂漠の中でこれだけのアイテムが楽しめれば十分だろう。
 寿司のレベルはご愛敬といったところだが、その他のシーフードは日本人の味覚を大きく裏切るようなものではなく、まずまずの合格点といったところか。ちなみにカニの種類は、アメリカでは非常にポピュラーなダンジネスクラブ。にぎり寿司のネタはタコ、サケ、マグロ、ウナギ。

 中華は高く評価したい。野菜や肉などの炒め物 以外に、シューマイ、ギョーザ、肉マンなど、どれも味だけでなく、客の目の前で蒸したり焼いたり と、演出がうまい。
 また、現場のシェフに申し出れば作ってもらえる 中国野菜たっぷりのワンタンメン も予想以上の味なので忘れずにオーダーしてみたいアイテムだ。ちなみにそのドンブリは、なにかと直線的なデザインが多いこの店の中では珍しく、セクシーな曲線的なデザインが印象的だ。箸が中華用 (プラスティック製) と和食用 (割りばし) で別々に用意されているところにもこだわりが感じられる。

 長くなってしまったので一般洋食の細かい説明は割愛するが、言うまでもなく ステーキ類ピザ などのセクションも現場に担当シェフが常駐するオープンキッチンスタイルになっている。ちなみにプライムリブなどはレアもちゃんと用意されているので、焼き具合は遠慮なく申し出るとよいだろう。ピザの厚さは、本場イタリアンスタイルの物よりはやや厚めで、アメリカ標準よりはやや薄目といったところか。
 各ジャンルにおいて、それぞれ独自のスープが用意されているところは注目に値するが、それがなんのスープだか説明がないのが少々残念だ。

 メタリック調のデザートセクション はデザイン的には奇抜で目を楽しませてくれるが、味に関してはあまり大きな期待をしない方がよいかもしれない。アメリカの標準から比べると総じて "甘さ控えめ" だが、やはり日本の感覚からするとかなり甘いからだ。それでもクレームブリュレなどは "許容範囲" と思われるので、「食べるものがまったくない」 ということはないだろう。
 ちなみに取材時に陳列台に並んでいたのはそのクレームブリュレ以外にフラン、フルーツタルト、チーズケーキ、チョコレートムース、チョコレートケーキ、キーライムタルト、アップルパイ、ナポレオンなど。
 アイスクリームのセクションは他のホテルと違い、自分でソフトクリームマシンなどを操作して作るのではなく、一般の店で買うのと同じような感覚で現場スタッフに好みのフレーバーを申し出て作ってもらう (写真右下)。

 最後に料金だが、かつての常識から比べると高いものの、$30を超えるバフェィも登場している昨今の値上げトレンドを考えると意外にも安く、ブレックファストタイム $12.50、ランチタイム $17.50、ディナータイム $20.50 となっている (7.5%の消費税は別)。
 それぞれの営業時間帯は 7am〜11am、11am〜3pm、3pm〜10pm。なお土曜日と日曜日だけは終日 $20.50。
 ビールなどのアルコール類は他のホテルと同様に別料金で、国産ビールが $3.50、輸入ビールが $4.50 となっている。各種ワインの価格表は こちらをクリック
 なお、ネバダ州にしては珍しく全席禁煙なので愛煙家はあらかじめ覚悟が必要だ。

 食材的にも味的にも他のホテルの高級バフェィに比べ著しく上回っているわけではないが、「可能な限りオープンキッチンで客の前で調理する」 というポリシーは高く評価したい。
 限りなく近い将来値上げされるものと思われるが、この料金であればコストパフォーマンス的に 「ラスベガス屈指のおすすめバフェィ」 といってよいだろう。
 ちなみに今回の取材はディナータイムのものなので、ブレックファストやランチタイムにはカニやカキなどの高級食材は出てこないと考えた方がよい。また、現在はまだ開店直後のため、今後さまざまな不具合が出てきていくつかのサービスはなくなることも予想される。ここに記載した内容はあくまでも取材時のもの、と考えていただきたい。


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