週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2004年 1月 14日号
ホースシューの閉鎖でダウンタウンに激震、ハラスが救済か
 1月9日夜、電飾アーケードで知られるダウンタウン地区のほぼ中心に位置する老舗カジノホテル・ホースシューが突然閉鎖されてしまった。原因はいろいろあるが、簡単に言ってしまえば債務不履行による当局からの強制閉鎖で、ようするに資金不足による経営難だ。(右の写真は閉鎖前の様子、クリックで拡大表示)

 ラスベガスにおいてカジノにまつわる経営難や身売り話などは日常茶飯事で、市民もメディアも少々の話題には驚かないが、今回ばかりはかなりビックリしたようで、ダウンタウンを中心に "激震" が走った。

 まずなんといっても最大の関心事は、観光都市ラスベガスのシンボルともいえるダウンタウンの夜景が、まともな姿で見られなくなってしまったことだろう。
 もちろん多くのネオンは従来通り残っているわけだが、「ストロボ無しでも夜間撮影ができる」 といわれてきたあの派手な夜景はもはや見ることができない (左写真、12日夜撮影)。
 こうしていざホースシューの明かりが実際に消えてしまうと、あの夜景における同ホテルの存在がいかに大きかったか、今さらながら再認識させられる。
 ちなみに同ホテルの位置は電飾アーケード街 "Fremont Street Experience" のド真ん中で、そのネオンサインはあの夜景を構成する数あるネオンサインの中でも最も中心的役割を果たしていた。それが消えてしまった今、夜景は完全に拍子抜けといった感じで、記念撮影のためにわざわざストリップ地区からやって来た観光客などはさぞかしガッカリしているに違いない。

 日ごろライバル関係にあった近隣のカジノもライバルが消えたことによるメリット以上に、ダウンタウン地区から活気が無くなってしまうことを懸念する声の方が大きいのか、早くも 「ネオンだけでも点灯すべきだ」 との意見が出始めている。
 そのへんの事情を同地区の Fremont Street Experience 管理組合に問い合わせてみたところ、笑うに笑えない返事が返ってきた。電力会社も大口債権者だという。また、管理組合自身も管理費の分担金などを払ってもらっていないらしい。
 今回の閉鎖の直接的なきっかけが労働債務 (従業員の給料や福利厚生関連費用の支払い義務) の不履行で、その上さらに多額の税金の滞納が明らかになってきた今、電力会社などへの支払いは優先順位が低く、ネオンを点灯するにも、解決しなければならない問題は単純ではなさそうだ。

 困っているのは夜景だけではない。ホースシューは地元民、特にヘビーギャンブラーが多く利用していただけに、ここのカジノのチップを換金せずに所持している一般市民も少なからずいるようで、彼らも立派な債権者となってしまっている。
 また、今はプロフットボールのシーズンがピークを迎えていることもあり (現在プレイオフの真っ最中で、まもなくスーパーボウル)、ここのカジノのスポーツブックの投票券を持っている者も多いらしく、賭けたチームが勝っても払戻金を受け取れないとなると事態は深刻だ。
 が、これら "カジノ債権" に関しては当局の主導で必ず換金できるようにするとのことで、早くも相談用のホットラインなどが設けられている。それでも実際の手続きなどにおいて未定の部分も少なくないようで、不安が完全に取り払われたわけではない。 (そのホットラインへ実際に電話をしてみたところ、回線はつながるが応答がなかった)
 カジノで成り立っているこの街にとって、カジノチップやスポーツブックの投票券の換金性が保たれなければ、内外に対して信用を失い、街全体の経済に悪影響を与えかねないので、一般個人のカジノ債権が不良債権化することはないと思われるが、とにかく困った問題であることに違いはない。

 ちなみに現在ホースシューはカジノ側の出入口もホテル側のロビーもドアが閉ざされたままで、その現場には、換金に関する説明などはおろか、閉鎖を告知する張り紙すらまったくない。ニュースを知らない観光客などは何が起ったのかすらわからず、通行人に状況説明を求める有り様だ。
 もちろん カジノの中 (← クリック。12日に撮影。以下同じ) には一部の関係者以外ほとんど誰もおらず、ひっそり静まりかえっている。一部のスロットマシンはすでに電源が落とされ、数日前まで活気にあふれていた店内がウソのようだ。駐車場なども 閉鎖の表示 があるだけで、状況説明などはない。

 いずれにせよ観光客はもちろんのこと、これまでにカジノホテルの倒産、身売り、爆破解体などを何度も経験してきているラスベガス市民にとっても、受け皿企業が決まる前の突然の閉鎖は非常に珍しく、多くの者がビックリしたばかりか、職を突然失った従業員や "カジノ債権者" にとってはしばらく心配な日々が続くことになりそうだ。

 そんななか、早くも明るいニュースが流れ始めている。全米各地でカジノを展開する Harrah's Entertainment 社がホースシューを買い取るという話だ。
 同社はラスベガスではハラス (写真右) とリオを経営しているが、ライバル企業に比べラスベガスでの存在感がやや薄いこともあり、以前からホースシューに対する買収話は出ていた。そして今回の騒動をきっかけに買収話がほぼ現実のものとなってきたわけだが、「ハラスはホースシューそのものではなく、名称の使用権だけを欲しがっており、すぐにまた売却する」 (業界関係者) の噂もあり、今後どのように話が進むのか予断を許さない状況だ。
 ちなみにホースシューは 52年という歴史もさることながら、カジノ経営におけるスタンスなどが本格的なギャンブラーから高く評価されており、全米でカジノ展開するハラスにとって 「ホースシュー」 ブランドはかなり価値があるらしい。

 今後どのように話が展開するにせよ、いつまでもダウンタウンが暗いまま放置されるとは考えにくく、少なくとも日本からの観光客にとって、大きな影響が出ることはないだろう。(そもそもダウンタウン地区に宿泊する日本人観光客は皆無に近く、99% 以上の日本人観光客はストリップ地区に宿泊している)
 電飾アーケードは通常通り上演されているので、今回の騒動を理由にダウンタウン訪問をあきらめるのは早計だろう。(ただし、昨年秋から続いているアーケードの発光体を電球から LED に置き換える工事は 3分の 1ほどしか進んでおらず、高解像度の映像による上演はまだ始まっていない。高解像度バージョンのデビューは 4月ごろになる予定)
 



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