週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2004年 3月 03日号
需要旺盛、業績好調、増築ブーム…、カジノは今買いか?
 今週は観光情報ではなく、ビジネスニュース的な話題のため、ラスベガス関連株などによほど興味がある読者以外は、スキップした方がよいかも知れません。

 ラスベガスの経済が絶好調だ。特にカジノホテルの業績が良く、それを裏付けるかのように AAGI (Applied Analysis Gaming Index の略、カジノ関連株の動きを示す指標) は過去 12ヶ月で 70%以上も上昇している。
 これは同時期に約 50%上昇したナスダックや、約 30%のダウ平均の上昇ペースを大幅に上回っており、バブル景気を彷彿とさせる極めて高水準の急騰ぶりだ。(右写真は建設中のベラージオの新館。クリックで拡大表示)
 そんな状況にある上、日本でもネット証券による外国株の売買が手軽にできるようになったためか、最近ラスベガス関連株に関する問い合わせがこちらにときどき寄せられる。今週はそんな話題を取り上げてみたい。

 911テロの直後、約半年ほど観光客が減少し、街全体が低迷した時期もあったが、今はすでにテロ前の水準を大幅に上回る観光需要に支えられ、ラスベガス経済は活況を呈している。

 街全体の客室数が毎年増加しているにもかかわらず、最近の宿泊料金は完全な売り手市場となっており、名の通ったホテルにおいては、平日でも $100 以上が当たり前、週末は $300 以上も珍しくないという状況で、「ラスベガスのホテルの宿泊料は安い」 と言われたのは、もはや過去の話となりつつある。結果的に各カジノホテルは業績を大幅に伸ばしており、株価上昇の勢いも、とどまるところを知らない。
(なぜか日本からの観光客だけが 911テロ以前の半分程度の水準に低迷しており、それはそれで大いに気になる問題だが、それに関しては今回のテーマとほとんど関係ないので話題としては割愛)

 今回の好景気において、カジノホテルを運営する各企業にとって喜ばしい傾向は、高収益が期待されるハイエンド市場が伸びているということだろう。つまり、高級とされるホテルが好調で、具体的にはベネシアン、ベラージオ、シーザーズパレス、マンダレイベイなどが、それぞれのグループ企業の業績を牽引しており (各社が所有するホテルリストは こちら をクリック)、増築なども、そういった高級ホテルが中心となっている。

 ちなみにベネシアンは昨年夏に 1000部屋規模の新館を開業させたばかりであるにもかかわらず、つい先日、3000部屋規模の新たなホテルの建設計画を発表し、早くも 隣接地の造成工事 を始めた。
 ベラージオは今年末の完成を目指し、1000部屋規模の新館棟を建設中で (このページの一番上の写真)、またシーザーズパレスも同様に 1000部屋規模の新館建設のための基礎工事をこのたび開始した (上から二枚目の写真)。
 マンダレイベイも約 1000部屋の新館棟 "The Hotel" を昨年 12月に仮オープンさせ (三枚目の写真の右端の建物)、現在その新館内に予定されている SPA やレストランなどの各種施設の完成を待つばかりとなっている。
 これら一連の増築工事に共通して言えることは、「すべてスイートルーム」 ということだ。いかにハイエンドの需要がひっ迫しているかがうかがえる。

 さらにまったく新しい超高級ホテル Wynn Las Vegas の建設も着実に進んでおり (写真左)、また、つい先日、ヒルトン系列の最高級ブランド Conrad Hotel の建設計画も発表されるなど (どちらも全室スイート)、ラスベガスが空前の好景気に沸いていることは、誰もが認めるところだろう。
 ちなみに今ここでふれた増築・新築を合計すると、約1万部屋になる。短期間にこれだけの供給が行なわれるのは、世界広といえどもラスベガスしかあるまい。

 そんな景気のよい話ばかりを聞かされると、誰もが考えるのがカジノホテルなどへの投資だ。バブルの予感もしないではないが、カジノ市況のファンダメンタルズを考えると、資金的に余裕のある者は本気でラスベガス投資を考えてみるのも悪くはないだろう。
 もちろん株価の予測はむずかしい。勝手な推測は慎むべきだが、そこをあえて当社なりに推理してみたので、それを以下にまとめてみた。

 まず最初に、ここ数週間で不気味な値動き (急騰) を見せている Wynn Resorts 社 (クリックでチャート表示) について。
 現在値は株式公開時の約3倍の水準で、ハッキリ言って高すぎる。来年完成する超豪華ホテル Wynn Las Vegas やマカオへの進出など、未知の魅力を買われての株価だろうが、まだ実質的な営業を開始していない会社にこれだけの資金が流入するのは極めて異例で (ハイテクやバイオ関連企業などではときどき見られることだが)、急落のリスクも常につきまとう。ハイリスクハイリターン派にはよいかもしれないが、この水準では一般投資家にはあまりおすすめできない。

 Harrah's Entertainment 社 は、昨年春から一本調子で約80% も急騰しているが、それでも現在の PER は 20倍前後で、PBR は 3.3倍と、どちらもまだ低く、割高感はあまり感じられない。ただ、ラスベガス関連株という意味で考えると、この会社はラスベガスに Rio と Harrah's 程度しか所有しておらず (最近 Horseshoe も買収したがすぐに売却)、好景気に沸くラスベガスでの事業比率の低さは、ラスベガスの将来に期待する投資家にとっては楽しみに欠ける。それでも 「世界的なカジノブーム」 という部分に期待するのであれば、さまざまな都市で手広く事業展開している同社は魅力的かもしれない。とりあえず、買っても損をしない銘柄、と考えたい。

 MGM Mirage 社 も昨年春から一本調子で約70% 急騰している。こちらは PER が 28倍前後で、PBR は 2.5倍。Harrah's と比べると収益的にはやや買われすぎといった感じがしないでもないが、PBR から見ると底値はしっかりしていそうで、下値の安心感はある。大幅な暴落を避けながら投資したい向きにはおすすめといったところか。
 なお、同社は、これまで所有していた Golden Nugget は最近売却し、大型ホテルへ注力した経営方針を打ち出しているため、今後は今までとは異なった傾向の決算も期待される。各カジノでの客の入りやカジノのにぎわいなど、その事業内容を現場で見ている限り、中長期的に持っている分には相対的に他のカジノホテルよりリスクが少ないように感じられる。

 Park Place Entertainment から社名を改めた Caesars Entertainment 社 は、PER が 78倍前後で、PBR は約 1.2倍。収益的にはもっと安値で推移すべき銘柄かも知れないが、PBR 的にはこれ以上安くなりにくい部分もあり、下値の心配はあまり感じない。この会社は過去の実績から、業績の波が大きい傾向にあり、そういう部分での不安はあるが、シーザーズパレスの新館建設など、現在進行形の大規模な投資が裏目に出なければ、大バケする可能性を秘めている。PBR が 1倍を割り込まないことを信じて (といっても赤字になれば純資産も減るが)、今こそが仕込み時かも知れない。

 Mandalay Resort 社 は、過去12ヶ月で 100%上昇しており、危険水域に達した感じがしないでもないが、PER 25倍、PBR 3.3倍は、指標的には常識の範囲内。純粋に好業績を反映しての株価上昇と考えれば、まだ買える余地もありそう。

 最後に International Game Technology 社。これはカジノホテルではないが、このスロットマシン製造最大手の同社は、PER 36倍、PBR 7.3倍で、やや買われすぎているきらいがある。それでもキャッシュレススロットマシンの普及にともなう強い買い換え需要に支えられ、今後もさらに業績を伸ばす可能性が高く、さらなる上昇も十分あり得る。ただ、指標的には下げ局面もありそうな状況で、しばらく静観がよいかも知れない。

 上記銘柄以外にも Boyd Gaming 社Station Casinos 社 など、カジノ関連株は少なくないが、一般日本人観光客が自分の目でその会社の活動状況をたしかめられるという意味では、とりあえず上記会社が無難だろう。なお、シャッフルマシンメーカーの Shuffle Master 社は、その製品が一般観光客の目にもとまるため身近な存在ではあるが、いかんせん会社の規模が小さいため、業績の変動が大きくふれやすく、ハイリスクハイリターン指向の者以外にはあまりおすすめできない。

 今回は PER と PBR を主要な指標として分析してみたが、これら指標ばかりに頼るのが危険であることはいうまでもない。 また、どの銘柄も業績の良さは誰もが認めるところだが、過去 12ヶ月のチャートを見る限り高騰しすぎの感は否めない。
 「まだ上がる」 と考える時は 「もう上がらない」。「もう下がる」 と思った時は 「まだ上がる」。"まだはもうなり、もうはまだなり"、いつの時代もこの格言は投資家を悩ますが、カジノホテルの業界に関しては、まだもう少し上がる、と考えたい。理由は純粋に、カジノ需要が旺盛だからだ。

 最後に、意外と気づかないカジノホテル株のメリットを紹介しておきたい。ここ数年、エンロンやアーサーアンダーセンなど、大企業による意図的な粉飾決算で一般投資家が大きな被害を被ったことは記憶に新しいが、仮に意図的なものでなくても、決算内容はあまり信用できないのが普通だ。
 なぜなら、貸借対照表の資産部分の重要な要素を構成する商品在庫や売掛金は、その評価自体が、査定する担当者の判断でどうにでもなってしまうからだ。つまり、仕入れの半値にしても売れない商品在庫や、回収の見込みがない売掛金の簿価をどの程度にするかによって、その企業は赤字にも黒字にもなってしまう。そう考えると、PER も PBR も指標として絶対視できないことがよくわかる。
 多くの企業の決算報告はそんなあいまいな部分を含んでいるわけだが、カジノホテルの場合、法令により一般企業以上にその事業内容 (特に経理的な部分) がガラス張りにされ、なおかつ当局も厳しくチェックしているため、他の業種に比べ粉飾になりにくい環境にある。また業態の性格上、商品在庫や売掛金が少なく (ハイローラーなどに対する与信は決して少なくないが)、資産評価をする際のあいまいな要素が他業種に比べ総じて少ない。そういった環境を考えると、カジノホテルへの投資は、粉飾決算的な理由による暴落のリスクが極めて低く、業界体質的には 「安心して投資できる業界」 と言ってよいだろう。


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